就業状態の変化と積極的労働市場政策に関する研究

文献情報

文献番号
201401013A
報告書区分
総括
研究課題名
就業状態の変化と積極的労働市場政策に関する研究
課題番号
H26-政策-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山本 勲(慶應義塾大学商学部)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口美雄(慶應義塾大学商学部 )
  • 酒井 正(法政大学経済学部)
  • 佐藤一磨(明海大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 わが国の労働市場では、少子高齢化やグローバル化、低成長といった人口動態・マクロ経済環境の変化が進む中で、日本的雇用慣行の変容をはじめ、さまざまな構造変化が生じており、厚生労働行政の方向性を見定めるため、エビデンスに基づく現状認識と政策評価・提言の必要性が増している。そこで本研究では、厚生労働省の「21世紀成年者・中高年者・新生児縦断調査」を活用し、わが国の労働市場の多様な変化を定量的に捕捉するとともに、厚生労働施策が経済主体行動に与えた影響に関する効果測定を行い、今後の厚生労働政策に対する政策提言を行う。
研究方法
 本年度は、代表者・分担者・協力者が共通して利用する「21世紀縦断調査」(成年者・中高年・出生児縦断調査)の個票データの利用申請・入手を行い、その後、個票データの整理・構築を行った。また、関連研究の報告研究会(全5回)を実施したり、外部の学会に参加したりすることを通じて、データ特性や関連研究の把握に努めた。さらに、2~3年目で実施する研究の比較対象とするため、「慶應義塾家計パネル調査」(慶應義塾大学)や「消費生活に関するパネル調査」(家計経済研究所)の個票データを用いた検証や既存研究の整理といった予備的研究を進めた。
 他の個票データを用いた類似研究は、①2000年代以降に実施された若年層への地域別労働市場政策であるジョブカフェに関する強化事業の政策評価分析(山本)、②2000年代に実施された地域を対象とした育児政策の一つである「子育て支援総合推進モデル市町村事業」の政策評価分析(山本)、③積極的労働市場政策と仕事と生活の両立に関する研究(樋口)、④夫の失業が出産に及ぼす影響の検証(佐藤)、⑤法定割増賃金率の引き上げが時間外労働時間および有給休暇の付与・取得に与える影響の検証(深堀・萩原<研究協力者>)、⑥生活時間を考慮した貧困分析(石井・浦川<研究協力者>)、⑦人材派遣・職業紹介の規制緩和が転職や新規就業に与えた影響の検証などを行った。
結果と考察
 これらの研究からは、本研究2~3年目に実施予定の積極的労働市場政策の評価分析については、常に明確な効果が検出されるとは限らないものの、Difference-in-Difference分析やパネル固定効果分析など適切な分析手法を用いることで、政策効果を見出せる可能性があることがわかった。また、いずれの予備的研究も十分なサンプルサイズを確保できていないことによる分析上の限界があり、サンプルサイズの大きい「21世紀縦断調査」を用いることの重要性が示唆された。
 このほか、既存研究の整理については、子育てと介護を同時に行っている女性は、他の女性よりも労働市場から退出している可能性が高いといったことや、高齢期における妻の就業は夫の就業確率を高めるといったことが示された。
結論
 「21世紀縦断調査」(成年者・中高年・出生児縦断調査)の個票データの整理を進めたことで、研究2~3年目に研究計画に沿った分析を着実に実施することが可能となった。特に、「成年者縦断調査」と「中高年縦断調査」は多くの研究メンバーが利用する予定のため、データ・変数の整理・構築を共通して実施したことは、効率的な研究基盤の構築につながった。
 また、既存研究の整理や他の個票データを用いた予備的研究を行うことで、就業状態の変化と積極的労働市場政策に関する研究の方向性や課題などを把握することができた。例えば、当初の研究計画でも触れたように、本研究では労働市場の変化として、離転職・失職・就職といった就業状態の変化、正規から非正規雇用といった就業形態の変化、結婚・出産・健康状態などの生活面での変化などに焦点を当てるが、既存研究の整理や予備的研究を通じて、そうした変化を分析対象とすることの重要性が改めて把握できた。また、労働市場の変化を研究対象とし、政策提言を行ってきた従来の研究では、変化を捕捉するために十分なデータが利用されていないという課題があったが、予備的研究でもサンプルサイズの小ささという課題が浮き彫りになった。
 こうした点を踏まえると、今後、「21世紀縦断調査」を活用することで、研究計画に記載した目的を果たし、労働市場の変化や積極的労働市場政策に関する研究を発展させる余地が大きくあると確信できる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201401013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,830,000円
(2)補助金確定額
4,830,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,200,587円
人件費・謝金 1,467,312円
旅費 607,310円
その他 925,170円
間接経費 630,000円
合計 4,830,379円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-15
更新日
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