MRIを用いた気分障害の診断補助法について実用化研究

文献情報

文献番号
201334004A
報告書区分
総括
研究課題名
MRIを用いた気分障害の診断補助法について実用化研究
課題番号
H25-精神‐実用化(精神)-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
笠井 清登(東京大学 医学部附属病院 精神神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 亮太(大阪大学大学院、大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科・精神医学)
  • 飯高 哲也(名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・神経画像)
  • 花川 隆((独)国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンター先進脳画像研究部・非侵襲脳機能計測)
  • 福田 正人(群馬大学大学院医学系研究科神経精神医学・精神医学)
  • 國松 聡(東京大学医学部附属病院・放射線医学)
  • 中村 元昭(横浜市立大学・医学研究科・精神医学部門(神奈川県立精神医療センター、昭和大学附属烏山病院)・精神医学)
  • 山下 典生(岩手医科大学医歯薬総合研究所超高磁場MRI診断・病態研究部門・医用画像処理、医用情報システム開発)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(精神疾患関係研究分野)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
22,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、代表的拠点が連携した体制により、安静時機能的MRI(resting-state fMRI [rs-fMRI])および構造MRIを用いて、気分障害の診断に有用な、簡便で定量的な脳機能・構造評価システムを構築し、診療場面における補助検査として実用化することを目的とする。
 気分障害の診断は症状に基づいて行われ、双極性障害や統合失調症の患者もうつ病と誤診されやすい。これらの患者に抗うつ剤を投与すると、躁・精神病状態や自殺関連行動のリスクがある。したがって、気分障害患者の鑑別診断補助を行うバイオマーカーの必要性は高い。
 気分障害の補助診断法の実用化は光トポグラフィー(near-infrared spectroscopy [NIRS])を除いて例がなく、MRIは脳部位間の結合や脳深部の情報、脳構造の特徴を高空間解像度でとらえることが出来るため、NIRSと相補的な検査法の開発として独創的な取り組みとなる。
 さらに、時間解像度に優れたNIRSや素因情報を与えるゲノムデータとの相補的組み合わせによる診断精度の向上にも取り組む。
研究方法
 本研究では3年間で、うつ病・双極性障害・統合失調症の患者を対象に、rs-fMRIおよびT1強調画像を撮像し、データベースを作成し、そのうえでMRI検査による鑑別診断補助システムを構築し、診療場面で実用化できるよう有効性の実証を行うことを計画している。本研究は多施設共同研究であることが特徴であり、参加施設が情報や認識を共有し、研究を円滑に進められるよう準備を進めた。
結果と考察
①プロトコルの共通化
 共通撮像プロトコルの策定をすすめた。構造MRIT1強調画像は、ADNIプロトコルに基づき、ボクセルサイズ1×1×1.2mmの通常撮像を原則推奨とした。rs-fMRIは、開眼指示・固視点呈示などの条件を統一化した。各施設がADNIファントムを用いたファントム撮像を定期的に施行することとした。
 また、研究代表者の笠井や分担研究者の中村を中心として、全研究者が頻回に集まり、臨床指標の共通化をおこない、共通で使用するデータ入力シートを作成した。
②倫理関係
 参加施設における、必要な倫理委員会の承認をチェックした。また、分担研究者の國松を中心に、MRI読影による偶発的所見への対応の倫理的整備を行った。
③試験撮像と品質管理
 各施設で試験撮像を行い、その品質チェックを終了した。分担研究者の山下を中心に、画像品質管理の定量化プログラムを開発した。分担研究者の花川を中心に、異なるサイトで撮像された健常者データの比較検討を行った。さらに、放射線医学的読影を通じた品質管理について、各施設における実際の方法を相互に確認した。
④データベース化
 データベースの拠点を決定し、その枠組みを策定した。実際の運用に向けて、細部の調整を含め、データベース構築を開始した。分担研究者の橋本により大阪大学で撮像したrs-fMRI画像をNCNPの花川に送り、データベース構築上の課題を同定し、解決を図った。
⑤疾患判別法の開発
 分担研究者の飯高を中心として、rs-fMRIによる、機械学習理論を応用した判別法の開発に着手した。また、分担研究者の山下を中心として、構造MRIを用いた、個々人の局所脳体積絶対値の抽出アルゴリズムの開発を進めた。
⑥NIRSとの相補的利用の可能性の検討
 分担研究者の福田を中心に、構造MRI/rs-fMRIの高空間分解能とNIRSの高時間分解能を相補的に組み合わせた補助診断法の開発へ向けた検討を開始するとともに、NIRSの先例をもとにMRIによる補助診断法を実用化する上でのフローチャートや課題を特定した。
結論
 MRIによる気分障害の診断補助法の実用化に向けた、多施設共同研究におけるデータ解析および診断法確立に先立ち、共通のプロトコルを策定し、データ収集、データベース化、疾患判別法の開発などに着手した。今後は本格的にデータ収集をすすめ、MRI検査による標準化された補助診断システムを構築し、実用化できるよう完成度を高めてその有効性の実証を行う計画である。NIRSやゲノム情報との相補的利用の可能性についても研究を加速化させる予定である。実用化による診断の確実性の向上、治療法選択の適正化を通じて、気分障害の速やかな回復と予後の改善を図ることができ、また検査結果を当事者と共有することで当事者中心の精神科医療が可能となるものと期待できる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201334004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
29,400,000円
(2)補助金確定額
29,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,196,330円
人件費・謝金 4,649,595円
旅費 1,587,230円
その他 2,268,150円
間接経費 6,700,000円
合計 29,401,305円

備考

備考
研究遂行上、必要なものを購入した際に少額の不足が発生したので、
自己資金にて補填した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-