ロドデノール配合薬用化粧品による白斑症状の原因究明・再発防止に係る研究

文献情報

文献番号
201328070A
報告書区分
総括
研究課題名
ロドデノール配合薬用化粧品による白斑症状の原因究明・再発防止に係る研究
課題番号
H25-医薬-指定-027
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
川西 徹(国立医薬品食品衛生研究所 )
研究分担者(所属機関)
  • 石川 治(群馬大学大学院 医学研究科皮膚科)
  • 最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部)
  • 秋山 卓美(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,735,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノール(ロドデノール)を配合した薬用化粧品は医薬部外品として、「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ等」の効能効果で承認された。しかし本化粧品を使用後に白斑になったとの報告が寄せられ、平成25年7月から製造販売業者による自主回収が実施された。本研究は製造販売業者及び関連学会の協力も得ながら、ロドデノールによる白斑発症の原因究明を臨床及び基礎の両面から進める。また現状の医薬部外品の承認申請時及び製造販売後の試験方法や報告制度などを調査し、再発防止の観点から新規医薬部外品の承認審査及び製造販売後の安全性確保のための方策を検討する。
研究方法
1.原因究明に関する研究(臨床解析):当該化粧品の報道以降に白斑を主訴として研究班員病院皮膚科外来を受診した新規患者、及びそれ以前に尋常性白斑として通院加療中の患者でロドデノール含有化粧品の使用歴が確認された患者を解析した。
2.原因究明に関する研究(基礎研究):化学物質により誘導される皮膚脱色素斑形成に関する論文を収集し調査した。また、カネボウ化粧品より提供された非臨床試験結果の評価を行った。ロドデノールの純度及び製品中含量を分析した。さらに、チロシナーゼ代謝試験の生成物を分析した。
3.再発防止に関する研究:当該化粧品の承認申請時提出資料、現行医薬部外品の承認申請時に実施する非臨床試験、臨床試験の種類及び方法、製造販売後調査手法、副作用報告制度、製造販売後の安全管理の基準、適正使用に関する注意喚起の方法等を調査した。
結果と考察
1.発症機序の解明に関わる調査研究
ロドデノール配合化粧品により白斑を生じたと考えられる患者の約半数は使用開始1年以内に脱色素斑を生じ、表皮内のメラノサイトの消失、真皮上層へのメラニンの滴落に加え単核球の浸潤が認められた。化粧品の使用を中止した患者の74%に症状の改善が見られた。今後患者の経過観察を行うとともに、パッチテストによる白斑への免疫系の関与、および治療法についても検討する。
褐色モルモットへのロドデノール塗布により表皮メラノサイトは著しく減少し、患者の臨床症状と類似の結果が得られることが、カネボウ化粧品の事故後の追試験で示された。ロドデノールの純度はほぼ100%で、白斑はロドデノールに由来するものと考えられた。ロドデノールは、メラノサイトのチロシナーゼにより細胞毒性のより強い水酸化体に代謝され、この代謝がメラノサイトの細胞死に強く関わることが示唆された。一方で、職業性白斑を起こすことが報告されているフェノール誘導体である4-tert-ブチルフェノールやヒドロキノンモノベンジルエーテルは、メラノサイトへの直接作用に加え、免疫系を介する二相性の作用がメラノサイト消失をもたらすと考えられている。カネボウ化粧品の報告では、ロドデノールの感作性試験はおおむね陰性の結果であったが、免疫系の関与についてはさらに検討が必要と思われる。
2.再発防止に向けた対応策の検討
既存の安全対策の方策について整理し、非臨床、臨床及び製造販売後のそれぞれの段階における対応方策を検討した。医療用医薬品に準じて、新有効成分含有薬用化粧品の承認申請時には、臨床試験として長期安全性試験を皮膚科専門医の管理下で実施すべきとし、具体的方法については今後検討することにした。白斑事故の拡大は、製造販売業者による副作用情報の収集体制の不備及び情報入手後の国への報告等の対応の遅れが要因と考えられたことから、企業から国への副作用報告制度の強化が必要であり、副作用報告の対象範囲を広げるべきと提言した。製造販売後調査の実施方法についても示し、製品の添付文書の表現内容も改訂することとした。
結論
当該化粧品の使用によって患者は比較的早期に白斑を生じており、表皮内メラノサイトの消失が認められた。カネボウ化粧品の追試験で、褐色モルモットの表皮メラノサイトはロドデノール塗布により減少し、患者の症状と類似の結果が得られた。ロドデノールはチロシナーゼで代謝されより強い細胞毒性を示すことから、この代謝がメラノサイトの細胞死に強く関わることが示唆された。一方、白斑を起こすフェノール誘導体のメラノサイト消失の機序として、メラノサイトへの直接効果に加えて免疫系を介する二相性の作用が提唱されており、今後白斑発症への免疫系の関与の検討が必要である。
再発防止の観点からは、(1)医薬部外品においても臨床試験として長期安全性試験を皮膚科専門医の管理下で実施すること、(2)副作用報告制度の強化が必要であり、製品販売後も安全管理情報の収集を広く行うこと、(3)白斑の可能性を考慮し製品の添付文書の表現内容を改訂すること、を提言した。今後、前臨床試験及び臨床試験のあり方、実施手法についても検討する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201328070Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,735,000円
(2)補助金確定額
6,735,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,031,131円
人件費・謝金 219,200円
旅費 340,632円
その他 145,374円
間接経費 0円
合計 6,736,337円

備考

備考
預金利息52円、自己資金1,285円のため

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-