ICD-11にむけての漢方の証分類の妥当性の検討

文献情報

文献番号
201402002A
報告書区分
総括
研究課題名
ICD-11にむけての漢方の証分類の妥当性の検討
課題番号
H25-統計-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 賢治(慶應義塾大学 環境情報学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,960,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本版漢方分類の妥当性を技術的に検証するとともに、中国版、韓国版との比較を行い、国際分類導入への妥当性を検討する。
研究方法
日本版漢方分類は、ウェブ公開されているICD-11β版の中で、暫定的に第25章になっているTraditional Medicine conditions - Module Iの中に入っている。本研究ではこれを元に、レビュワーからのコメントに対応しつつ、中韓とともにフィールドテストを行い、また伝統医学分類作成の国際組織ならびにWHO-FICとも協力しつつ日本版漢方分類の妥当性を検討した。
結果と考察
日本版漢方分類の妥当性を検討し、WHOに対して、虚実の定義で、日本漢方特有の体質の定義を追加するよう要求した。「下焦の虚」は「腎虚」としてICTMの「腎気虚」の同義語とするように要求した。それに伴い定義も修正を依頼した。伝統医学の専門家による国際的レビューは当初より遅れているが、WHOはウェブベースでレビューができるプラットフォームを作成したことを、平成26年10月にバルセロナで開催されたWHO-FIC年次会議で公表された。レビュワーは日本人13 名の推薦を行っていたが、新たに60人まで増やして欲しいという要請がWHOからあり、日本東洋医学会の代議員の中から60人推薦し、WHOによって登録された。ICD-11に向けてのフィールドトライアルは伝統医学の章であるとないに関わらず、3部構成となっている。Study1(基本的調査)はICD-11の活用に関する質問であるが、伝統医学の場合には、その章そのものがICDとして新しいため、伝統医学の章そのものの存在意義と活用についての質問が用意されている。WHOから送られた案を日中韓の専門家の専門家でフィードバックし、バージョンアップした。Study2はダブルコーディングである。ICDの他の章ではICD-10とICD-11とのダブルコーディングであるが、伝統医学の章の場合には西洋医学の章(ICDのその他の章)とのダブルコーディングである。Study3(信頼性)は実際に症例にコードをつけた場合に、評価者同士で一致するかどうかを国内および国際的に評価するものである。
そのためには、伝統医学の章が日本語訳されている必要がある。日本で使う「漢方の証」についての仮訳を行った。実際には国内翻訳チーム4名がノミネートされ、WHOに正式な翻訳者として登録されたため、そのチームでWHOのウェブプラットフォーム上で翻訳を行う。Study3のための症例は日中韓で30ずつ合計90例作成しすることになり、日本からも平成25年度に漢方の34症例、鍼灸の12症例を英訳して提出していたが、日中韓各国から10症例ずつを国際フィールドトライアルの症例とすることが決まった。WHO-FIC会議の際に閲覧に供されたが、フォーマットが日中韓で不揃いだったのを修正した。フィールドトライアルはWHOが用意したウェブプラットフォームを多言語化し、平成27年度に開始される予定である。コーディングガイドもWHOで案が示され、日中韓の専門家でフィードバックして現在の版ができあがっている。平成26年11月26~28日に上海で会議を行い、用語に関して議論した。伝統医学分類のタイトルの見直しならびに定義に使われる用語の統一について議論された。用語についてはまずはICD-11ベータ版に収載されている用語に絞り、同じものが複数の表現で示されているものについて検討を行い、統一した。平成26年10月11日から17日にスペイン・バルセロナで開催された。期間中、伝統医学分類に関する会議が行われ、フィールドトライアルに向けて用語を整備する必要があることが強調された。ICD改訂全体が遅れているため、先行している伝統医学の章も遅れていることに対し、韓国から、当初の予定通り2015年に他の章に先立って伝統医学の章だけWHOの出版物として世に出すことが提起された。しかしまだまだ未完成であり、レビュー、フィールドテストがこれから行われることを考えると、2015年に伝統医学の章の出版をすることは不可能であるという結論に至った。
結論
ICD-11に向けての漢方分類作成は順調に進捗している。今後はレビューおよびフィールドトライアルを経て最終産物となる予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201402002B
報告書区分
総合
研究課題名
ICD-11にむけての漢方の証分類の妥当性の検討
課題番号
H25-統計-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 賢治(慶應義塾大学 環境情報学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本版漢方分類の妥当性を技術的に検証するとともに、中国版、韓国版との比較を行い、国際分類導入への妥当性を検討する。
研究方法
日本版漢方分類は、ウェブ公開されているICD-11β版の中で、暫定的に第25章になっているTraditional Medicine conditions - Module Iの中に入っている。本研究ではこれを元に、レビュワーからのコメントに対応しつつ、中韓とともにフィールドテストを行い、また伝統医学分類作成の国際組織ならびにWHO-FICとも協力しつつ日本版漢方分類の妥当性を検討した。
結果と考察
