質の高いサービスを提供するための地域保健行政従事者の系統的な人材育成に関する研究

文献情報

文献番号
201330007A
報告書区分
総括
研究課題名
質の高いサービスを提供するための地域保健行政従事者の系統的な人材育成に関する研究
課題番号
H24-健危-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
橘 とも子(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 宇田 英典(鹿児島県鹿児島地域振興局保健福祉環境部(兼)伊集院保健所)
  • 安藤 雄一(国立保健医療科学院)
  • 奥田 博子(国立保健医療科学院)
  • 水島 洋(国立保健医療科学院)
  • 堀井 聡子(国立保健医療科学院)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学)
  • 本橋 豊(秋田大学)
  • 内山 博之(日本社会事業大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,320,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では地域保健対策検討会報告書の提言「都道府県及び市町村の人材育成計画」策定に資する資料開発を目指した。都道府県や政令市等が、地域保健行政従事者に対する体系的な専門分野に関する研修を計画的に推進する際に利用可能で効果的なモデル資料を、地域保健対策基本指針の改正趣旨に沿って開発・作成することを目的とした。
研究方法
平成 24年度成果に基づき追加調査による実態把握を行いつつ、以下のモデル資料・モデルツールの検討・開発・作成を実施した。
1)地方自治体における地域保健人材育成計画の実態把握:
i)都道府県・政令市等の人材育成計画に関する実態・意見調査に関する研究:先進的取組み自治体担当者に対する二次調査(聞き取り調査)。
ii)市区町村等の人材育成計画に関する実態・意見調査に関する研究災害時健康危機対応の支援活動に必要な行政保健師に求められる能力・知識習得教育の実態把握調査。対象:行政保健師77名。自記式質問紙調査。
iii)パートナー型コミュニティ支援手法による人材育成計画に関する研究 文献のシステマティックレビュー、日米の関連事例収集・調査・参与観察・質的分析。
iv)ソーシャルキャピタルの中核となる人材の育成計画に関する研究自主防災組織等の研修カリキュラムを収集分析。中核要素抽出。雲仙普賢岳噴火被災地区における地区組織活動事例の検討。
v)医学生・研修医の地域保健分野でのキャリア形成支援に関する研究宿泊・参加型研修プログラム参加者のキャリア形成意識の変化を分析。
vi)福祉事務所等における保健師の効果的な活動・活用事例に関する研究 生活保護受給者への保健師、看護師等による健康管理に係る先駆的自治体調査・望ましい健康管理活動の内容明確化、改訂事例集の開発。
2)資料・ツールの開発・作成
i)地域保健行政従事者の人材育成ガイドラインの開発に関する研究公衆衛生医師について16自治体の先進的取組み事例の調査把握。地方自治体における公衆衛生医師職員の確保・育成ガイドラインの検討・開発・作成。
ii)クラウドを活用した自治体職員研修登録システムの開発に関する研究 平成25年度健康危機管理研修を対象に、利用者が研修履歴管理できるクラウドシステムの要件を整理。
結果と考察
1)
i)地域保健行政従事者全体・少数職種に係る計画的人材育成体制が整備されている自治体は少なく、特定職種ごとの人材育成計画のみ有する自治体が比較的多かった。
ii)災害時保健活動経験:あり66(85.7%),なし11(14.3%)。災害保健活動に関する教育歴:基礎教育課程:あり2(2.7%)、卒後教育あり63(81.8%)。卒後教育受講研修は回答数63に対し国主催7(11.1%),県主催54(85.7%),市町村主催29(46.0%),職能団体12(19.5%),その他15(23.8%)。
iii)CBPR(Community-based participatory research)等の導入や住民参加型事業の運営プロセス自体が、地域保健従事者の能力強化につながっていた。
iv)ソーシャルキャピタルの中核となる人材の研修カリキュラム内容の柱として「知識、技能、配慮」を抽出し、各々について具体的要素を整理し得た。
v)医学生・研修医のセミナー参加者22名、講師・ファシリテーター26名。受講後は前より有意にキャリアパス形成に係る回答得点上昇。
vi)埼玉県上尾市・神奈川県川崎市といった先進自治体での福祉事務所等の生活保護受給者健康管理に係る独自の工夫は、少数ながら広がりを見せていた。改訂事例集「福祉事務所等における保健師の効果的な活動・活用事例.平成25年10月」を開発・作成・配布した。
2)
i)地方自治体人事担当者向け「公衆衛生医師職員の確保・育成ガイドライン」を開発・作成した。
ii)クラウドを活用した自治体職員研修登録モデルシステムの要件概要を整理した。
結論
把握した実態から、自治体の人材育成計画に関する現状の特徴は、①大半の自治体で、人材育成計画の策定は職種ごとに検討している、②保健師の計画的人材育成体制の整備は他職種より顕著に進んでいる、③少数職種では未整備が目立つ、に集約できると思われた。今後の方向性として、自治体における先駆的な取り組みや、開発・作成したモデル資料が全国の自治体に周知されるよう、情報発信する必要性が考えられた。

