ヒトノロウイルス培養細胞の探索と食品からのノロウイルス検出に関する研究

文献情報

文献番号
201327050A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトノロウイルス培養細胞の探索と食品からのノロウイルス検出に関する研究
課題番号
H24-食品-若手-017
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
上間 匡(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ノロウイルス(NV)は、最も重要な食中毒原因物質の一つであり,平成10年以降ウイルスによる食中毒事件数は増加傾向を示し,その対策の重要性は非常に大きくなっている。
 しかし、NVには培養細胞や実験動物を利用した感染・増殖系が無いために、実際の感染性NVの検出や不活化、制御等に関する詳細は不明であり、感染・増殖系の確立が世界的に望まれている。
 本研究は,NVのカプシド蛋白を持つ組換えFCVを作成し、NV感受性細胞の網羅的スクリーニングを行い、NVの感染・培養系の確立を目指すものである。組換えFCVは環境中での動態や感染時の細胞侵入などのウイルス性状が感染性NVに近似することが予想され、従来の代替ウイルスと比較してよりNVの実態に近い環境中動態や、ウイルス不活化方法について検証することが可能になり、NV食中毒リスク低減や、食品におけるウイルス規格基準の策定への貢献が期待できる。
研究方法
1)対象ウイルス
ネコカリシウイルスF9株と,国内分離株のF4株を選定し,RFK細胞培養上清より抽出したRNAを用いた。ヒトノロウイルスとして,ヒトノロウイルスGII/4遺伝子型が検出された糞便検体より抽出したRNAを用いた。
2)組換えFCVゲノムプラスミド
FCVおよびNVゲノムプラスミドのウイルスゲノム上流へEF-1aプロモータを導入した。
3)組換え NV再構築条件の検討
CRFK細胞へFCV組換えゲノムプラスミドをトランスフェクションし,組換えFCVの再構築を検討
4)ウイルス因子導入法の検討
ゲノムプラスミドを細胞へ導入する際に,ウイルスのゲノムおよびウイルス粒子複製に必要と思われるウイルス因子を,細胞へ導入する方法としてタンパク質トランスフェクション法を用いた。
5)非感受性細胞を用いたウイルス増殖法の検討
4)のタンパクトランスフェクション法をを用いて,非感受性細胞にFCVをタンパクとしてトランスフェクションし,RNAの増幅および感染価の上昇を検討した。
結果と考察
1)組換えウイルスゲノムプラスミドの作成
プロモーターにEF-1aを導入した組換えウイルスのゲノムプラスミドを作成した。ウイルス再構築に使用可能と思われるゲノムプラスミドはpEF1a/NVのみが作出に成功した。pEF1aNV-FCVはORF1領域に点変異が必発し,そのままではフレームシフトが起きると考えられた。またフレームシフトのないプラスミドは大腸菌を用いたクローニング法では作成出来なかった。pEF1a/FCVについては,PCRでゲノム全長を増幅できるものの,完全長のゲノムプラスミドは作成出来なかった。
  FCVゲノムプラスミドに関しては,フルゲノムプラスミド作成途中の段階でORF1-ORF2ジャンクション領域を含む約3.7kbのプラスミドを作製し,これを食品等からのウイルス検査法でのリアル・タイムPCRの標準プラスミドとして使用できることを確認した。この標準プラスミドを利用して,感染性ウイルス粒子推定法の開発を行った。
2)組換えNVの再構築
残念ながら現在のところ組換えウイルスの再構築は確認できておらす,引き続き再構築条件の検討を行なっている状況である。ウイルス再構築のためには,ゲノムプラスミドのみならず,ウイルス因子の細胞への導入について検討する必要があると考えられた。
3)タンパク質トランスフェクション法の検討
ウイルス因子の導入法として,複数のタンパク質トランスフェクション試薬について検討を行った結果,遺伝子トランスフェクションでも効率が良いとされる293T細胞やHeLa細胞において,タンパク質トランスフェクションも効率が良いことが示唆された。
結論
・FCVおよびNV GII4のウイルスゲノムのクローニングを行ったが,現時点でFCVおよび NVのウイルスゲノムのクローニングは非常に困難であることが明らかになった。
・組換えウイルスのゲノムプラスミドの構築を行った。
・FCV ORF1(ポリメラーゼ)-ORF2(カプシド) 領域を含むプラスミドを作成し,感染性推定遺伝子検査法の開発等を行った。
・pEF1a/NV についてウイルスの再構築を試みたが,再構築には至らなかった。
・細胞へのウイルス因子導入法として,タンパク質トランスフェクション法を検討した。
・タンパク質トランスフェクション法により,FCVを非感受性細胞へ導入し,ゲノムRNAの増加,感染力価の上昇を確認した。
・タンパク質トランスフェクション法が,感受性細胞のないウイルスの増殖方法として利用できる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
-

