NICU及びGCU入院新生児の乳児虐待発症予防を目指した多種専門職参加型の診療体制を構築するための研究

文献情報

文献番号
201401024A
報告書区分
総括
研究課題名
NICU及びGCU入院新生児の乳児虐待発症予防を目指した多種専門職参加型の診療体制を構築するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-政策-若手-013
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山田 律子(尾田 律子)(国立国際医療研究センター 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 赤平 百絵(国立国際医療研究センター 小児科)
  • 御牧 信義(倉敷成人病センター小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,480,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
〈研究1:NICU及びGCU入院新生児の医療・コメディカルのサービス向上のための研究>
新生児治療室に入院した児(入院新生児)は、医療介入や出生早期の母子分離により、発育・発達の問題に加えて社会的問題が顕在化する。入院新生児や家族を支援するために、多種専門職(医師・看護師・助産師に加え、コメディカルの薬剤師、理学療法士、臨床工学士、放射線技師)の医療サービスの早期介入を検討する。
〈研究2:NICU及びGCU入院新生児の退院支援・福祉サービス向上の研究>
入院新生児の退院支援のため多種専門職(医療ソーシャルワーカー、退院支援看護師や臨床心理士)間の情報共有、社会資源の提供に加え、産後ケアの現状、病院母子教育入院の可能性を検討する。
〈研究3:NICU及びGCU入院新生児の乳児虐待予防についての研究>
国際医療研究センターと倉敷成人病センターNICU・GCUにおいて、標準化した評価票を用いリスク事例の早期発見・介入し予防効果を検討する。
〈研究4:子ども虐待防止・予防のための病院間連携の設立(都市型・新宿区モデルの提唱)>
子ども虐待予防のためには個別の病院対応には限界があり、地域の小児科の病院間連携は必須である。新宿区病院間連携を設立、運営モデルを構築、虐待予防の新職種のキッズマネージャー制度の実施方法を検討する。
研究方法
<研究1>コメディカルの子ども虐待防止の試みの参加と患者介入への啓蒙、潜在的医療サービスを開拓の実施。
<研究2>退院支援部門の多種専門職会議の定期的参加や退院支援や福祉サービスの提供。育児不安解消のための産後ケア実施体制の検討。病院内母子入院の検討。
<研究3>周産期スクリーニング施行によって抽出されたリスク因子のあるケースの虐待通告や母子支援などの介入の有効性を検討。医療機関で追跡不能になったケースの保健所と連携した去就の追跡調査。
<研究4>新宿区病院間連携を設立し、周産期問題を有する妊婦や新生児の情報共有するための新職種キッズマネージャーの実施の可能性の検討。
結果と考察
<研究1>
・薬剤師:服薬指導件数を増加することができた。小児薬物療法認定薬剤師の導入、オンサイトファーマシーへの発展が必要である。
・理学療法士:デベロップメンタルケア(DC)のポジショニングシート作成し、看護師に指導することでDCを普及した。児の発達や親子間の愛着形成の促進、育児負担感の軽減に有用である。
・放射線技師:小児頭部外傷例の検討で、2歳以下の屋内事故や、乳児では目撃者がいないことが判明した。放射線技師は虐待の早期発見の潜在能力がある。
・臨床工学士:臨床工学士が在宅呼吸器指導を多施設・多種職と協力して退院計画を立てることは、在宅移行後の生活に有用である。
<研究2>
・多種専門職会議は退院支援や社会資源の提供に有用である。
・産後ケア事業は財政問題から参入は難しい状況にある。
<研究3>
・周産期の評価票は、支援家庭への早期発見、早期支援に有効であった。しかし、評価票でも抽出できない虐待例があり、一部限界もあった。
・周産期スクリーニングの実施は職員の子ども虐待防止の意識づけにも効果をもたらした。
・MSWによる代理通告に一本化することで、一般職員が虐待通告することの助けになり、臨床現場の医師への有効な支援策になった。
<研究4>
・新宿区病院間連携を病院(勤務小児科医)、医師会(開業小児科医)、行政(子ども家庭支援センター、児童相談所)と警察が参加して設立した。
・警察との情報共有に有効
・キッズマネージャーの活動を院内子ども虐待防止委員会(CPT)参加から開始した。今後多種職専門会議に拡大していくことが必要である。
結論
<研究1>
・コメディカルの参加を新たな児の見守り役割として促進
・虐待防止の講習を義務化
<研究2>
・退院支援・社会資源提供をため、多種専門職会議の推進
・産後ケアの費用やマンパワーから実態に伴った制度改革が必要
<研究3>
・日本における乳児・子ども虐待に対する大規模スタディの提案
<研究4>
・キッズマネージャーの普及方法としてCPTの参加を足掛かりとして新生児治療室の多種専門職会議へ拡大
・児童相談所・警察・自治体の垣根を越えた情報伝達システムの確立

