食品中の複数の化学物質による健康影響に関する調査研究

文献情報

文献番号
201327028A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の複数の化学物質による健康影響に関する調査研究
課題番号
H25-食品-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
梅村 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 西川秋佳(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 原田孝則(財団法人残留農薬研究所)
  • 出川雅邦(静岡県立大学)
  • 福原潔(昭和大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.薬物動態に係る酵素群や細胞内微小環境に影響を与える化学物質が低用量の遺伝毒性発がん物質に及ぼす複合影響2.高脂肪食摂取が食品中発がん物質の引き起こす遺伝子突然変異への影響3. 農薬の複合暴露に対するライフステージによる感受性変化に影響を与えている要因4.食品成分中のヘテロサイクリックアミン類に着目し、AhR活性化能とCYP1A酵素誘導能との関連性とベンズイミダゾール類によるAhR活性化作用や、PAH類との複合効果5.フェノール性抗酸化物質の毒性発現機構について明らかにすることを目的とする。
研究方法
1.マウス肝発がん物質エストラゴール(ES)を雌性6週齢のgpt deltaマウスに1、10又は100 mg/kg/dayの濃度で4週間強制経口投与し、ES特異的DNA付加体量と突然変異誘発性との関連を検討し、臭素酸カリウム(KBrO3)を9週間、ニトロフラントイン(NFT)あるいはアリザリン(Alz)を13週間、雄性6週齢のgpt deltaラットにそれぞれ3用量で飲水又は混餌投与した。2.gpt deltaラットに高脂肪食を与え、同時にヘテロサイクリックアミンであるIQあるいはMeIQxを併用投与して、食品中肝発がん物質が引き起こすin vivo変異原性に与える高脂肪食摂取の影響を検討した。3.無処置の若齢期、成熟期、妊娠中期及び後期の雌性ラットの肝臓あるいは血清を用いて、有機リン剤標的酵素、薬物代謝酵素、有機リン酸塩を加水分解酵素 、Corticosterone (CORT)、抗酸化除去因子のGlutathione (GSH)を測定し、免疫毒性評価候補農薬の選定、マウスを用いた吸入アレルギー実験系の確立を行った。4.9種のヘテロサイクリックアミンによるAhR活性化や自身の代謝活性化酵素(CYP1As)誘導能をヒト肝がん由来HepG2細胞、あるいはたヒトAhR-based reporter gene assay用細胞株(HepG2-A10)を用いて検討し、6種のベンズイミダゾール化合物のAhR活性化能を調べた。5.薬物代謝酵素による酸化反応を経由するカテキンの毒性発現機構について化学的解析を行った。
結果と考察
1.ESにはDNA損傷を引き起こすものの、遺伝子突然変異を誘発しない濃度が存在し、KBrO3、NFT及びAlzはいずれもラット腎皮質において顕著な酸化的DNA損傷を引き起こすものの、その投与量によって遺伝子突然変異の有無や生じる変異パターンが異なることが明らかとなった。2.IQあるいはMeIQx を投与した群のgpt MFは基礎食対照群に比較して統計学的に有意に上昇したが高脂肪食摂取の影響は認められなかった。3.妊娠期のラットでは薬物代謝酵素のCYP1A、CYP3A及びPON1が低下し、ストレス関連因子のCORTが上昇することにより、この時期における薬物感受性が増強される可能性が示唆された。選択した全ての剤でアポトーシス誘発能が増大し、抗原特異的IgM抗体産生能が減少し、免疫毒性影響が強く示唆され、マウスを用いた吸入アレルギー実験系において吸入アレルギーが適切に誘導されていることが示唆された。4.6種のHCAsにはヒトAhR活性化能およびCYP1As誘導能があることを明らかにし、ベンズイミダゾール誘導体はヒトおよびマウスのいずれのAhRに対しても活性化能を有すること、AhRリガンドの複合曝露によるAhR活性化能への影響には種差のあることが明らかとなった。5.カテキンは塩基性条件下では酸化の過程で酸素をスーパーオキシドアニオンに還元することができ、酸化剤の存在下ではキノン体に酸化されて生体高分子のモデル化合物と付加体を形成することを化学的な手法によって確認することができた。
結論
1.これらの結果を踏まえ、遺伝子突然変異を誘発しない低用量の食品中遺伝毒性発がん物質とその薬物動態に係る酵素群や細胞内微小環境に影響与える食品中化学物質の複合影響を明らかにするとともに、酸化ストレスを生じる食品中化学物質の複合影響の詳細について検討する。2.本研究は食品中発がん物質と高脂肪食摂取との複合影響に関して基礎的なデータを供与できるものと考える。3.妊娠期における著しい生理学的変化は薬物代謝酵素やストレス因子の活性あるいは分泌量に影響を及ぼすものと考えられ、免疫毒性評価候補農薬の選定を行い、マウスを用いた吸入アレルギー実験系を確立した。4.食品中化学物質のAhR活性化における複合影響の可能性について明らかにした。5.酸化代謝を亢進する因子による複合影響としてキノン酸化体を経由する毒性が発症する可能性が考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201327028Z