医療に役立つブタの開発研究:免疫のないブタからヒト血液をもつブタへ

文献情報

文献番号
201335023A
報告書区分
総括
研究課題名
医療に役立つブタの開発研究:免疫のないブタからヒト血液をもつブタへ
課題番号
H25-実用化(再生)-指定-023
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
花園 豊(自治医科大学 分子病態治療研究センター 再生医学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 長嶋 比呂志(明治大学 農学部)
  • 西村 智(自治医科大学 分子病態治療研究センター 分子病態研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(再生医療関係研究分野)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
26,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、自治医科大学のブタ利用研究施設(ピッグセンター)を整備しながら、ブタの光分子イメージング技術を開発する。これによって、ブタ生体内の血液細胞を可視化し、ブタ体内での血液細胞の動態や血栓形成の瞬間を捉える。さらに、ヒト血小板などヒト血液細胞のブタ生体内での動態解析を試みる。
研究方法
 本研究3年計画のうち初年度の平成25年度は、当初の計画通り、ブタ無菌ユニットの調整・試験使用、実験用遺伝子改変ブタの作製・解析、およびブタ用イメージングデバイスの開発を行った。平成26年度は、ブタを用いて生体光分子イメージング法の開発をめざす。平成27年度は、ブタ生体内血液細胞(ヒトiPS細胞から作製した人工血小板など)の可視化をめざす。
 平成25年度の研究方法は、以下の通りであった。
(1) ブタ無菌ユニットの調整・試験使用 (花園)
 本学ピッグセンターに無菌ユニットを導入した。その利用によってブタ用高度クリーンルームの実現を図った。
(2) 遺伝子改変ブタの産生・維持と改良 (長嶋)
 長嶋らが作製に成功した免疫不全(SCID)ブタの解析・産生・維持を図った。さらに、イメージング研究に適する遺伝子改変ブタ(蛍光を発するミニブタ交雑種等)を作製した。
(3) ブタ用イメージングデバイスの開発・設置 (西村)
 ブタに特化した一光子イメージングデバイスを開発した。さらに、二光子近赤外イメージングデバイスの開発に着手した。その際には、マウス用の高機能に特化したデバイスの作製とは別に、倒立・正立のいずれかに依存しない光学系の開発、高精度の大型動物観察用ステージなどの開発を行った。
結果と考察
(1) ピッグセンターの整備 (花園)
 自治医科大学ピッグセンターに無菌ユニットを導入しISOクラス6 (クラス1000)のクリーンルームを達成した。ここで免疫抑制剤を投与した免疫不全ブタの試験飼育を実行した。本無菌ユニットを用いて最長約2ヶ月の飼育を行うことが出来たものの、感染症を避けることはできなかった。今後、さらに長期のブタ無菌的飼育には、ブタ自身の無菌化も必要と考えられた。

(2) 実験用ブタの作製 (長嶋)
 本年度は、免疫不全(SCID)ブタの作製を行ったところである。具体的には、Znフィンガーヌクレアーゼ法によって、ブタ体細胞のIL2受容体γ鎖遺伝子をノックアウトした。この細胞核を未受精卵に移植した(体細胞核移植)。核移植した細胞をブタ仮親子宮内に移植した。満期でブタ胎仔を取り出し解析したところ、IL2受容体γ鎖遺伝子発現なく、胸腺がなく、T/NK細胞なく、免疫不全ブタと結論された。この表現型は、ヒトのSCID(重症複合型免疫不全症)の症状に類似する。マウスでは同遺伝子の欠損によりB細胞も消失するが、得られたブタにはB細胞が検出されることから、SCIDモデルとして、よりヒトに近い特徴を有する。
 その他、赤色蛍光タンパク質の一種であるクサビラオレンジ遺伝子を組み込んだミニブタ交雑種を作製した。従来の肉豚をベースに作出されたものに対し、ミニブタ交雑種は約半分の体重であり、研究利用により適したサイズとなっている。また、デュシェンヌ型筋ジストロフィーモデルブタの作製をめざして、ジストロフィン遺伝子ノックアウト細胞からクローン胚の作出が可能なことを確認した。

(3) ブタ用イメージングデバイスの開発 (西村)
 平成25年度は、ブタ等大型動物故に必要な正立顕微鏡および支持周辺機器を考案し、ブタに適用可能なイメージングデバイスを設置した。通常の顕微鏡ではなく、ユニット型の顕微鏡を筐体に組み付ける型で、同様のものや大型動物での実施例はいまだ報告されていない。

(4) 生体光分子イメージング法の開発 (西村)
 大型動物への予備検討として、平成25年度はマウスを用いた生体光分子イメージング法を行った。具体的には、レーザー傷害によるマウス血栓形成モデルを確立し、血栓形成過程を明らかにした。さらにヒトiPS細胞のマウス生体内で評価系を確立し、ブタへの応用に備えた基礎技術を集積した。
結論
 本研究では、生体光分子イメージング法をブタに適用する。それによって、ブタ生体内の血液細胞を可視化する。たとえば、血小板が血栓を形成する瞬間の可視化などである。本研究は、当初の計画通り進捗している。平成25年度(初年度)は、計画通り、ブタ無菌ユニットの調整・試験使用、実験用遺伝子改変ブタの作製・解析、さらにブタ用イメージングデバイスの開発を行った。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201335023Z