医療・介護福祉施設を含む地域密着型の感染制御ネットワークの構築に関する研究

文献情報

文献番号
201330017A
報告書区分
総括
研究課題名
医療・介護福祉施設を含む地域密着型の感染制御ネットワークの構築に関する研究
課題番号
H25-健危-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
加瀬 哲男(大阪府立公衆衛生研究所 感染症部)
研究分担者(所属機関)
  • 朝野 和典(大阪大学医学部附属病院 感染制御部)
  • 浅田 留美子(大阪府吹田保健所)
  • 駒野 淳(大阪府立公衆衛生研究所 感染症部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医療施設における院内感染は患者や医療従事者に不必要な苦しみと医療機関に多大な負担を及ぼす。これに対応するため、効果的な院内感染防止が体系的に進められてきた。この背景には、院内感染防止への投資の方が院内感染発生後の処置よりも費用対効果が高いことが指摘される。
 医療機関における感染制御(院内感染対策)は確立しつつあるが、医療関連感染(Healthcare- associated infection)制御の観点からは、医療機関以外の施設における対策が必要である。医療関連感染予防を地域で効果的に実施できれば、高い費用対効果で感染症対策を実施できる可能性がある。医療機関に対し大きなストレスになると思われる福祉施設内における感染を戦略的に制御できれば、社会に対する貢献度は非常に大きいと思われる。
 福祉施設における施設内感染は入所者や施設従事者に不必要な苦しみと施設に多大な負担を及ぼす。これは医療機関における状況と全く同じであり、対策においても類似のアプローチが有効であることを示唆する。そこで、医療機関の取り組みを模倣し、福祉施設の感染症対策ネットワークを構築することを目的としている。
研究方法
 介護福祉施設のネットワークを最も効果的に運営できる地区として、行政と地域の保健所が感染制御に関して必要性を強く認識し対策に積極的であること、行政と福祉施設が良好な関係にあり、施設数が研究事業の推進に適切な規模であること、医療機関における院内感染連絡会が既に存在し効果的に機能していることなどを指標に大阪府管内の地区を評価し対象地域を絞り込んだ。その結果、吹田市内の19の特別養護老人ホームに文書で本研究事業に対する参加依頼した。
 施設内感染の現状と対策を把握するために記述式アンケートによる調査を行った。全19施設中、12施設から有効回答を得た。施設への個別訪問による感染制御に係る現状と問題点を把握するため、複数の施設で現地調査を行い感染制御に係る現状と問題点を整理した。
 大阪府公衆衛生研究所、福祉施設の施設長または感染制御に関わる施設の担当者、吹田保健所、吹田市高齢支援課を招聘して定期的な会合を開催した。会議では研究班が収集した調査結果の解析報告、感染症の専門家による講演、施設の感染症対策に関する経験に関する情報共有、ネットワーク研究会活動の運営法、活動方針等について意見交換を行った。
 施設の個別のニーズに応えるために大阪府立公衆衛生研究所の職員が施設を個別訪問した。これは、目的に応じて講習型、アウトブレイク事後調査型、平常時の感染症対策に関する調査型の3種があり、それぞれ大阪府立公衆衛生研究所と吹田保健所の専門職および病院の感染制御チームの看護師が参加し、支援のための討議を行った。
 施設と病院感染対策を結ぶ医療機関側受け皿としてのネットワーク(吹田保健所管内院内感染対策会議)を結びつけるために、介護福祉施設の職員を対象とした講習会を実施するとともに吹田保健所管内院内感染対策会議では、介護福祉施設のネットワークを構築していく旨を説明した。
結果と考察
 本年度は大阪府吹田市をモデル地区に選定し、管内の特別養護老人ホーム19施設を対象として吹田市高齢支援課、吹田保健所、大阪府立公衆衛生研究所が参加する施設内感染対策支援ネットワークを構築し、現状の把握と効率的な支援活動のあり方を模索した。感染症対策に関する知識、意識、経験、対策基準には施設間で差があり、現状の対策に不安がある実態が判明した。しかしながら、ネットワーク活動が感染制御に恩恵をもたらすとの共通認識を醸成する事ができ、ネットワークを通じた感染対策支援が介護福祉の質の改善にもたらす影響について科学的知見を収集できる基盤が整備できたと考える。
  高齢化社会を迎え、国民への質の高い介護福祉と医療の提供を財政的に担保する必要がある。本研究は、「地域」と「感染症制御」の視点から介護と医療を捉える事により、課題克服への貢献を目指している。高齢者は感染症への抵抗性が低く、医療施設における感染制御対策において介護施設入所者の関与は大きい。我々は介護施設での感染症対策を強化する事で、感染制御に要する医療費を削減できる可能性について検討していくことを考えている。
結論
 医療・介護福祉施設を含む地域密着型の感染制御ネットワークを構築するために、モデルとなる地域と施設を選択し、ネットワークシステムを試験的に運用した。現状の把握と効率的な支援活動のあり方を模索し、ネットワークの有用性に関し一定の成果をあげ、感染対策支援が介護福祉の質の改善にもたらす影響について科学的知見を収集できる基盤が整備できたと考える。ネットワークを構築することによって地域住民に安心・安全を提供できる福祉への貢献が期待される。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201330017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,960,000円
(2)補助金確定額
5,960,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,491,556円
人件費・謝金 899,762円
旅費 71,440円
その他 237,242円
間接経費 1,260,000円
合計 5,960,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2014-06-30
更新日
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