遠隔医療の更なる普及・拡大方策の研究

文献情報

文献番号
201325062A
報告書区分
総括
研究課題名
遠隔医療の更なる普及・拡大方策の研究
課題番号
H25-医療-指定-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
酒巻 哲夫(群馬大学 )
研究分担者(所属機関)
  • 本多 正幸(長崎大学)
  • 中島 直樹(九州大学)
  • 辻 正次(兵庫県立大学)
  • 石塚 達夫(岐阜大学)
  • 岡田 宏基(香川大学)
  • 森田 浩之(岐阜大学)
  • 齋藤 勇一郎(群馬大学)
  • 郡 隆之(利根中央病院)
  • 小笠原 文雄(小笠原内科)
  • 太田 隆正(太田病院)
  • 松井 英男(川崎高津診療所)
  • 大熊 由紀子(国際医療福祉大学)
  • 煎本 正博(イリモトメディカル)
  • 土橋 康成(ルイパスツール研究センター)
  • 小笠原 敏浩(岩手県立大船渡病院)
  • 吉田 晃敏(旭川医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
8,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遠隔医療は医療崩壊の緩和の一手段と期待されているが、その伸びは予想に比べて遅いと考えられている。平成23年3月31日発行の医師法20条の解釈に関する通知の再改正など、様々な緩和を進めた結果、規制による伸び悩みが原因であると言えなくなった。また技術的課題の多くが解決され、コストダウンも進み、ICTからの技術開発が今後の有効な推進策ではなくなった。診療報酬化など具体的な推進策について有効な提案も少なかった。バラバラな推進策では速い進展が期待できず、遠隔医療の推進には深い実態把握に基づいた振興プロセス(ロードマップ)の策定と遂行が必要である。しかしロードマップの立案に必要な情報は不足しているので、遠隔医療の詳しい実情調査を行い、立案することを目指す。ロードマップは遠隔医療推進に必要なステップを示すもので、各領域の専門的研究などへの活用を目指すものである。また、ロードマップ遂行を支える社会的推進体制を検討することも狙う。
研究方法
1.ロードマップ枠組みの検討
平成23年度研究で収集したデータを詳細に分析して、ロードマップ項目やその下の詳細事項をより具体的に改良する。下記が項目候補である。
遠隔医療の適用対象(疾病、地域、患者)、実施手法(医学的手段)、効果のエビデンスと実証手段や実証状況、運用体制(関係職種の役割や仕事の流れ)、普及方策と手段、関連制度や財源(診療報酬、他)、関係者・団体と役割や権利・能力

2.調査対象の検討
前年度研究成果を受けて、対象の過不足を調整する。大枠ではテレラジオロジー、テレパソロジー、在宅医療、モニタリング、地域医療ICTのあり方や総合的課題である。

3.実態調査
上述の新しいロードマップ枠組み項目に従い、従来研究成果を起点に、実態を詳しく精査や追加調査する。全対象の調査を同時に実施することは不可能なので、優先度の高い課題から取り組む。調査は個別事例を丹念に追うことが基本であり、必要に応じてレトロスペクティブ研究などを行い、詳細な実態把握を進める。
 手法として、準構造的調査用紙での報告、小規模班会議(関係者を絞り込んだもの)、関連学会学術総会のパネルシンポジウム、調査員による訪問聞き取りを行う。

4.ロードマップ作り
実態調査で浮き彫りになった課題の明記および解決方策をまとめることで、ロードマップとする。ロードマップ遂行のためには個々の研究だけでは進まない事柄もあると考えられる。推進のための社会的枠組みも検討する。
結果と考察
1. ロードマップ枠組みや調査対象を検討した上で実態調査を行った。その結果を下記三分類に分けて示す。
(1) 具体化
・テレラジオロジー、テレパソロジー、心臓植え込みデバイス・重度喘息モニタリングがある。
・課題として、実態把握、質の管理・保証、実施支援体制、施設間手続き等に不足がある。
・上記にも関わらず、診療報酬が出ている。
(2) 地域展開中
・在宅医療でのテレビ電話診療、北海道での眼科や救急トリアージがある。
・課題として、質の管理・保証、診療報酬の制度設計、臨床評価などがある。
(3) 実験的モデル
・慢性心不全、遠隔皮膚科など、臨床試験中のモデルがある。糖尿病などは、モデル作りの検討途上にある。
・課題として、安全性や有効性の検証、地域事情への適合、関係学会との共働関係の構築などがある。
2.テレビ電話診療の診療報酬制度上の位置づけと、有効性を示す臨床研究の進め方を検討した。利用者(医師、患者)が限定的で、必要事例の洗い出しや社会的認知の醸成が必要とわかった。
3.地域調査や産業界調査を行った。7道県庁の医療行政担当部室を訪問調査した。遠隔医療の評価モデル不足や目標が定まらないなど、地域行政の推進方策が固まっていないことがわかった。また産業界も推進のために開発する製品やサービスの展望作りに苦労している実情がわかった。
4.それらを整理して検討すると、下記の検討を進めるべきである。今年度(2年目)の研究につなげる。
(1) 臨床研究の目標設定と推進(期待効果、投入コスト、実現性など)
(2) 診療報酬スキームの検討(再診・往診・在宅の区分や管理料加算、施設間配分等)
(3) 質保証の仕組み検討(診療記録や医療過誤管理)
(4) 地域での実施スキームの検討(施設間の責任や調整など)
(5) 診療情報管理(実施データの収集と分析、PDCAサイクルによる改善)
(6) 支援サービスの検討(モニタリングなどの支援)
結論
従来、技術研究推進が推進策と考えられていたが、それは周辺的課題に過ぎないことがわかった。隠れた重要課題を明らかにしたことで、遠隔医療推進のための有効策の検討が進むと考える。この成果を二年目の研究に活かす。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201325062Z