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

文献情報

文献番号
201401024B
報告書区分
総合
研究課題名
NICU及びGCU入院新生児の乳児虐待発症予防を目指した多種専門職参加型の診療体制を構築するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-政策-若手-013
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山田 律子(尾田 律子)(国立国際医療研究センター 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 赤平 百絵(国立国際医療研究センター 小児科)
  • 御牧 信義(倉敷成人病センター 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究1:NICU及びGCU入院新生児の医療・コメディカルのサービス向上のための研究
新生児治療室に入院した児(入院新生児)は、医療介入や出生早期の母子分離により発育・発達の問題に加えて社会的問題が顕在化する。入院新生児や家族を支援するために、多種専門職(医師・看護師・助産師に加えコメディカルの薬剤師、理学療法士、臨床工学士、放射線技師)の医療サービスの早期介入を検討する。また、病院内外の専門職間交流(母乳ケア)の効果を行い評価する。
研究2:NICU及びGCU入院新生児の退院支援・福祉サービス向上の研究
入院新生児の退院支援のため多種専門職(医療ソーシャルワーカー、退院支援看護師や臨床心理士)間の情報共有、社会資源の提供に加え、退院支援加算の意義、産後ケアの現状、病院母子教育入院の可能性を検討する。
研究3:NICU及びGCU入院新生児の乳児虐待予防についての研究
国際医療研究センターと倉敷成人病センターNICU・GCUにおいて、標準化した評価票を用いリスク事例の早期発見・介入し予防効果を検討する。
研究4:子ども虐待防止・予防のための病院間連携の設立(都市型・新宿区モデルの提唱)
子ども虐待予防のためには個別の病院対応には限界があり地域の小児科の病院間連携は必須である。新宿区病院間連携を設立、運営モデルを構築、虐待予防の新職種のキッズマネージャー制度の実施方法を検討する。
研究方法
研究1:コメディカルの子ども虐待防止の試みの参加と患者介入への啓蒙、潜在的医療サービスを開拓の実施。専門職交流の実施。
研究2:退院支援部門の多種専門職会議の定期的参加や退院支援や福祉サービスの提供。新生児特定集中治療室退院調整加算(退院調整加算)の獲得を分析。育児不安解消のための産後ケア実施体制の検討。病院内母子入院の検討。
研究3:周産期スクリーニング施行によって抽出されたリスク因子のあるケースの虐待通告や母子支援などの介入の有効性を検討。医療機関で追跡不能になったケースの保健所と連携した去就の追跡調査。
研究4:新宿区病院間連携を設立し周産期問題を有する妊婦や新生児の情報共有するための新職種キッズマネージャーの実施の可能性の検討。
結果と考察
研究1
・薬剤師:服薬指導件数を増加することができた。小児薬物療法認定薬剤師の導入、オンサイトファーマシーへの発展が必要である。
・理学療法士:デベロップメンタルケア(DC)のポジショニングシート作成し、看護師に指導することでDCを普及した。児の発達や親子間の愛着形成の促進、育児負担感の軽減に有用である。
・放射線技師:小児頭部外傷例の検討で、2歳以下の屋内事故や、乳児では目撃者がいないことが判明した。放射線技師は虐待の早期発見の潜在能力がある。
・臨床工学士:臨床工学士が在宅呼吸器指導を多施設・多種職と協力して退院計画を立てることは在宅移行後の生活に有用である。
・病院内外専門職間交流:熟練開業助産師による母乳ケア指導講座を病院ナースへ行った。リソースの限られた施設では専門職交流は有効であり、今後母親への病院外助産師の介入ができるよう結びつけることが重要である。
研究2
・退院調整加算を算定でき多種専門職会議は促進された。今後、退院調整加算を契機に多種専門職会議がどの規模の新生児治療室でも実現できるよう、算定基準の改訂が望まれる。
・産後ケア事業は財政問題から参入は難しい状況にある。
・病院の母子教育入院は産後ケアの選択肢になる。
研究3
・周産期の評価票は支援家庭への早期発見、早期支援に有効であった。しかし、評価票でも抽出できない虐待例があり一部限界もあった。
・周産期スクリーニングの実施は職員の子ども虐待防止の意識づけにも効果をもたらした。
・MSWによる代理通告に一本化することで、一般職員が虐待通告することの助けになり、臨床現場の医師への有効な支援策になった。
研究4
・新宿区病院間連携を病院(勤務小児科医)、医師会(開業小児科医)、行政(子ども家庭支援センター、児童相談所)と警察が参加して設立した。
・警察との情報共有に有効
・キッズマネージャーの活動を院内子ども虐待防止委員会(CPT)参加から開始した。今後多種職専門会議に拡大していくことが必要である。
結論
研究1
・コメディカルの参加を新たな児の見守り役割として促進
・病院内外専門職交流の促進
・虐待防止の講習を義務化
研究2
・退院調整加算の算定方法の再検討(基準緩和)
・産後ケアの費用やマンパワーから実態に伴った制度改革が必要
研究3
・日本における乳児・子ども虐待に対する大規模スタディの提案
研究4
・キッズマネージャーの普及方法としてCPTの参加を足掛かりとして新生児治療室の多種専門職会議へ拡大
・児童相談所・警察・自治体の垣根を越えた情報伝達システムの確立

