医療機器の登録認証機関の国際整合に向けた課題の可視化に関する研究

文献情報

文献番号
201328073A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機器の登録認証機関の国際整合に向けた課題の可視化に関する研究
課題番号
H25-医薬-一般-016
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
池田 浩治(東北大学病院 臨床研究推進センター 開発推進部門)
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 裕一(埼玉医科大学 保健医療学部 医用生体工学科)
  • 山崎 直也(東北大学病院 臨床研究推進センター 開発推進部門)
  • 西山 彩子(東北大学病院 臨床研究推進センター 開発推進部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 平成25年11月に国会で成立した薬事法改正法案において、一部の高度管理医療機器の登録認証機関への移行が示された。登録認証機関において開始されるリスクの高い高度管理医療機器の審査が適切な質のもと実施される必要があるため、IMDRFで検討がなされている登録認証機関の質の確保、維持を実現するシステムや諸外国の登録認証機関への規制要件を調査し、法改正後の登録認証機関が適切に品質、有効性及び安全性確保のための審査ができる体制を整備することにある。
研究方法
 登録認証機関の現状を把握することが重要であるため、まず国内登録認証機関への現状調査、海外認証機関への調査を実施した。海外で進められている認証機関の質確保に向けた取り組みについて理解を深めるため、海外規制当局への聞き取り調査、及びIMDRF文書を中心として情報収集と文献調査を実施した。
 調査により得られた資料を基に、国内の登録認証機関の現状の把握と課題の抽出を行い、IMDRF文書等の内容を踏まえ国内でまず確保すべき審査の質確保を念頭において提言を行う。
結果と考察
 国内の登録認証機関の調査では、取り扱う品目の偏りも影響していると思われるが、海外を中心に国際的に展開している認証機関のほうが教育体制は整備され、幅広い領域をサポートできる体制を維持しているように見えた。審査員の力量については、評価できる客観的指標がないため数値化等はできないが、実地調査におけるヒアリングにおいて、どの機関においても審査の力を養うためには、数多くの品目の審査を体験することが重要であると述べられていたことから、力量確保のためには、採用時の条件を厳しくするよりはむしろ、審査の経験を踏まえた評価体系を作成し、実運用の中で確認しながら最適化させていくことが効果的と思われた。
 欧州では、PIP問題に端を発した認証審査の強化の必要性に関する議論は、これまでに蓄積してきた課題と入り交り、市販前の臨床評価の強化、市販後に実施するQMSの抜き打ち調査を中心とした規制強化への動きにつながっている。海外の規制の動きは、速やかに我が国にも波及し、何らかの影響が発生することが予想されることから、PIP問題を中心に、今回の規制強化までの動きについて文献調査などを行い、情報を収集整理した。PIP問題は、登録認証機関の問題というよりはむしろ、不適切な品質管理を秘密裏に行おうとする不正な企業が起こした問題であったことから、市販後に実施するQMSの調査を抜き打ちで行うことにより、不連続な品質管理を確認することが選択された。しかし、自己認証という概念で成り立つ欧州のCEマーク制度において馴染まない抜き打ち調査の実施を行わざるを得ない背景には、自己認証では難しい事情を包含している可能性も考えられ、引き続き動向を見ていくことが必要である。
結論
 これらの情報を踏まえ、登録認証機関における審査員の力量確保及び維持、さらには登録認証機関の力量確保のために必要なシステム整備において重要と考えられる以下の点について、報告書の中で提言することとした。
1)登録認証機関は領域ごとに審査員の審査の力量確保のためのトレーニングを実施し、一定数以上の審査品目数を維持するなど、審査員の審査レベルを向上させるための措置を講ずること
2)登録認証機関及びそこに属する審査員のレベルを維持するため、定期的にPMDAと意見交換が行える体制を構築すること

 法改正と併せて行われる規制の合理化の中には、承認審査を経ることなく自己管理に委ねられる範囲の拡大も含まれているが、自己管理への移行はQMS調査の強化と共存しないと成立しないと思われる。そのため、業界団体と検討されていた段階では、自己管理への移行とQMS調査の強化が一組で議論がなされていたことをかんがみると、何らかの方法で事後的にでも自己管理が適切に行われているかを確認することが必要と思われる。
 高度管理医療機器を認証移行するにあたり、認証基準が従来以上に重要になると思われる。たとえば、細かい基準を設定すると審査は単純化するが、わずかな違いで認証基準外となるなど認証基準の硬直化が懸念される。一方、生物学的安全性のような一般的に適合が要求されるような基準のみを設定すると、従来製品と明らかに異なる製品を基準外と判断するかどうかが運用のカギとなるが、その基準を設けることは簡単ではない。同等性の範囲を弾力的に運用していくことが必要になってくるが、具体的な認証基準の設定を進めていくにあたり、議論を深めていく必要があると考える。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201328073Z