医療機器保守管理の適正実施にむけた諸課題の調査研究

文献情報

文献番号
201325050A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機器保守管理の適正実施にむけた諸課題の調査研究
課題番号
H24-医療-指定-047
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
石原 美弥(防衛医科大学校 医用工学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 櫛引 俊宏(防衛医科大学校 医用工学講座 )
  • 中島 章夫(杏林大学 保健学部)
  • 加納 隆(埼玉医科大学 保健医療学部)
  • 廣瀬 稔(北里大学 医療衛生学部)
  • 高倉 照彦(亀田総合病院)
  • 中野 壮陛((財)医療機器センター)
  • 須田 健二(杏林大学 保健学部)
  • 中村 淳史(杏林大学 保健学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,423,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 2年計画の2年目であるH25年度は,H24 年度に実施した調査研究を更に発展させ,最終目的である全ての医療機関が実施出来る有効な医療機器の保守点検ガイドラインの策定とその普及のための基礎資料を取得した。医療機器はその市場規模2兆円,30万品目と数が多いため,本研究ではまず対象とする医療機器を絞り込んだ。対策すべき緊喫の医療機器を台数と使用頻度が多く使用される範囲が広い輸液ポンプとして,H24年度のヒヤリハット,有害事象事例検討,企業へのヒアリングなどの多角的調査から更に発展させるために,現場の実態解明と意見・コメント集約を目的として,大規模アンケートを実施した。これには電波管理という観点で注目したい「医用テレメータ」を加えた。緊喫の医療機器として輸液ポンプを特定し絞り込むことで,調査研究成果の具現化,すなわち最終的にガイドラインに盛り込む「日常点検チェック表」の完成に向けた研究を実施した。
研究方法
 H25年度に実施した本研究の方法としては,全医療機関が共通して使用できる保守管理に関するガイドライン策定のための大規模アンケート,及び,輸液ポンプの27 項目の日常点検チェックリストの考案とその試行を中心とした。大規模アンケートの実施に先立ち,職種によって保守点検の研修の習得度に違いがあると仮説を立てた。そこで, 大病院(300床以上)だけを対象にしたアンケートに留まらず,病院年鑑2012年版に収載されている病床数1以上の医療機関を選択し,地域性を考慮して約3,000施設を対象に実施した。回答方式は専用サイト開設によるオンライン回答方式,郵送や電子メールでの回答を採用し,アンケート回収率の向上を図った。さらに,アンケート内容を職種別,さらに病床数やポンプの保有台数でもクロスチェックできるように設定した。アンケートの調査結果から,本研究班で輸液ポンプの保守点検チェックリストを作成し,チェックリスト・インシデント報告様式として使用できるようにした。加えてチェックリストを試行するモデル病院を募り,輸液ポンプの日常点検チェックリストを試行した。
結果と考察
 H25年度に実施した本研究の結果及び考察として,アンケート回収率は33%と向上した。また,病床数200床以下の医療機関からの回答が過半数を占め,臨床工学技士がいない医療機関が全回答の30%以上ある調査結果が得られた。比較的小規模な医療機関からの回答が多く得られ,客観性,再現性の高い結果になっているものと思われる。さらに,保守管理従事者の職種による研修の習得度などの実態解明と,ガイドライン策定とその普及のための重要なデータが蓄積できた。具体的には臨床工学技士は日常点検,定期点検,トラブル発生時の点検まで対応できるが,看護師の場合は日常点検までの対応であることが明らかとなった。これに伴い,看護師に対しては操作や取扱い,設定ミスを防ぐ研修が必要であることが判明し,専門性の違いなどの現状の問題点が集約できた。同時に保守点検にかかる年間費用に関する基礎資料も取得した。
結論
 結論として,輸液ポンプの保守点検に関する大規模アンケートでは臨床工学技士のいない比較的小規模な医療機関までを対象とすることで,職種によって研修の習得度に違いがあるという仮説を検証することができ,専門性の違いを勘案した教育コンテンツの必要性を確認した。加えて,輸液ポンプの保守点検チェックリストを作成し,これをモデル病院で試行することで全医療機関が共通して使用できるかどうか検討した。これについても専門性の違いなどの現状の問題点が集約でき,精査すれば最終的にガイドラインに盛り込めるようになることが明らかとなった。以上から保守点検を実施できる仕組み作りの一部として,継続的な研究の重要性が明確となり,行政課題に対する指定研究により得られる研究成果が示され,今後は教育コンテンツの提言などでガイドライン普及を目指す。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201325050B
報告書区分
総合
研究課題名
医療機器保守管理の適正実施にむけた諸課題の調査研究
課題番号
H24-医療-指定-047
