フグ等の安全性確保に関する総括的研究

文献情報

文献番号
201327037A
報告書区分
総括
研究課題名
フグ等の安全性確保に関する総括的研究
課題番号
H25-食品-一般-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
長島 裕二(東京海洋大学大学院 海洋科学技術研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 荒川 修(長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科)
  • 佐藤 繁(北里大学海洋生命科学部)
  • 大城 直雅(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 松浦 啓一(国立科学博物館)
  • 石崎 松一郎(東京海洋大学大学院 海洋科学技術研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
フグ食中毒の発生件数と患者数は食中毒全体の2%以下だが、死者数は全体の1/3を占め、致死率が高い極めて危険な食中毒である。フグ食中毒防止のため、わが国では厚生労働省通知で食用可能なフグの種類、部位、漁獲地域を定め、都道府県条例等でフグ取扱の場所と人を制限してフグの安全性確保を担保している。しかしながら、これまでの報告を上回る毒力が散見され、麻痺性貝毒やパリトキシン様毒によるフグ食中毒や巻貝によるフグ毒中毒も発生し、フグ食中毒およびフグ毒中毒は複雑化しており、フグ等の安全性確保における新たな問題点となっている。その上、南方産フグの出現や自然交雑フグが各地で確認されるようになり、正確なフグの判別がますます困難になっている。そこで本研究では、フグ等の安全性確保のため、日本各地で漁獲される食用フグ種を中心に毒性と毒成分を見直すとともに、形態的特徴によるフグ類の分類学的指針を提示し、さらに、遺伝子により交雑フグ類の両親種を同定する種判別法の開発を目的とする。
研究方法
本研究では、フグ等の安全性確保に関する総括的研究として、①フグの毒性に関する調査研究と②フグの分類に関する研究を行う。①フグの毒性に関する調査研究では、これまで公表してきた各種フグ類の毒性データを整理し、「日本産フグの毒力表」の毒性データと比較した。フグの毒性実態調査は、三重県、三陸および沖縄県周辺で漁獲された3科16種213検体のフグについて、個体別、組織別に毒性を測定した。②フグの分類に関する研究では、サバフグ属の分類とトラフグ属交雑種の形態を観察した。これとは別の交雑フグ種10検体を用いて、ミトコンドリアDNA塩基配列に基づく雌親種の同定を行い、父系魚種の同定に必要な遺伝子領域を検討した。
結果と考察
①フグの毒性に関する調査研究において、既得の各種フグ類の毒性データを、谷の「日本産フグの毒力表」の毒性データと比較した結果、3種のフグ(トラフグ、マフグ、コモンフグ)で、一部の部位の最高毒性が「日本産フグの毒力表」を上回る毒性データ例があることがわかり、コモンフグでは“強毒”(100~1000 MU/g)の皮から最高2397 MU/gの毒性が検出された例がみられた。フグの毒性実態調査として、三重県、三陸および沖縄県周辺で漁獲された3属16種213検体の個体別、組織別毒性を測定した結果、各地域における各種フグ類の毒性は概ねこれまでの報告と一致していたが、ショウサイフグ精巣で11 MU/gの毒性が1例検出された。各地におけるフグ食中毒の特徴を明らかにするため、平成22~23年度厚生労働科学研究費補助金 食品の安全確保推進研究事業「食品中の自然毒のリスク管理に関する研究」の成果として得られた、昭和35年~平成22年に発生した食中毒事件例のリストを用いて、各自治体別のフグによる食中毒事件一覧を作成した。
②フグの分類に関する研究において、形態分類では、クロサバフグLagocephalus gloveriはニュージーランドとオーストラリア東岸から知られていたLagocephalus cheesemaniiと同一であったため、クロサバフグの学名を変更すべきことが明らかとなった。トラフグ属の交雑種個体を検討した結果、ショウサイフグ、トラフグおよびマフグが関与していることが判明した。これとは別の交雑フグ種10個体につき、ミトコンドリアDNA塩基配列に基づく雌親種の同定を行った結果、8個体は形態学的鑑別法による推定と一致したが、2個体(ショウサイフグ×コモンフグおよびコモンフグ×ムシフグ各1個体)については形態学的鑑別法による推定と異なり、外部形態から両親種を推定することが困難なもの、あるいは過去の類似事例の知見が適用できないものが存在することが明らかとなった。核DNAマイクロサテライト領域を対象にした父系魚種の同定に関しては、トラフグ属、サバフグ属で個別の領域設定が必要であることがわかり、マーカーとして有効と考えられるV1R、MC1R、MC4R、POMC、ITS1およびITS2領域のクローニングを個々の個体で確認中である。
結論
フグ食の安全性確保を目的として、①フグの毒性に関する調査研究と②フグの分類に関する研究を行った。毒性調査において、一部のフグの一部の組織で、過去の例を例を上回る毒力をもつ例もあったが、概ねこれまでの報告と一致した。フグの分類に関する研究では、報告や事例の蓄積が十分とは言えない交雑種に関しては、外部形態のみで両親種を判別することには注意が必要であることが分かった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201327037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,660,000円
(2)補助金確定額
10,660,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,727,165円
人件費・謝金 888,181円
旅費 1,610,220円
その他 474,525円
間接経費 960,000円
合計 10,660,091円

備考

備考
利息が91円ついたため

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-