文献情報
文献番号
201327020A
報告書区分
総括
研究課題名
と畜・食鳥検査における疾病診断の標準化とカンピロバクター等の制御に関する研究
課題番号
H24-食品-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
- 山本 茂貴(東海大学 海洋学部)
- 森田 幸雄(東京家政大学 家政学部)
- 中馬 猛久(鹿児島大学 共同獣医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
11,790,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、(1)食鳥肉のカンピロバクター等の制御、(2)牛内蔵肉の衛生管理、(3)と畜・食鳥検査における疾病診断の標準化、の3項目より構成され、食肉の微生物リスク管理に関わる基礎・応用的知見の集積を通じて、食肉の衛生を確保するための施策に貢献することを目的としている。
研究方法
1)カンピロバクターの制御に関して、①農場段階では、カンピロバクターの農場汚染実態を調査すると共に、分離株の遺伝子型別をMLST法により実施し、飼養環境や作業員の動線、分離時期等の情報を加味し、鶏舎間伝播や持続汚染に関する知見を収集した。②食鳥処理段階では、汚染・非汚染鶏群の識別を行うにあたってのイムノクロマト法の有効性を評価すると共に、処理順序に伴う交差汚染の検証をPCR-RFLP法により行った。③流通段階では、冷凍処理に伴う本菌の生存挙動をEMA-PCR法により評価した。また、市販流通食肉の汚染実態を調査した。
2)牛内臓肉の衛生管理に関する研究としては、全国の食肉衛生検査所の協力を得て、腸管(白物)の細菌汚染状況を洗浄前後で検討し、洗浄方法の違いと共に施設間で比較した。
2)牛内臓肉の衛生管理に関する研究としては、全国の食肉衛生検査所の協力を得て、腸管(白物)の細菌汚染状況を洗浄前後で検討し、洗浄方法の違いと共に施設間で比較した。
結果と考察
カンピロバクターの農場汚染実態に係る調査結果として、計6農場・59鶏舎のうち、83.1%(49鶏舎)よりカンピロバクターが分離された。MLST法を用いた分離株の遺伝子型別を通じ、農場毎に蔓延を顕す遺伝子型の相違を確認した。鶏舎毎に遺伝子型分布を比較したところ、作業員動線下流にあたる鶏舎では上流域の鶏舎に比べ、鶏舎あたりの検出率が高い傾向が見られた。また、複数の遺伝子型が見られた農場の一部では作業員の動線下流に位置する鶏舎で検出された遺伝子型構成が上流鶏舎に比べて単純化する傾向が認められた。これらの成績より、カンピロバクターの鶏舎間水平伝播は、動線に伴った動態を示すと共に、遺伝子型により異なる伝播力を有することが示唆された。本菌による持続的な農場汚染は必ずしも同一菌株の常在化に因るものではないことが明らかとなった。食鳥処理段階では、汚染鶏群を処理した直後に非汚染鶏群を処理した場合に交差汚染が生じることが菌株の遺伝子型別により実証され、区分処理の有効性が確認された。流通段階では、冷凍処理の初期段階における本菌の生存性挙動が培養性を上回る成績を得たため、鶏肉汚染低減を目的とした冷凍処理を行うにあたっては一定以上の処理時間が必要と考えられた。市販食肉の汚染調査として、C. jejuni は42%(11/26検体)の市販鶏モモ肉及び40%(12/30検体)の鶏ムネ肉、6%(2/31検体)の鶏ササミから分離されたが、牛スライス肉(20検体)および豚スライス肉(22検体)からは分離されず、食肉の中では、鶏肉がカンピロバクター食中毒の主たる感染源となりうることが再確認された。
牛内臓肉の衛生管理に関する研究では、十分量の洗浄水の確保と頻繁な交換を実施する施設の洗浄後検体は、他施設の検体に比べ、低い汚染菌数を示した。
牛内臓肉の衛生管理に関する研究では、十分量の洗浄水の確保と頻繁な交換を実施する施設の洗浄後検体は、他施設の検体に比べ、低い汚染菌数を示した。
結論
本研究における調査対象農場では高いカンピロバクター汚染率を示した。分離菌株の遺伝子型別を通じて、鶏舎間伝播の制御が蔓延を制御するにあたって重要であるとの知見を得た。また、農場の持続汚染が必ずしも同一菌株に因らないとの成績は、農場への本菌による侵入が継続的に生じていることを示唆するものであり、侵入経路に関する検討の必要性を提唱するものと言えよう。食鳥処理段階における群単位での汚染識別と区分処理は、交差汚染予防に資する成績を示した。鶏肉の流通にあたっては冷凍処理が菌数低減に有効であることが実証された。牛内臓肉の衛生管理に関しては、今後衛生状態の良い処理施設の方法を参考としつつ、マニュアル化に向けた検討を行う必要があると考える。
公開日・更新日
公開日
2014-06-20
更新日
2015-06-26