文献情報

文献番号
201327050B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒトノロウイルス培養細胞の探索と食品からのノロウイルス検出に関する研究
課題番号
H24-食品-若手-017
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
上間 匡(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ノロウイルス(NV)は、最も重要な食中毒原因物質の一つであり、ウイルスによる食中毒のほとんどはノロウイルスを原因とするものであり,その対策の重要性は非常に大きくなっている。
 しかし、NVには培養細胞や実験動物を利用した感染・増殖系が無いために、実際の感染性NVの検出や不活化、制御等に関する詳細は不明であり、NV制御に向けた、感染・増殖系の確立が世界的に望まれている。
 本研究は、NVのカプシド蛋白を持つ組換えFCVを作成し、NV感受性細胞の網羅的スクリーニングを行い、NVの感染・培養系の確立を目指すものである。NV様組換えFCVを産生させ,それを用いてNV培養細胞のスクリーニングを行うことを目指している。組換えFCVはNV由来カプシドを持つために,従来の代替ウイルスと比較してよりNVの実態に近い環境中動態や、ウイルス不活化方法について検証することが可能になり、NV食中毒リスク低減や、食品におけるウイルス規格基準の策定への貢献が期待できる。
研究方法
1)対象ウイルス
ネコカリシウイルスF9株と,国内分離株のF4株を,ヒトノロウイルスとして,GII/4遺伝子型のヒトノロウイルスを選定した。
2)組換えゲノムプラスミドの作成
pEF1a/NV, pEF1a/FCV,pEF1aFCV-NVの作成を試みた。
3)組換え NV再構築条件の検討
DNAトランスフェクションによる組換えNVの再構築を試みた。
4)ウイルス因子導入法の検討
ウイルス因子を細胞へ導入する方法としてタンパク質トランスフェクション法を検討した。
5)非感受性細胞を用いたウイルス増殖法の検討
タンパクトランスフェクション法を用いて,非感受性細胞にFCVをタンパクとしてトランスフェクションし,RNAの増幅および感染価の上昇を検討した。
結果と考察
1)組換えウイルスゲノムプラスミドの作成
ウイルス再構築に使用可能と思われるゲノムプラスミドはpEF1a/NVのみが作出に成功した。pEF1aNV-FCVはORF1領域に点変異が必発し,そのままではフレームシフトが起きると考えられ,フレームシフトのないプラスミドは作成出来なかった。pEF1a/FCVについては,PCRでゲノム全長を増幅できるものの,完全長のゲノムプラスミドは作成出来なかった。
  FCVに関しては,フルゲノムプラスミド作成途中の段階でORF1-ORF2ジャンクション領域を含むプラスミドを作製し,感染性ウイルス粒子推定法の開発を行った。
2)組換えNVの再構築
残念ながら現在のところ組換えウイルスの再構築は確認できておらす,引き続き再構築条件の検討を行なっている状況である。ゲノムプラスミドのみならず,ウイルス因子の細胞への導入について検討する必要があると考えられた。
3)市販PCR酵素の比較
FCV,NVゲノム全長(7.7kb)のRT-PCRに用いる酵素の比較を行い,TAKARA社のEX TaqおよびLA TaqよりもTOYOBO社のKODは特異性,増幅効率ともに優れていることが示された。
4)タンパク質トランスフェクション法の検討
ウイルス因子の導入法として,タンパク質トランスフェクションの検討を行った結果,293T細胞やHeLa細胞において,タンパク質トランスフェクションも効率が高く,FCVを増殖させる可能性が示唆された。
結論
・FCV ORF1(ポリメラーゼ)-ORF2(カプシド) 領域を含むプラスミドを作成し,感染性推定遺伝子検査法の開発等を行った。
・FCVおよびNV GII4についてRT-PCRによるウイルスゲノム全長の増幅条件を見出した。
・TOYOBO社KODポリメラーゼを用いることで高感度にウイルスゲノムを検出できる可能性を示した。
・従来のEtBrに比較して,GelRedによる染色により, PCR後の微弱バンドの確認に優れていることを示した。
・作成したpEF1a/NV についてウイルスの再構築には至らなかった。
・細胞へのウイルス因子導入法として,タンパク質トランスフェクション法を検討した。
・タンパク質トランスフェクション法により,FCVを非感受性細胞へ導入し,ゲノムRNAの増加,感染力価の上昇を確認した。
・タンパク質トランスフェクション法が,感受性細胞のないウイルスの増殖方法としての利用や,高感受性細胞の探索に応用出来る可能性が示唆された。
・医薬品デリバリーシステムに用いられる膜透過ペプチドを用いた修飾による,ウイルスの細胞導入法について検討開始した。

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201327050C

成果

専門的・学術的観点からの成果
FCV ORF1(ポリメラーゼ)-ORF2(カプシド) 領域を含む約3.7kbのプラスミドを食品等からのウイルス遺伝子検出リアル・タイムPCR法の標準プラスミドとして作成し,通知法と比較し,より感染性ウイルスの定量値を反映する感染性推定遺伝子検査法の開発等を行った
臨床的観点からの成果
特にノロウイルスGII4遺伝子型について,流行株の遺伝子型の詳細な解析を可能にする,臨床検体等からウイルスゲノム全長を増幅するためのプライマー,PCR酵素,PCR条件等を決定した
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
培養系が存在しなくても感染性ウイルスの評価系として利用可能とすることを最終目的に,将来的には感染性推定遺伝子検査法を用いて,感染性ウイルスの定量可能な手法として通知法と同様の標準試験法として開発していく。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
上間 匡ほか ノロウイルスのリスク評価のための感染性推定遺伝子検査法の開発, 第106回日本食品衛生学会学術講演会 ほか
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-06-19
更新日
2016-04-27

収支報告書

文献番号
201327050Z