伝統医学の専門家による国際的レビューは当初より遅れているが、WHOはウェブベースでレビューができるプラットフォームを作成したことを、平成26年10月にバルセロナで開催されたWHO-FIC年次会議で公表された。レビュワーは日本東洋医学会の代議員の中から60人推薦し、WHOによって登録された。ICD-11に向けてのフィールドトライアルのためには、伝統医学の章が日本語訳されている必要がある。日本で使う「漢方の証」についての仮訳を行った。実際には国内翻訳チーム4名がノミネートされ、WHOに正式な翻訳者として登録されたため、そのチームでWHOのウェブプラットフォーム上で翻訳を行う。Study3のための症例はWHOが計画しているフィールドテストに先立って、症例を作成し、日本の漢方分類をコードしてもらうように日本東洋医学会代議員に依頼したところ、おおよその一致がみられ、漢方の証分類は日常診療で十分役に立つことが示された。しかし、漢方の非専門医の間でも幅広く受け入れが可能かどうかについては今後の検討を要する。フィールドテスト用の日本からの症例は漢方34症例、鍼灸12症例で、合計46症例を英訳してWHOに送付した。中韓からも30例ずつ合計60例作成され、それらの英訳版のうち、日中韓各国から10症例ずつを国際フィールドトライアルの症例とすることが決まった。WHO-FIC会議の際に閲覧に供されたが、フォーマットが日中韓で不揃いだったのを修正した。フィールドトライアルはWHOが用意したウェブプラットフォームを多言語化し、平成27年度に開始される予定である。コーディングガイドもWHOで案が示され、日中韓の専門家でフィードバックして現在の版ができあがっている。伝統医学分類の主要メンバー(プロジェクト・アドバイザリー・グループ)ならびにマネージング・エディターによる電話会議は定期的に行った。平成25年度は国際伝統医学分類(ICTM)の全体対面会議は開催されず、代わりに6月にジュネーブで、今後の方針を決定する目的で、プロジェクト・アドバイザー・グループのメンバーと資金貢献している各国政府での会議を開催した(資料6)。その結果、資金・期間の制約の中でICDの伝統医学の章に特化した内容を進め、介入や用語については行わない、という方針とした。平成26年11月26~28日に上海で会議を行い、用語に関して議論した。伝統医学分類のタイトルの見直しならびに定義に使われる用語の統一について議論された。用語についてはまずはICD-11ベータ版に収載されている用語に絞り、同じものが複数の表現で示されているものについて検討を行い、統一した。用語の作業はまだ一部が完成しただけで、今後も引き続き行うことが決定した。平成25年度のWHO-FIC年次会議は10月12日から18日に北京にて開催された。中国で行ったこともあり、中国代表から伝統医学分類についてのプレゼンテーションもあった。WHOとは今後の進め方を検討したが、中国からは用語についてやはり行わないとレビューもできない、という強い意見が出て検討することになった。また、ICD-11全体で、Linearizationのための準備が進められているが、伝統医学の章に関してもLinearizationのための注釈書が作成された。平成26年度のWHO-FIC年次会議は10月11日から17日にスペイン・バルセロナで開催された。期間中、伝統医学分類に関する会議が行われ、フィールドトライアルに向けて用語を整備する必要があることが強調された。ICD改訂全体が遅れているため、先行している伝統医学の章も遅れていることに対し、韓国から、当初の予定通り2015年に他の章に先立って伝統医学の章だけWHOの出版物として世に出すことが提起された。しかしまだまだ未完成であり、レビュー、フィールドテストがこれから行われることを考えると、2015年に伝統医学の章の出版をすることは不可能であるという結論に至った。
結論
ICD-11に向けての漢方分類作成は順調に進捗している。今後はレビューおよびフィールドトライアルを経て最終産物となる予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201402002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
現在、漢方の診断コードの標準化されたものが存在しないため、統一された用語の使い方ができずいた。本研究成果として証分類が国際分類として確立することで、診療・教育・臨床研究、学術統計すべてに土台となる言葉の統一ができる。
臨床的観点からの成果
電子カルテにおける漢方の証分類も現在まで統一されたものがなかったが、本研究成果により、標準化した電子カルテにおける分類ができるものと期待される。
ガイドライン等の開発
現在漢方のガイドラインは西洋医学病名とリンクしているが、実際に漢方処方をする際には医師は漢方の証に基づいて判断している。本研究成果で漢方の証分類が確立できれば臨床ガイドラインへの応用が期待される。
その他行政的観点からの成果
本研究で得られた日本版漢方分類は現在改訂作業が行われているWHOの国際疾病分類(ICD)の中に組み入れられる計画である。現在ICD-11はベータ版がウェブ公開された段階であり、今後はICD全体の計画の中でレビュープロセスおよびフィールドトライアルを経て最終産物となる予定である。本研究は日本WHO-FIC協力センターの活動ともリンクしており、本研究の成果はそのまま日本WHO国際協力センターおよびWHOの活動成果となっている。
その他のインパクト
WHO-FIC年次総会(2014 バルセロナ)で漢方のフィールドテストの日本経験をポスター発表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yakubo S, Ito M, Watanabe K
Pattern Classification in Kampo Medicine.
Evidence based Complementary and Alternative Medicine (eCAM) , 2014 (ID535146) , 5 pages-  (2014)
http://dx.doi.org/10.1155/2014/535146

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
2018-07-04

収支報告書

文献番号
201402002Z