違法ドラッグ等の薬物依存のトレンドを踏まえた病態の解明と診断・治療法の開発

文献情報

文献番号
201328065A
報告書区分
総括
研究課題名
違法ドラッグ等の薬物依存のトレンドを踏まえた病態の解明と診断・治療法の開発
課題番号
H25-医療-一般-020
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 勉(星薬科大学 )
研究分担者(所属機関)
  • 池田 和隆(公益財団法人東京都医学総合研究所・精神行動医学研究分野 )
  • 山田 清文(名古屋大学・医学部付属病院)
  • 新田 淳美(富山大学大学院医学薬学研究部(薬学)・薬物治療学研究室)
  • 森 友久(星薬科大学・薬品毒性学教室)
  • 橋本 謙二(千葉大学社会精神保健教育研究センター )
  • 曽良 一郎(神戸大学・精神医学分野)
  • 成瀬 暢也(埼玉県立精神医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、薬物乱用の多様化に伴い、様々な違法ドラッグや処方向精神薬といったゲートウェイドラッグの使用から、より強い作用の薬物を求めることになり、それが覚せい剤などの乱用に関わっていることが指摘されている。これまでに、覚せい剤依存の作用機序に関する研究が数多く行なわれてきているが、まだまだ不明な点が多く残されている。さらに、ゲートウェイドラッグの作用機序に関する研究に至っては、殆ど行なわれていないのが現状である。一方、これらの薬物依存者の診断・治療も大きな進歩はみられていない。これらの背景から、本研究ではゲートウェイドラッグのリード化合物(MDMAやカンナビノイド等)や覚せい剤依存の病態解明、さらにはこれらの薬物依存のトレンドを踏まえた依存症の薬物療法ならびに有効で現実的な診断および認知行動療法プログラムについて検討を行う。
 
研究方法
本研究では、基礎および臨床の2つのグループで研究班を編成し、相互に連携して現在の薬物依存のトレンドに関する病態の解明および診断・治療法の開発を目指す。これまで班員が展開してきた覚せい剤依存に関する神経精神薬理学的研究ならびに覚せい剤による転写因子、遺伝子発現およびエピジェネティック変化などの研究を基に本研究を大きく発展させる。また、近年乱用が問題となっているメチルフェニデート、MDMAおよびカンナビノイドにより誘発される行動ならびに神経精神薬理学的機序の相違について検討し、特異的に変化する標的分子を遺伝学的に解析することにより、覚せい剤ならびに違法ドラッグに対する遺伝的脆弱性に関する分子ターゲットおよび、その機序を明らかにし、診断および治療法開発のための標的分子の創薬応用を検討する。また、依存症専門医療機関において、薬物依存のトレンドを踏まえた上で違法ドラッグの依存症および処方薬(睡眠薬・抗不安薬)による依存症の診断を適切に行い、有効で現実的な認知行動療法プログラムを開発し、その効果判定を行い、これまでに独自に開発した再使用リスク評価尺度などを用いて基礎研究の知見を臨床応用し、診断法の改良にもつなげていく。
結果と考察
メタンフェタミンとメチルフェニデートの感覚効果は類似しており、MDMAの感覚効果はメタンフェタミンの感覚効果と明らかに異なる事が確認された。また、ドパミントランスポーター遺伝子欠損マウスにおいて多動が引き起され、メチルフェニデートが多動を改善させた。この効果は、ドパミントランスポーターを介さないことが示唆され、これらの機序が依存形成に関与している可能性が考えられた。このようにこれまで明らかにされてこなかったドパミン神経を介さない各神経系依存的な独特な依存形成の作用機序を見出しつつある。現在は、カチノン系違法ドラッグによる行動薬理学的解析および神経毒性を検討しており、内因性カンナビノイド神経の活性化がメタンフェタミン誘発報酬効果を抑制するといった逆説的な知見も得られつつある。

メタンフェタミンによる行動異常および神経障害をTrkB受容体作動薬が抑制することを見出した。また、メタンフェタミンを投与したマウスの側坐核において、ERK1/2のリン酸化レベルがD1受容体を発現する中型有棘細胞で特異的に増加することも確認した。さらに、メタンフェタミンにより薬物依存を抑制しうるTMEMおよびShati/Nat8lが側坐核において誘導されることも見出され、これらの受容体およびタンパク質が薬物依存治療の新規な分子ターゲットになりうると考えられた。

これらの分子を速やかに臨床にフィードバックするため、薬物乱用・依存患者を診療する医療施設においてゲノムサンプルを収集し、病態関連候補となる標的分子や関連分子の遺伝子多型をPCR法にて解析している。さらに、違法ドラッグと向精神薬(鎮静薬)の使用障害の再発防止に特化したワークブックや情報提供の資料を作成中であり、認知行動療法的アプローチの各種治療介入ツールと手法を活用し、標準的な治療パッケージの開発にも着手した。
結論
このように基礎および臨床研究において、ほぼ予定通り研究目標を達成している。

公開日・更新日

公開日
2015-06-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201328065Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
13,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,728,468円
人件費・謝金 163,500円
旅費 69,450円
その他 38,665円
間接経費 3,000,000円
合計 13,000,083円

備考

備考
利息収入のための差額

公開日・更新日

公開日
2014-05-28
更新日
-