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
石原 美弥(防衛医科大学校 医用工学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 櫛引 俊宏(防衛医科大学校 医用工学講座 )
  • 中島 章夫(杏林大学 保健学部)
  • 加納 隆(埼玉医科大学 保健医療学部)
  • 廣瀬 稔(北里大学 医療衛生学部)
  • 高倉 照彦(亀田総合病院)
  • 中野 壮陛((財)医療機器センター)
  • 須田 健二(杏林大学 保健学部)
  • 中村 淳史(杏林大学 保健学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 平成19年に改正医療法が施行され、医療機器に対する安全対策が制定されるようになり、病院等の管理者は医療機器の保守点検の適切な実施などの措置を講じることが義務づけられている。しかしながら、診療報酬の算定にかかる規則が、全ての医療機関が実施するべき医療機器の保守点検の実施自体に影響を与えている可能性が示唆されている。診療報酬などのインセンティブ付けなどを含めて、全ての医療機関が適切に医療機器の保守点検を実施するための仕組みづくりは重要な行政課題である。これに対して我々は現在までに一貫して、医療機器の適正使用と保守点検のためのガイドライン策定に関して研究を進めてきた。
 H24-25年度に実施した本研究の目的は,最終的には全ての医療機関が実施出来る有効な医療機器の保守点検のガイドライン策定,及び,その普及のための基礎資料の取得である。市場規模2兆円,30万品目と数の多い医療機器において,本研究ではまず対象とする医療機器を台数と使用頻度が多く,使用される範囲が広い輸液ポンプを緊喫の医療機器とした。対象医療機器を絞り込むことにより,最終的にガイドラインに盛り込む「日常点検チェック表」の完成に向けて具体的調査研究を実施した。
研究方法
 本研究では調査方法として,ヒヤリハット,有害事象事例検討,企業へのヒアリング,大規模アンケートを採用した。メーカー・ディーラの自社製品に対する保守点検(日常点検・定期点検)の実施状況の調査を行った結果、保守点検マニュアルやチェックリストの整備が不十分であることがわかった。また、保守点検マニュアルや添付文書のチェック表を用い日常点検の実施状況について、医療機器の操作や保守点検が必要とされる手術室、集中治療室等勤務の看護師、及び臨床工学技士へのアンケート調査を行った結果、臨床工学技士が保守点検を行っている施設でも、そのチェック方法や点検用機材などが不十分であることがわかった。これらの調査結果より、標準的な日常点検チェック表を作成する際の問題点把握とその必要性を認識したため,病院年鑑2012年版に収載されている病床数1以上の医療機関を選択し,地域性を考慮して約3,000施設を対象に大規模アンケートを実施し,医療機関における実態を把握し,意見を集約した。この際に,輸液ポンプに加えて電波管理という観点で注目したい医用テレメータについても調査した。
結果と考察
 本研究の結果及び考察として,特に大規模アンケートの結果からは狙い通り小規模な医療機関からの回答が多く得られ,ガイドライン策定とその普及のための重要な基礎資料を得た。具体的データとしては,病床数200床以下の施設では臨床工学技士がいない施設が未だ多かったこと、輸液ポンプの台数と臨床工学技士数には関連性がないことなどがわかった。本研究では臨床工学技士のいない比較的小規模な医療機関までを対象としたため,職種によって研修の習得度に違いがあるという仮説を検証することができた。具体的には臨床工学技士は日常点検,定期点検,トラブル発生時の点検まで対応できるが,看護師の場合は日常点検までの対応であることが明らかとなり,専門性の違いなどの医療機関における現状の問題点が集約でき,現場の実態が把握できた。これらの調査より標準的な日常点検チェック表を作成する必要性が明確となり,全医療機関が共通して使用できることを念頭に27項目からなる輸液ポンプの保守点検チェックリストを作成し,チェックリスト・インシデント報告様式として使用できるようにした。立候補のあったモデル病院21 施設にて作成した輸液ポンプ日常点検チェック表にて日常点検を実施したところ,点検の実施者は看護師が多いこと、滴下センサを装着していない輸液ポンプの使用が約6 割もあることなどがわかった。
結論
 本調査より、限られた時間や項目でチェック表にある日常点検を遵守すること,その内容が医療機関(特に保守点検実施者)に理解され、適確に実施可能であることの重要性を共有することができ、共通した日常点検チェック表を完成させる上で必須のデータや意見を蓄積することができた。今回明らかとなった職種による研修の習得度が異なる実態から,専門性の違いを勘案した教育コンテンツの提言などの必要性が明らかとなり,最終的にガイドラインに盛り込む「輸液ポンプの日常点検チェック表」の完成に向けた項目の精査とそれを普及させるための手段が明確となった。すなわち,継続的な研究の重要性が明確となり,行政課題に対する指定研究により得られる研究成果が示された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201325050C

収支報告書

文献番号
201325050Z