iPS細胞の品質変動と実用化を目指した培養技術の標準化に関する研究

文献情報

文献番号
201335016A
報告書区分
総括
研究課題名
iPS細胞の品質変動と実用化を目指した培養技術の標準化に関する研究
課題番号
H25-実用化(再生)-指定-016
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
古江 美保(独立行政法人医薬基盤研究所  難病・疾患資源研究部 ヒト幹細胞応用開発室)
研究分担者(所属機関)
  • 栗崎 晃(独立行政法人産業技術総合研究所 幹細胞工学研究センター 幹細胞制御研究チーム)
  • 大沼 清(長岡技術科学大学 工学部)
  • 川端 健二(独立行政法人医薬基盤研究所創薬基盤研究部幹細胞制御プロジェクト)
  • 山田 弘(独立行政法人医薬基盤研究所 トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト)
  • 竹森 洋(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部代謝疾患関連タンパク探索プロジェクト)
  • 櫻井 文教(大阪大学大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(再生医療関係研究分野)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
42,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトiPS細胞は医薬品等の効果や毒性の評価ツールとして創薬研究においても利用が期待されている。しかし、近年、次々と分化プロトコールが発表されている一方、同じiPS細胞株を用いても他施設では同じ結果を再現できないことも多い。実験者や研究施設が変わることによるヒトiPS細胞の品質変動は大きな問題の一つとなっている。その原因の一つに培養技術が挙げられる。ピペッティングなど単純な作業を誤ることがiPS細胞の未分化状態に影響を及ぼすことは経験上知られているが、分化誘導の再現性にどのような影響を及ぼすかなど、具体的に検証された研究はないiPS細胞を用いた画期的な新薬開発を目指す研究者が、恒常的にiPS細胞の高い品質を維持し、再現性高い分化誘導法を研究開発できるよう、培養技術を科学的に検証し、技術不足がiPS細胞に及ぼす悪影響を科学的に証明することを目的とし、培養手技の違いがiPS細胞の品質に及ぼす影響を検証する。
研究方法
① 未分化状態における品質変動の要因の検証
創薬研究に応用するiPS細胞の品質を担保するには、DNA配列に組み込まれない作製法を選択することが望ましいとされる。しかし、むしろ培養技術の低さが引き起こす影響が大きい。これを科学的に検証するため、H25よりセンダイウィルスベクターを用いiPS細胞を作成開始した。同細胞ならびに従来法で作成されたiPS細胞を用いて、手技の違いがiPS細胞の品質に及ぼす影響を複数機関で検証するため、H25は従来法で作成したiPS細胞を用いて、ピペティング回数、浮遊時間、継代のタイミングについて、熟練者及び初心者の技術を模倣した手技を模倣する検出系の検討を行った。
なお、上記の条件における未分化状態での品質変動の検証は、(a)細胞形態 (b)遺伝子発現プロフィール、ゲノム安定性 (c)ハイスループット分化能の測定: (d)細胞内エネルギー代謝における細胞内呼吸について、評価する。
② 分化プロトコールの標準化と分化誘導再現性の検証 
(i) 分化プロトコールの標準化:品質評価の観点から iPS細胞から外胚葉、中胚葉、内胚葉への分化プロトコールの収集を行う。H25は、使用可能なプロコールの収集を開始した。創薬研究を目指す研究者らがコントロールとして使用できる再現性の高い分化プロトコールを策定する。(ii) 分化誘導再現性の検証: ①で検証した個々の品質変動要因が、②(i) で設定した分化プロトコールによる分化誘導の再現性に及ぼす影響を評価・検証する。
(iii) 薬剤感受性の検証:品質が低下したiPS細胞から作製された分化細胞は創薬研究には資さないことが予測され、品質変動要因が薬剤感受性に与える影響を検証する。H25はiPS由来肝細胞の品質評価を開始した。
結果と考察
① 未分化維持における品質変動とその要因の検証について
H25は、初心者の技術を模倣した際に起きえる事象の検討を開始した。細胞株によって現象は異なるが、株によっては再現性の高い事象を確認した。また、種々の状態の細胞のエネルギー代謝を測定したところ、新しい評価法として期待される結果が得られた。ゲノム安定性の観点から、インテグレーションフリーシステムを用いiPS細胞を作成開始しており、品質評価後に参画する研究機関で共有して使用する予定である。
② 分化プロトコールの標準化と分化誘導再現性の検証について、
iPS細胞を用いた創薬研究を目指す研究者らがコントロールとして使用できる再現性の高い分化プロトコール(外胚葉、中胚葉、内胚葉系への分化)を策定することを目標としている。H25は、分化プロトコールについて本研究に参画する各研究機関の研究者間での情報交換を行ったところ、株間による差も大きいことが明らかとなった。したがって、株間による差の影響を踏まえた情報の収集と検討を行う予定である。
結論
培養手技の違いがiPS細胞の品質に及ぼす影響を検証するための、材料、評価方法の策定など準備が整った。H26年度には、技術検証の評価を進めて行く予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
201335016Z