医薬品品質保証システムの進歩に対応した日本薬局方の改正のための研究

文献情報

文献番号
201328053A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品品質保証システムの進歩に対応した日本薬局方の改正のための研究
課題番号
H25-医薬-指定-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
奥田 晴宏(国立医薬品食品衛生研究所 )
研究分担者(所属機関)
  • 川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 丸山 卓郎(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 阿曽 幸男(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 四方田 千佳子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 栗原 正明(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 寺田 勝英(東邦大学薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本薬局方は、我が国の医薬品の品質を適正に確保するために必要な規格・基準及び標準的試験法等を示す公的な規範書であり、公的・公共・公開の医薬品品質規範書と位置づけられている。そのため、局方に採用される試験方法や医薬品各条の規格及び試験方法には普遍性が要求されている。
一方、医薬品の品質保証システムは、最近のICHでの品質ガイドライン等で示されるように大きく変化しつつあり、最新の科学の採用を推奨するとともに、リスクベースな方法へと変わりつつある。その結果、局方試験を最終製品に適用し、規格に適合しているかを確認することによるものから、製造工程を管理することによる品質の担保へと品質保証の在り方はシフトしてきている。分析法も長足の進歩を遂げ、リアルタイムリリースに適用可能な新しい試験法も開発されている。さらに、医薬品のサプライチェーンは一層国際化し、医薬品の円滑かつ安全な流通のためには、局方の国際調和が求められているところである。
このような状況に対応すべく、第17改正日本薬局方作成の基本方針では、 (1)最新の学問・技術の積極的導入による通則、製剤総則、一般試験法等の改正; (2)国際調和の推進と日本薬局方の国際化の推進が最重要課題として謳われている。本研究班は基本方針のもと、ICHやWHO等における国際的な取組みを踏まえつつ、薬局方の改正に向けた必要な検討を行うことを目的とする。
研究方法
研究班は局方改正原案の作成の中核を担っている各委員会の専門家から構成され、①化学薬品各条ならびに試験法の検討、②生物薬品各条ならびに試験法の検討、③生薬各条および試験法の検討、④医薬品添加剤に関する検討、⑤理化学試験法の検討、⑥製剤総則および製剤試験法の検討、⑦医薬品名称原則の改正、の各分野の課題について、適宜横断的な協力を行いながら解決を図る。
結果と考察
当初研究計画に基づき研究を実施し、下記の研究成果を挙げた。
①化学薬品:アセトアミノフェン等のモデル製剤及び市販製剤について、近赤外及びラマン分光法により測定を行い、これらの分析技術を確認試験などの品質試験へ導入した際における局方の各条への影響について考察した。
②生物薬品:各条に収載されている下垂体性性腺刺激ホルモンでは,有効成分黄体形成ホルモンの含量に関する試験が,シロネズミを用いた純度試験として設定されている。理化学的定量試験への変更を目的として,キャピラリー電気泳動法を検討し,混入尿由来タンパク質に起因する課題を見出した。
③生薬:局方生薬であるサンソウニンのインドナツメに対する純度試験法の設定を目的に,インドナツメ特異的成分の探索を行い,frangufoline 及び oleanolic acid を単離,同定した。
④医薬品添加物:アルファ化デンプンの規格試験法の国際調和において必要とされるアルファ化度の違いを確認する方法として、アルファ化度の低い試料に残存するデンプン粒子を偏光顕微鏡による複屈折により検出する試験法を提案した。また、国際調和により取り込まれた乳糖水和物の澄明性試験において、沸騰水に溶解する方法と室温で撹拌する方法を欧州医薬品庁から提供された試料を用いて比較し、両方法に差がないことを確認した。
⑤理化学試験法:ICP/MSによる分析の検討により,毒性の特に強いクラス1の金属の一斉分析が可能であったため,その感度保証のために,添加回収試験から測定までの分析法の定量限界を明らかとした。規格試験として原子吸光光度法による分析の可能性を検討した。
⑥製剤総則・製剤試験法:製剤総則に規定されている剤形に対し、適切な品質評価法が確立されていない項目に対し国際調和を踏まえながら試験法の整備を進め、皮膚などに適用する製剤のうち貼付剤についてラマン分光法を用いて経皮吸収製剤中の吸収促進剤の促進メカニズムの考察を行った。
⑦医薬品の名称等:日本薬局方では不純物を対象としてこなかったが、国際化に対応するため、不純物の化学構造・化学名等の記載方法を検討した。日本薬局方名称データベースの更新、拡充を行った。
研究課題①,②,③,⑤および⑥の取り組みを通じて、最新のテクノロジーを導入した局方試験法の設定に資することが期待される。さらに、研究課題④および⑦に取り組み、日局の国際化に貢献する成果を挙げることができた。
結論
本研究班は、局方作成に中核的に関与している研究者から構成されており、国際的整合性および最新の科学技術の導入の観点から、研究を実施し、所定の成果を挙げた。本研究成果の多くは日本薬局方の各条、一般試験方法や通則の改正に直接に反映される得るものと考える。

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
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収支報告書

文献番号
201328053Z