再生アソシエイト細胞によるiPS細胞移植時の免疫寛容治療研究

文献情報

文献番号
201335006A
報告書区分
総括
研究課題名
再生アソシエイト細胞によるiPS細胞移植時の免疫寛容治療研究
課題番号
H25-実用化(再生)-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
浅原 孝之(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 増田 治史(東海大学 医学部)
  • 福嶌 五月(大阪大学 医学部)
  • 田中 里佳(順天堂大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(再生医療関係研究分野)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
移植治療研究の基盤が整えられ臨床応用への道が開けてきたが、iPS細胞由来組織作製技術の進捗に較べ、移植時におけるiPS組織生着・機能化を図る技術が未開発のままである。
近年本研究室で、血液単核球の血管再生コンディション培養によって、血管再生細胞EPCの増幅とともに、マクロファージ・Tリンパ球の「再生型」への変換が進み、免疫寛容細胞の出現を確認した。
そこで、本プロジェクトではこの「再生アソシエイト細胞」と命名された細胞群による免疫抑制効果について、以下の2つの視点で研究を進める。
1)再生アソシエイト細胞の制御性T細胞による免疫寛容効果
2)「再生型」組織環境における抗炎症・血管再生を伴った免疫抑制作用
この免疫寛容作用は、バンクiPS細胞を用いた再生治療のための移植免疫制御の効果が期待できるとともに、移植細胞の生着・機能化に大きく貢献できる。
研究方法
課題①:再生アソシエイト細胞移植の免疫寛容研究
再生アソシエイト細胞の免疫寛容効果を研究し、同種・異種移植実験によって病変部での免疫寛容効果および抗炎症・血管再生効果を探索し、再生アソシエイト細胞移植治療の基盤メカニズムを以下の課題研究で明らかにする。
(1)再生アソシエイト細胞の獲得免疫反応に対する免疫寛容効果のin vitro研究
(2)再生アソシエイト細胞(同種同系)移植実験
(3)ヒト再生アソシエイト細胞(異種)移植実験
課題②:iPS組織移植のための再生アソシエイト細胞免疫寛容研究
iPSバンクのHLA matchingでのiPS組織移植を想定し、再生アソシエイト細胞の免疫寛容作用の実用化について検討する。すでに骨髄細胞での免疫寛容研究を進めている大阪大学のチームとの共同研究で以下の課題を進める。
(1) マウスiPS移植における再生アソシエイト細胞同種異系移植の免疫寛容作用の研究
課題③:再生アソシエイト細胞基盤・応用研究
(1)再生アソシエイト細胞免疫寛容メカニズムの最適化研究
再生アソシエイト細胞培養法における、末梢血EPC・単球Mp・Tリンパ球それぞれの表現型の変化を確認し、各細胞群の相互作用メカニズムについて研究することで、再生アソシエイト細胞としての免疫寛容作用・抗炎症作用各々を最適化する基礎・開発研究を行う。
(2)臨床再生アソシエイト細胞培養開発
この成果を臨床サンプルでの培養・品質管理を再現し、臨床培養法を最適化・標準化し、細胞製品品質管理、製品実用化開発を行う。
結果と考察
課題①:再生アソシエイト細胞移植の免疫寛容研究
本免疫寛容研究に関して、現在再生アソシエイト細胞in vitro実験系の最適化を進行させ、アッセイ系の確立、実験技術の確立など達成した。
マウス再生アソシエイト細胞に関しては、末梢血より単核球を採取し、経時的にQQ培養(再生アソシエイト細胞培養)を行い、①未分化EPCの培養増幅(EPCコロニーアッセイ)、②移植実験による血管再生能(血管内皮細胞・血管平滑筋細胞染色、レーザードップラー循環測定)、③抗炎症作用(組織iNOS染色、細胞FACS測定)を確認することが出来た。
さらに細胞群のTリンパ球・マクロファージタイピング、免疫抑制・抗炎症因子発現などについて解析し、制御性T細胞・抗炎症マクロファージの増幅を確認した。一連のマウス再生アソシエイト細胞の培養と移植実験は、東海大学から論文発表の予定である。以上の結果を踏まえて、大阪大学・順天堂大学でのマウス再生アソシエイト細胞移植実験を開始しており、来年度からの本格的な免疫寛容研究に応用される。
課題②:iPS組織移植のための再生アソシエイト細胞免疫寛容研究
本研究は、課題①の進行に合わせてH26年度に大阪大学および東海大学で開始予定である。
課題③:再生アソシエイト細胞基盤・応用研究
ヒト再生アソシエイト細胞の確立評価実験で、健康ヒト末梢血液単核球サンプルから再生アソシエイト細胞を培養し、①未分化EPCの増幅、②抗炎症性・再生性マクロファージ増幅(FACS測定)、③制御性T細胞・Th2細胞の増幅(FACS測定・活性化試験)を確認出来た。
再生アソシエイト細胞の再生支援効果については、下肢虚血モデルへの移植実験で血管再生能も確認され、Journal of American Heart Associationで論文掲載の予定である(2014, in press)。
結論
H25年度の研究活動によって、ヒト・マウス再生アソシエイト細胞培養法およびその評価法の再現性確立の点においては、目標は達成された。同種同系移植実験では、マウス再生アソシエイト細胞の血管再生・抗炎症効果は確認されつつあり、同種異系移植へと展開して、iPS細胞移植実験に繋げていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201335006Z