文献情報
文献番号
201331009A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代遺伝子解析による希少難治性循環器疾患の診断治療法の開発と臨床実用化に関する研究
課題番号
H23-実用化(難病)-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小室 一成(国立大学法人 東京大学大学院 医学系研究科 循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
- 朝野 仁裕(国立大学法人 大阪大学大学院 医学系研究科 循環器内科学 )
- 澤 芳樹(国立大学法人 大阪大学大学院 医学系研究科 心臓血管外科学 )
- 油谷 浩幸(国立大学法人 東京大学 先端科学技術研究センター)
- 扇田 久和(国立大学法人 滋賀医科大学 医学部)
- 李 鍾國(リ ショウコク)(国立大学法人 大阪大学大学院 医学系研究科 心血管再生医学 )
- 山崎 悟(国立循環器病研究センター 細胞生物学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(難病関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
61,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
難治性循環器疾患の原因遺伝子は多岐にわたる。未だ殆どが未解明な原因のため詳細な増悪機序を同定できぬまま高度医療に臨まざるを得ない。そこで効率良く心疾患増悪の原因を解明することができれば、早期治療と予後改善がもたらす社会的、経済的効果は計り知れないものがある。遺伝性が濃厚な希少難治性疾患の家系症例を対象に、原因となる新規rare variantを同定し、診断および治療薬標的を見出し、臨床実用化することを目指す。既存のシーズ候補のみならず、拠点施設と連携し複数の未解析家系から迅速に新規遺伝子同定を行う本ゲノム創薬研究は、今後の臨床実用化研究のモデルとなり得る。
研究方法
迅速なゲノム医療への応用のため、既知変異の迅速な鑑別除外により、新規変異を持つ確率の高い症例に次世代解析を行い、新規分子ないし変異に対する機動力ある表現型機能解析と同定遺伝情報の臨床応用への時間短縮をはかる。具体的には、難治性循環器疾患の遺伝性家系及び心不全症例の生体試料バンクの利用し、ゲノム解析の精度と速度を高める方策をとるとともに、心筋症マウス解析とゼブラフィッシュイメージングの利用によるin vivo 検証の迅速化や、生化学的解析法を利用した独自の生理活性物質同定およびシーズ探索技術の利用、そしてゲノム創薬へ向けてヒトiPS細胞による検証も用いた治療標的リガンド開発と臨床実用化など、得られたゲノム情報を迅速かつ有効に診療に結実させるよう研究を進める。
結果と考察
遺伝性疾患を疑う家系としては心筋症・不整脈合わせて、68家系・164症例、の症例を収集した。症例提供協力施設も倫理委員会承認を得て、豊富な症例登録環境となった。また、家系ではなくとも、孤発症例のうち、二次性心筋症を除外したものから約150症例の検体収集を行った。
得られたfastqファイル形式のデータをもとにLinuxサーバーシステムを用いてバリアント検出ができるパイプラインを既存のスクリプトと独自開発のスクリプトを組み合わせ、遺伝性心疾患既知遺伝子もリスト化した上で、心血管特異的に発現する遺伝子の同定を効率良く行うことに適したパイプラインを構築した。既にマッピング、バリアント検出、リードクオリティの検証などの情報解析パイプラインは既存オープンソースのスクリプトに本解析に沿ったスクリプトも加え、独自のパイプラインとして構築を完了した。アノテーション以降の遺伝子機能および家系情報も含めた解析が可能となるようにした情報解析システムの構築に向けて、国際共同研究協議も開始した。
上記解析システムを用いながら、採取した血液サンプルからゲノムDNAを抽出し、次世代シーケンス解析を行い、配列解読、配列解析(マッピング、バリアント検出)を終えた家系は2年目終了時点で26家系94症例となり、最終年度終了時点で150症例を超える解析を実施した。
心筋細胞機能変化を示す重要な分子をスクリーニングし、心筋症発症に関わると想定される新規遺伝子を同定(遺伝子①)した。各遺伝子について家族発症を認める別家系において、孤発例ながら同遺伝子にnon-synonymus変異を認める症例などを突き止めることに成功した。難治性不整脈の家系に対して新規遺伝子②を同定した。Xenopusを用いたパッチクランプ法による不整脈遺伝子機能解析を行った。当初の家系症例とは別家系に、本遺伝子の別部位にnon-synonymous変異を同定した。
得られたfastqファイル形式のデータをもとにLinuxサーバーシステムを用いてバリアント検出ができるパイプラインを既存のスクリプトと独自開発のスクリプトを組み合わせ、遺伝性心疾患既知遺伝子もリスト化した上で、心血管特異的に発現する遺伝子の同定を効率良く行うことに適したパイプラインを構築した。既にマッピング、バリアント検出、リードクオリティの検証などの情報解析パイプラインは既存オープンソースのスクリプトに本解析に沿ったスクリプトも加え、独自のパイプラインとして構築を完了した。アノテーション以降の遺伝子機能および家系情報も含めた解析が可能となるようにした情報解析システムの構築に向けて、国際共同研究協議も開始した。
上記解析システムを用いながら、採取した血液サンプルからゲノムDNAを抽出し、次世代シーケンス解析を行い、配列解読、配列解析(マッピング、バリアント検出)を終えた家系は2年目終了時点で26家系94症例となり、最終年度終了時点で150症例を超える解析を実施した。
心筋細胞機能変化を示す重要な分子をスクリーニングし、心筋症発症に関わると想定される新規遺伝子を同定(遺伝子①)した。各遺伝子について家族発症を認める別家系において、孤発例ながら同遺伝子にnon-synonymus変異を認める症例などを突き止めることに成功した。難治性不整脈の家系に対して新規遺伝子②を同定した。Xenopusを用いたパッチクランプ法による不整脈遺伝子機能解析を行った。当初の家系症例とは別家系に、本遺伝子の別部位にnon-synonymous変異を同定した。
結論
臨床情報と連結可能匿名化された心筋症ゲノム解析を実施し、豊富な症例バンクを構築することに成功した。それらの情報を利用し新規原因遺伝子を2つ同定することに成功した。片方は創薬シーズ探索に発展した研究に進み、他方は既に化合物を得て、機能解析を実施する段階に進んでいる。本研究を通じて遺伝心血管疾患の原因解明とその応用において、情報解析パイプラインの確立、新規遺伝子同定と創薬標的・シーズ探索研究へと進み、特異的化合物同定にいたる当初の目標を超える成果を上げることができた。
公開日・更新日
公開日
2018-05-21
更新日
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