公開日・更新日

公開日
2017-05-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201330007B
報告書区分
総合
研究課題名
質の高いサービスを提供するための地域保健行政従事者の系統的な人材育成に関する研究
課題番号
H24-健危-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
橘 とも子(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 晃(国立保健医療科学院)
  • 安藤 雄一(国立保健医療科学院)
  • 奥田 博子(国立保健医療科学院)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学)
  • 本橋 豊(秋田大学)
  • 内山 博之(日本社会事業大学)
  • 宇田 英典(鹿児島県鹿児島地域振興局保健福祉環境部(兼)伊集院保健所)
  • 水島 洋(国立保健医療科学院)
  • 堀井 聡子(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
研究代表者: 曽根智史国立保健医療科学院【H24.4-H24.6】         橘とも子国立保健医療科学院【H24.6-H25.3】 研究分担者:【H24年度】 橘とも子国立保健医療科学院【H24.4-H24.6】

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、地域保健対策検討会報告書の提言「都道府県及び市町村の人材育成計画」策定に資する資料の開発・作成が目的である。そのために、 2年間の研究期間において①「地域保健人材の育成に関する多角的な実態把握」を行うとともに、②「地域保健人材に習得の必要な職種共通コンピテンシー」を整理・統合・補充し、③「都道府県や政令市等が、地域保健行政従事者に対する系統的な専門分野に関する研修を計画的に推進する際に利用可能で効果的なモデル資料」を開発・作成することを目指すこととした。
研究方法
具体的には、地域保健人材育成に関して①多角的な実態把握、②職種共通コンピテンシーの整理・統合・補充を行いつつ、③自治体が系統的人材育成を推進する際に参考となるようなモデル資料やモデルツールを開発作成する、という方法を用いた。
[平成24年度]
1)地域保健人材に必要とされるコンピテンシーの整理・統合・補充
2)都道府県・政令市の人材育成計画に関する実態・意見調査方法
3)医学生・研修医の地域保健分野でのキャリア形成支援に関する調査
4)ソーシャルキャピタルの中核となる人材の育成に関する研究
5)環境衛生監視員の資質・能力を向上させるための教育研修
6)保健師の資質・能力を向上させるための教育研修システム開発に関する研究
7)歯科口腔保健に関わる人材の資質・能力を向上させるための教育研修システム開発に関する研究
8)福祉事務所等における保健師の効果的な活動・活用事例に関する研究
[平成25年度]
1)地方自治体における地域保健人材育成計画の実態に関する研究
2)都道府県・政令市等の人材育成計画に関する実態・意見調査に関する研究
3)市区町村等の人材育成計画に関する実態・意見調査に関する研究
4)パートナー型コミュニティ支援手法による人材育成計画に関する研究
5)ソーシャルキャピタルの中核となる人材の育成計画に関する研究
6)医学生・研修医の地域保健分野でのキャリア形成支援に関する研究
7)福祉事務所等における保健師の効果的な活動・活用事例に関する研究
8)地域保健行政従事者の人材育成ガイドラインの開発に関する研究
(倫理面への配慮)承認番号 NIPH-IBRA#12039
結果と考察
①「地方自治体の人材育成計画、医学生・研修医のキャリア形成支援、ソーシャルキャピタルの中核人材 1育成、環境衛生監視員・保健師・歯科口腔保健人材、福祉事務所等の保健師活動、パートナー型コミュニティ支援手法、等について実態把握」するとともに、②「地域保健人材に必要とされるコンピテンシーを整理・統合・補充」しえた。地域保健行政職員の人材育成計画に関する実態として、すべての地域保健人材育成計画は①策定済み自治体 9.9%,②策定なし 94.1%のうち職種によってはある 41.5%,③そのうち保健師が 84.7%、等であった。また③「『地方自治体の人事担当者向けの [公衆衛生医師職員の確保・育成ガイドライン(案)]および『クラウドを活用した自治体職員の研修登録・履歴管理システム要件の概要』を開発・作成」しえた。
今後は、本研究成果を活用して自治体研修責任者等への普及を図る必要があり、併せて、自治体が実状に応じて選択できる展開方法のモデル開発を実態把握しつつ進めることが、すべての地域保健従事職員に対する系統的人材育成体制の充実に向けて重要と考えられた。
結論
地域保健行政職員の人材育成について全国自治体の実態として、すべての地域保健人材育成計画は①策定済み自治体 9. 9%,②策定なし 94.1%のうち職種によってはある41.5%,③そのうち保健師が 84.7%、等を把握した。地域保健対策検討会報告書の提言「都道府県及び市町村の人材育成計画」の策定に資する資料を開発・作成した。
①リーフレット :地域保健人材に求められる職種共通の専門能力&コンピテンシー.②事例集 :福祉事務所等における保健師の効果的な活動・活用事例事例集.③資料小冊子 :都道府県・政令市等の地域保健人材育成計画の実態調査.④事例集 :福祉事務所等における保健師の効果的な活動・活用事例 . ⑤資料小冊子 : 公衆衛生医師職員の確保・育成ガイドライン (印刷中)⑥リーフレット :クラウドを活用した研修管理システムの要件⑦歯科口腔保健の人材育成シート .
今後、本研究成果を活用して自治体研修責任者等への普及を図る必要がある。併せて、自治体が実状に応じて選択できる展開方法のモデル開発を、実態把握しつつ行い、検討会等との連動に配慮しながら検討を進めることが、地域保健関係職員横断的な人材育成ガイドラインの策定に向けて重要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2016-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201330007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
地方自治体における地域保健行政職員への人材育成の実態については、これまで学術的な調査研究報告がなかったが、本研究により、全国の人材育成体制施策に係る実態報告として、学術的に公表することが出来た。また本研究成果は、地方自治体の地域保健行政に係る系統的人材育成体制づくりに対して、専門的・実践的な観点で、その促進策としての寄与が期待できる。
臨床的観点からの成果
厚労行政や地域保健行政との関わりは、実地臨床では大変重要であるにも関わらず、系統的に医学生や研修医が習得する機会は限られる現状である。本研究では、医学生・研修医の地域保健分野でのキャリア形成支援に係る研究において、効果的な方法論等の研究成果を得、前述の問題への解決策として貢献した。また平成24年度研究成果として作成したパンフレット「地域保健従事者に求められる職種共通の専門能力」を活用し、国立保健医療科学院の保健所長研修において、系統的人材育成に係る講義を行った(平成26-29年度)。
ガイドライン等の開発
本研究では、全国保健所長会の協力により「公衆衛生医師職員の確保・育成ガイドライン (案)」を開発し得た。また、地域保健人材に求められる職種共通の専門能力&コンピテンシーの評価指標ガイドラインと位置づけられる成果として、「地域保健従事者に求められる『職種共通の専門能力』」を開発・作成した。
その他行政的観点からの成果
本研究により、厚生労働省における地域保健対策検討会報告書の提言「都道府県及び市町村の人材育成計画」の策定に資する資料を開発・作成し得た。また、本研究において多角的に検討した研究成果や、開発・作成した資料やツールは、地方自治体が行う、地域保健行政職員に対する計画的な人材育成体制づくり施策の推進に際して、効果的かつ実践的な促進策として寄与しうる。
その他のインパクト
本研究成果は、地方自治体の地域保健行政に係る、系統的人材育成の体制づくり政策に関わる提言を含むことから、国立保健医療科学院の専門課程における担当の研修プログラムに盛り込み、講義等を行った。

