医薬品のライフサイクルを通じた品質確保と改善に関する研究

文献情報

文献番号
201328033A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品のライフサイクルを通じた品質確保と改善に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-021
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
奥田 晴宏(国立医薬品食品衛生研究所 )
研究分担者(所属機関)
  • 香取 典子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,690,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品規制の国際調和を目指すICHは、医薬品品質保証に品質システムの概念を導入し、最新の科学と品質リスク管理(QRM)に基づく、開発から市販後まで一貫した品質管理システムの採用と、規制の柔軟な運用を可能とする政策を打ち出した。その主要な柱がクオリティーバイデザイン(QbD)と呼ばれる体系的な開発手法である。QbDの概念は製造プロセスの構築のみならず、試験法の開発や安定性評価にも拡張されつつあり、従来の画一的な規制は変更が求められようとしている。一方で、新しい科学の進展に伴い、遺伝毒性不純物(GTI)や金属毒性に関するガイドライン等が新たに作成中であり、製造方法や品質はより厳密な管理が要求されようとしている。
 本研究は、上記の課題に対応するため、原薬および製剤を対象とし、ライフサイクルを通した医薬品の品質確保のために実施すべき課題を抽出し、我が国の実情に適した解決策を提案することを目的とした。
 本年度は、初年度に構築した研究チーム(原薬および製剤)を活用し、下記の研究を実施した。なお対象とする原薬は低分子化学医薬品を想定した。
研究方法
「原薬のライフサイクルにわたる品質保証に関する研究」に関しては、PMDAの審査・査察担当者並びに産業界からは日本製薬工業会、日本医薬品原薬工業協会等に属する企業の研究者からなる研究チームを、「製剤のライフサイクルにわたる品質保証に関する研究」に関しては、PMDAの審査・査察担当者および地方庁の薬事担当者並びに産業界からは日本製薬工業会等からなる研究チームを組織し、ICHガイドラインや各地域の規制状況などを考慮しつつ緊密に議論を実施した。
結果と考察
原薬分担研究(原薬のライフサイクルにわたる品質保証に関する研究):
①高リスク不純物の管理
昨年度作成した治験中のGTIの管理に関するモック案(治験届)を国立医薬品食品衛生研究所ホームページ上で公開し、広く意見をもとめ、その意見を踏まえて、モックを修正した。その際には最新のICHでのGTIに関するガイドラインの検討結果に留意した。さらに製造方法を変更した場合のGTIの評価と管理に関する事例を追加した。本年は、金属の管理に関しても検討を実施した。ICH Q3DガイドラインStep 2b文書の内容に従って原薬に焦点を当て、金属不純物のリスクアセスメントの事例について検討を行った。GTIと同様、サクラミル原薬の開発シナリオを利用し、ICHQ3Dを満足する管理戦略のモック案(承認申請添付資料)を作成した。
②スケール非依存パラメータを用いた製造プロセス
昨年度研究を基礎に、Pv値と晶析温度でデザインスペースを設定する開発研究を実施したケースを想定し、製造販売承認申請を行い、製造する際に必要とされる文書のモック(承認申請書、承認申請書添付資料、製品標準書)を作成した。

製剤分担研究(製剤のライフサイクルにわたる品質保証に関する研究):
本年度は、昨年度研究成果を踏まえ、製剤の開発から市販後に至る過程での管理戦略のライフサイクル等について議論を重ね、実施すべき重要ポイント(下記)について検討した。
1)製剤に関するデザインスペースの承認書への記載および維持・管理
2)分析法に関するQbDの導入
3)Real time release testing (RTRT)に関連して最終製品試験を免除できる要件、代替される分析手法の評価に関する研究
4)最終試験を実施しない場合の工程評価(バリデーション)の運用に関する研究
これらの検討課題を中心に、日本における新たな品質概念に基づいた申請が滞る原因となっている申請時の要件や様式を明確にするため、①規制側と議論しながら申請書添付資料モック(製剤開発研究レポートモック)の作成に着手した。更に、②申請における分析法のクオリティに関しても、開発から市販後の長いライフサイクルにおいて、そのクオリティを一定レベルに保つために新たにanalytical-QbD(A-QbD)のコンセプトの適用を検討し、より進んだ品質管理を分析法にも適用できるよう検討した。
結論
原薬および製剤研究共に、最新のICHガイドライン(Q8-Q11, M7, Q3D)に求められている医薬品開発・品質保証の概念を日本の実情に即して実現するための研究を行った。原薬に関する研究では、その成果を具体的に規制当局に提出する資料のモックとしてほぼまとめることができた。製剤に関する研究でも、開発レポートのモックを相当程度作成した。これらのモックを通じて、最新の開発のあり方を可視化することにより、規制当局と産業界の共通の理解を促進することを期待している。とくにGTIに関しては治験届に添付する品質情報は我が国では経験がなく、意義が大きいものと考える。

公開日・更新日

公開日
2015-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201328033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,690,000円
(2)補助金確定額
3,690,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,689,602円
人件費・謝金 672,000円
旅費 625,260円
その他 704,441円
間接経費 0円
合計 3,691,303円

備考

備考
預金利息

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-