レジオネラ検査の標準化及び消毒等に係る公衆浴場等における衛生管理手法に関する研究

文献情報

文献番号
201330020A
報告書区分
総括
研究課題名
レジオネラ検査の標準化及び消毒等に係る公衆浴場等における衛生管理手法に関する研究
課題番号
H25-健危-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
倉 文明(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 神野 透人(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 縣 邦雄(アクアス株式会社つくば総合研究所)
  • 八木田 健司(国立感染症研究所 寄生動物部 )
  • 前川 純子(国立感染症研究所 細菌第一部 )
  • 黒木 俊郎(神奈川県衛生研究所 微生物部)
  • 中嶋 洋(岡山県環境保健センター 保健科学部)
  • 緒方 喜久代(大分県衛生環境研究センター 微生物担当)
  • 烏谷 竜哉(愛媛県立衛生環境研究所 衛生研究課)
  • 森本 洋(北海道立衛生研究所 感染症センター感染症部細菌グループ)
  • 荒井 桂子(横浜市衛生研究所 検査研究課)
  • 磯部 順子(富山県衛生研究所 細菌部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 重篤な肺炎を引き起こすレジオネラ属菌による、浴槽水等の環境の水汚染が問題となっている。培養検査に1週間を要し、迅速な検査法が求められている。培養検査法の測定値は信頼性が懸念され、外部精度管理が必要とされている。遊離塩素消毒しても安全性の確保困難な浴槽水があり、解決に向け、モノクロラミン消毒を入浴施設において検証する。
研究方法
 市販の迅速検査キット(qPCR法及びLAMP法)及び生菌迅速検査キットLC (liquid culture) EMA(Ethidium monoazide)-qPCR法について、浴槽水等の実試料を用い、平板培養法に対する感度、特異度の評価を行った。新しいneuAhプライマーを利用したsequence-based typingをLegionella pneumophila(Lp)に行った。
結果と考察
 pH7.3~9.0の循環式温泉施設3ヶ所で、浴槽水のモノクロラミンを3mg/Lに維持して、4週間以上浴槽水、ろ過器内水のレジオネラ、アメーバを不検出にできた。モノクロラミン20 mg/Lによる配管洗浄は、ろ過器逆洗水とヘヤーキャッチャー接続配管拭取り検体の従属栄養細菌を大幅に減少させた。遊離塩素管理からモノクロラミン3 mg/Lに切り替えて、その接続配管の従属栄養細菌は大幅減少し、バイオフィルム除去、付着防止効果があった。7源泉水で調査し、硫化水素を含む温泉水は遊離塩素と同様にモノクロラミンを大幅に減少させた。遊離塩素が急減したアンモニア態窒素とフミン酸では、モノクロラミンへの影響は少なかった。鉄イオンでは、添加直後の消失は遊離塩素よりモノクロラミンの方が少なかった。ヨウ化物か臭化物のイオンが存在する泉質では、濃度測定が困難であった。モノクロラミン消毒は遊離塩素消毒に比べ、温泉水中の消毒副生成物を低減させた。ヨウ素イオンが存在する温泉水ではヨウ素化消毒副生成物の増加がみられた。DPD試薬では測定困難な着色やアンモニア態窒素が多い試料で、残留塩素電流滴定器は遊離残留塩素と結合残留塩素の濃度を別々に決定できた。
 2001~2012年の冷却水中のレジオネラ検出率は、30%程度から25%弱に漸減しているが、塩素系殺菌剤はレジオネラを抑制困難であった。また、冷却水には既存種に分類されないレジオネラ生菌が多く存在することが判明した。モデル冷却塔において、遊離塩素を常時0.2mg/L以上維持した場合とイソチアゾリン製剤処理は、20週間レジオネラを抑制した。
 qPCR法とLAMP法は同等の成績が得られた(131検体で感度100%、特異度53.6%~57.0%)。LC EMA-qPCR法は感度100%、特異度69.9%であったが、1CFU相当/100mLを陽性とすると感度97.4%、特異度80.6%に改善された。LC EMA-qPCR法の感度向上に、EMA処理前の活性炭を除く遠心操作を提案した。
 39地衛研を対象に培養によるレジオネラ測定の外部精度管理を実施した。菌数を任意に設定した標準試料(バイオボール)の作製と配布を民間に委託した。本研究班が推奨する標準的検査法(非濃縮/濃縮、未処理/酸処理/熱処理の6通り)では、適切な結果が得られた。その際、測定項目を削減すると測定値が低下することが示された。富山県、九州地方の複数箇所で民間検査機関を含め研修会を試行した。厚労省のレジオネラ対策のHPにある[循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル]の改訂案を作成した。環境衛生監視員や施設管理者向けに、実例を中心として有用な [レジオネラ症対策のてびき](日本環境衛生センター)を出版した。
 neuA配列の増幅に成功し、sequence type(ST)を決定できた。55臨床分離株を型別し、散発事例と見られていた事例から集団感染事例を見出した。LpSG12による感染症例を日本で初めて報告した。
 富山県内のシャワー水32、車のウオッシャー液41、河川水25、土壌20の各検体を調査し、各25%、2.4%、28%(アメーバ培養法)、40%(同左)からレジオネラが分離された。倉敷周辺にはST93(LpSG3)による症例が多く、131株のPFGE型を検査したが、ST93の生息環境は未だ不明である。一般家庭内を調査して水槽、洗面所、散水ホースからレジオネラを検出した。
 宿主アメーバへの障害性を検査した。Lpの3亜種全てに抵抗性のアメーバ、Lp pneumophilaで障害されるアメーバ、Lp pneumophilaとLp fraseriで障害されるアメーバ、3亜種全てで障害されるアメーバ株がみられた。
結論
 入浴施設のモノクロラミン消毒を実用化した。レジオネラ生菌検出キットを改良した。標準試料の作製と配布を委託し、外部精度管理を行なった。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

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研究成果の刊行に関する一覧表
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公開日・更新日

公開日
2020-06-18
更新日
-

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収支報告書

文献番号
201330020Z