発表件数

原著論文(和文)
1件
橘とも子, 奥田博子, 安藤雄一. 地域保健行政従事者に対する系統的人材育成に関する検討. 保健医療科学.2014;63 (1):70-83.
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
1件
水島 洋 電子機器による環境制御:移動体通信端末とクラウドの可能性と課題 Journal of Clinical Rehabilitation 2013.Oct; 22 (10):1043-47 .
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
国立保健医療科学院専門課程研修での教材活用により、研究成果の普及・啓発を行った。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
橘とも子, 奥田博子, 安藤雄一.
地域保健行政従事者に対する系統的人材育成に関する検討.
保健医療科学 , 63 (1) , 70-83  (2014)
原著論文2
Haraoka T, Hayasaka S, Murata C, Ojima T.
Prevention of injuries and dis eases in non-professional disaster volun teer activities in the Great East Japan Earthquake areas: A preliminary study.
Public Health. , 127 (1) , 72-75  (2013)
原著論文3
Haraoka T, Hayasaka S, Murata C, Yamaoka T, Ojima T.
Factors Relat ed to Furniture Anchoring: A Method for Reducing Harm During Earthqua kes.
Disaster Med Public Health Prep 2013. , in press-  (2013)
原著論文4
Mizushima H. Ishimine Y. Kanatani Y.
A health support system of disaster management using the cloud.
World Disaster Report 2013 , Nov , 81-83  (2013)

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
2018-06-19

収支報告書

文献番号
201330007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,320,000円
(2)補助金確定額
4,320,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 188,866円
人件費・謝金 1,437,791円
旅費 1,640,167円
その他 1,053,217円
間接経費 0円
合計 4,320,041円

備考

備考
預金利息0円,自己負担41円

公開日・更新日

公開日
2017-05-24
更新日
-