地方自治体が行う保健事業の外部委託において、事業の質を確保するための方策に関する研究

文献情報

文献番号
201330028A
報告書区分
総括
研究課題名
地方自治体が行う保健事業の外部委託において、事業の質を確保するための方策に関する研究
課題番号
H25-健危-指定-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 曽根 智史(国立保健医療科学院)
  • 鳩野 洋子(九州大学 大学院医学研究院 保健学部門)
  • 柴田 喜幸(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 永田 昌子(産業医科大学 産業医実務研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地方自治体が実施する保健事業の多くが外部委託されている。外部委託された保健事業の質を保つためには、企画、実施、評価、見直しといった全体の流れの中で、保健事業に対しての知識を持つ保健師等の保健専門職が関与し、適切な対応をしていくことが必要である。そこで、そのような流れの中で、保健専門職が関与して、保健事業全体の水準を向上させるためのガイドを作成することを目的に調査研究を行うことにした。
研究方法
初年度の研究として、自治体が行う保健事業の外部委託に関する良好な実践事例を調査し、その結果をもとに、質の高い外部委託を行うために委託元である自治体の保健師等の保健医療専門職が行うべき事項を整理したチェックリストを開発した。また、実態状況を明らかにするための調査表を作成した。
結果と考察
「自治体が行う保健事業の外部委託に関する良好な実践事例の調査」では、機縁法で選出した6自治体に対してインタビュー調査を行った。6自治体のうち2自治体が一般競争入札方式で、4自治体が随意契約方式で外部事業者を選定していた。また、委託事業の内容は、特定保健指導が4自治体、高齢者保健(二次予防事業通所型介護予防事業)が1自治体、母子保健が(両親学級)1自治体であった。良好な事例として、外部委託前に自治体内で委託事業の詳細なマニュアルを作成し、それに基づいた仕様書の作成を事務職と協働して行っていた競争入札時の事例や、外部事業者が限られるなかで、事業者を育成するような姿勢で積極的に関わっている事例などが収集された。外部委託のプロセスは、どのような自治体においてもある程度共通の留意点が存在すると考えられるが、委託候補となる外部事業者が豊富な自治体と外部資源が限定的な自治体では、一部で留意点が異なってくる。前者では、契約の遂行状況やサービスの質の管理状況を監査したり、事業者間で競わせたりしながら、一定の緊張感を保つ方法を選択しうる。一方後者では、限られた外部事業者を育成するような姿勢で、積極的に関わっていくことが望ましいと考えられる。現実には、委託先を選別できる豊富な外部資源を持つ自治体はそれほど多くないと考えられ、信頼できる事業者を外部委託の関わりの中で地域資源として育てていくようなアプローチが求められる。また外部委託に関する課題として、①委託された保健事業のサービスの質を担保することが容易ではない、②サービス提供の際に得られる住民の情報が内部スタッフに伝わりにくくなる、③内部スタッフが外部委託されたサービスを経験できる機会がなくなる、などの課題も聴取された。次に「外部委託プロセスのチェックリストを盛り込んだ調査表の開発」では、インタビュー調査の内容から、委託事業の質の確保のために重要と思われる項目を抽出、整理して40項目のチェックリスト原案を作成した上で、インタビュー対象者に郵送法により項目の妥当性を尋ね、回答に基づいて研究班内で検討を繰り返し、最終的に38項目からなるチェックリストを開発した。チェックリストは、その作成プロセスから一定の内容妥当性を有していると考えられた。全国の自治体において、地域のニーズに合った外部委託が適切に行われ、保健事業の成果を上げるためには、今後いくつかの支援が必要と考えられる。具体的には、事業全体の成果と効率を両立させる保健事業の外部委託における基本的事項をまとめたガイドの作成が必要である。そのためには現在の委託の実態を把握することが不可欠となる。自治体の外部委託に関する全国調査を行うため、開発したチェックリストの内容に加え、自治体事業の委託実施状況とその種別(競争入札/随意契約)や委託における課題も把握できる調査表を作成した。平成26年1月に調査票を全国の市町村に配付し、回収を行った。
結論
最終年度に当たる平成26年度には、全国調査の結果を分析し、委託の実態が明らかにするとともに、その結果や良好実践事例調査の結果をもとに、「地方自治体における保健事業の外部委託に関するチェックリストおよび改善ガイド」および「保健事業の外部委託に関する良好実践事例集」を作成する予定である。また併せて、外部委託を含めた保健事業の質の向上に貢献する上で必要な保健専門職の資質を検討する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201330028Z