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201401024C

成果

専門的・学術的観点からの成果
多種専門職における医療・コメディカルおよび退院支援・福祉サービスの早期介入や充実を図ることは、子ども乳児虐待予防にとって重要と考えた。周産期標準化スクリーニング票を用いて抽出し支援することは、虐待予防に寄与すると思われた。さらに、地域の病院、行政、警察と連携して情報共有していく地域の病院間連携は有用であった。複数の総合病院を有する都市型地域では、出産前にハイリスク家庭の情報を共有するため、各病院のCPTや多種専門職会議に参加していく新しい職種キッズマネージャーを提案した。
臨床的観点からの成果
乳児・子ども虐待予防を目的に周産期スクリーニングシステムの導入やCPT設置前後における院内職員の子ども虐待の意識調査を行った。入院新生児の適切な外来フォローは重要であった。スクリーニングの実施は職員の意識づけにも効果をもたらした。また、医療機関で追跡不能になったケースでは保健所と連携して去就を追跡した。さらにMSWによる代理通告に一本化することで、一般職員が虐待通告することの助けになり、臨床現場の医師への有効な支援策になった。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
当研究1~4より、以下の政策を提言する。
・コメディカルの虐待防止への参加、児の見守り役として新しい役割の促進
・病院内外専門職交流の促進
・虐待防止の講習履修の義務化
・退院調整加算の算定方法の基準緩和
・産後ケアの費用やマンパワー不足から実態に伴った制度改革
・日本における乳児・子ども虐待に対する大規模スタディの提案
・キッズマネージャーの新生児治療室の多種専門職会議への参加
・児童相談所・警察・自治体の垣根を越えた情報伝達
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
2016-05-26

収支報告書

文献番号
201401024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,658,000円
(2)補助金確定額
1,658,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 73,380円
人件費・謝金 458,061円
旅費 454,590円
その他 493,999円
間接経費 178,000円
合計 1,658,030円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-03-15
更新日
-