基準値の策定に資する食品汚染カビ毒の実態調査と生体影響評価に関する研究

文献情報

文献番号
201327033A
報告書区分
総括
研究課題名
基準値の策定に資する食品汚染カビ毒の実態調査と生体影響評価に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
局 博一(東京大学 大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 小西 良子(麻布大学 生命・環境科学部 )
  • 渋谷 淳(国立大学法人東京農工大学 大学院農学研究院 )
  • 作田 庄平(東京大学 大学院農学生命科学研究科)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
11,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
穀類を中心とした輸入食品目ならびに国内産食品目におけるフザリウム毒素(T-2トキシン、HT-2トキシン、ゼアラレノン)およびフザリウム菌の汚染実態とカビ毒曝露量評価を行う。また、T-2トキシンの毒性影響を実験的に調べる。
研究方法
汚染実態調査:国内流通の国産小麦・大麦、ライ麦粉、ハト麦加工品、小麦粉(国産、輸入)、小豆など15品目中における上記3種類のフザリウム毒素の検出率、LOD、LOQ、下限・上限平均濃度、最大濃度を測定した。フザリウム属菌の分布状況調査:国内に流通する小豆を中心とした食品について,産地別にFusarium属菌の分布状況を検討した。培養菌コロニーの形態観察および分子生物学的指標によって菌種を同定した。また、それらの菌に由来する代謝産物を同定した。曝露評価:過去の汚染実態調査報告をもとに、食品を介するデオキシニバレノールへの暴露量評価を統計学的手法を用いて行った。
毒性評価:妊娠マウスを用いてT-2トキシン(0、1、3、9 ppm)の発達期暴露試験を行った。妊娠6日目から離乳時(生後21日目)まで母動物に対してT-2トキシン混餌投与することにより、経胎盤・経乳的に児動物に暴露し、母動物および児動物の全身影響と臓器の病理組織学的検査を行った。また、ラットに6 ppm、12 ppmのT-2トキシン混餌を投与し、自由行動下で心電図、体温、活動量の変化を観察した。
結果と考察
[汚染実態調査]T-2トキシン及びHT-2トキシンが今年度も小麦、大麦、麦類加工品で検出された。その他、ソバ、小豆、雑穀米からも検出されたが、全体的に昨年度よりも汚染レベルが低い傾向にあった。カビ毒の汚染には年次変化があることを踏まえ、汚染が認められる試料を重点的に調査していく必要性がある。国産小豆はある程度の頻度および濃度でFusarium属菌に汚染されていることが明らかとなり、フザリウムトキシン汚染状況を裏付ける結果が得られた。国産大豆、国産小豆等から分離されたFusarium属菌の代謝産物を、簡便かつ多種に渡り分析する方法を確立した。
[暴露量評価]日本人の食品摂取によるデオキシニバレノール曝露の健康被害リスクは極めて小さいことが推計された。
[毒性評価]
T-2トキシンの母動物と児動物への影響は主に9 ppmで認められたが、母動物では1 ppmより胸腺重量の低値がみられ、児動物では3 ppmより脳の絶対重量の低値と海馬歯状回におけるtype2前駆細胞を標的とするニューロン新生障害を示唆する変化が認められた。
12 ppmおよび6 ppmのT-2トキシンを含む混餌を自由経口摂取したラットにおいて、摂取期間中に心拍数、活動量および体温(最低体温)レベルの変化、心拍数や活動量の日周リズムの変化が生じることが明らかになった。心拍数や活動量の日周リズムは餌をT-2トキシンを含まない通常の餌に戻すことによって回復する傾向が示された。これらの結果から少なくとも6 ppm以上のT-2トキシンの短期間経口摂取によって自由行動下のラットにおいて循環系を始めとする全身機能におそらくは可逆性の影響が生じることが明らかになった。
結論
国内流通食品に含まれるカビ毒のうちフザリウム毒素およびフザリウム属菌などの汚染実態調査を実施した結果、汚染濃度レベルは低いものの全般的に検出頻度が高く、今後も継続調査が必要である。また、T-2トキシンの生体影響に関しては今後もより低濃度域を中心に詳細な研究を行う必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201327033Z