救急外来に特化した電子カルテシステムと臨床診断意思決定支援システムの開発による医療安全の向上に関する研究

文献情報

文献番号
201325013A
報告書区分
総括
研究課題名
救急外来に特化した電子カルテシステムと臨床診断意思決定支援システムの開発による医療安全の向上に関する研究
課題番号
H24-医療-一般-014
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
中島 勧(東京大学医学部附属病院 救急部・集中治療部)
研究分担者(所属機関)
  • 矢作 直樹(東京大学医学部附属病院 救急部・集中治療部 )
  • 軍神 正隆(東京大学医学部附属病院 救急部・集中治療部 )
  • 松原 全宏(東京大学医学部附属病院 救急部・集中治療部 )
  • 佐藤 元(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
  • 上村 光弘(国立病院機構災害医療センター 呼吸器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,970,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、救急医療現場における医療関係者の負担を軽減しかつ救急医療における診療の質を担保することで医療の安全性を高めるシステムを開発することである。
研究方法
 本研究は、研究者代表者の下に、救急医療の実際、また安全管理に関わる制度に豊かな経験と知識を有する過期の研究分担者と共に実施する。
初年度(平成24年度)は、(1)諸外国で開発が進んでいる医療情報技術(以下HIT)、救急外来に特化した電子カルテシステム(EDIS)、臨床診断意思決定支援システム(CDSS)に関する論文の収集、(2)日本におけるEDIS、CDSSに関する論文の収集、(3)医療安全を目指した電子カルテシステム構築に関する論文の収集、(4)日本の救急医療における電子カルテシステムの実際、(5)救急外来の安全を目指した電子カルテ構築、(6) 救急外来の安全を目指した臨床診断意思決定支援システムの構築を行った。このシステムは主に救急外来におけるカルテ入力の効率化ならびに患者データの蓄積に重きを置いて開発した。具体的に電子カルテの中に、
①救急外来を受診した患者の主訴からの鑑別疾患表
②救急外来において見逃してはならない疾患表
③主訴を選択すると診るべき身体所見が表示
の機能を搭載した。
上記の機能を入れることで見逃しを減少させ安全性の向上に寄与している。さらに、タブレット上での入力によるカルテ入力時間の短縮、身体所見データの蓄積を図っていることが特徴であった。
しかし、前年度作成した電子カルテシステムは、
・インターフェースが見にくい
・項目が多すぎて入力に時間がかかる
・入力する際にタイムラグがある
・慣れるまでに時間がかかる
 といった負の面が多く聞かれた。これらの意見を取り入れ、現在までの論文の再度見直し、ならびに外国における画面も参考にして再開発を行った。
結果と考察
結果
 インターフェースに関しては、
①タイムリーに、正確なデータの収集や分析が出来る
②使用方法が容易であり、ユーザーが使用したいと思えるシステム
③明確、かつ直感的なデータの表示
④容易に目的の情報が見つけることが出来る
⑤臨床意思決定を手助けする際のエビデンスがある
⑥簡単な作業は自動化し、作業負荷を増やさずに仕事の流れを良くする
⑦他の病院との情報交換が容易にする
⑧想定外のシステムダウンがない
⑨救急医療業務の流れに合わせて設計されている
⑩タブレットや携帯ワイヤレスなどで簡単にEHRにアクセス可能で、タッチ・スクリーンや音声作動式ディスプレーなどがある。
⑪患者の状態変化のモニター
⑫情報の機密性確保
が必要であることが判明した。
 これらを取り入れて再開発した電子カルテを日立総合病院ならびにJR東京総合病院に導入し、救急医、後期研修医、初期研修医に使用させた所、
・使いたくなるインターフェースである
・今まで陽性所見(身体所見で異常があるもの)しかカルテに記載しないことが多かったが、陰性所見(診察した結果、身体所見で異常がない)も簡単に入力することが出来る
・教育的に有効
・カルテ作成時間を短縮させる
・見逃しを減少させる可能性がある
・患者のデータベースとなりえ、今後の臨床研究に使うことが出来るといった意見が聞かれた。

考察
 現場のワークフローに合っていない電子カルテシステムは医療現場での効率低下をもたらし、さらに死亡率を上昇させることから電子カルテシステムの開発は非常に慎重に行う必要がある。
 初年度では取るべき身体所見を全て最初から表示させていたことから非常に見にくいといった意見が聞かれた。本年度ではそれらの問題の解決に取り組み解決に至った。
結論
開発した電子カルテシステムは、研修医の教育、カルテ作成の短縮化、日本人の救急データベースになり得るものである。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201325013B
報告書区分
総合
研究課題名
救急外来に特化した電子カルテシステムと臨床診断意思決定支援システムの開発による医療安全の向上に関する研究
課題番号
H24-医療-一般-014
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
中島 勧(東京大学医学部附属病院 救急部・集中治療部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 元(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
  • 矢作 直樹(東京大学医学部附属病院 救急部・集中治療部 )
  • 軍神 正隆(東京大学医学部附属病院 救急部・集中治療部 )
  • 松原 全宏(東京大学医学部附属病院 救急部・集中治療部 )
  • 上村 光弘(国立病院機構災害医療センター 呼吸器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、救急医療現場における医療関係者の負担を軽減しかつ救急医療における診療の質を担保することで医療の安全性を高めるシステムを開発することである。
研究方法
初年度は、(1)諸外国で開発が進んでいる医療情報技術(以下HIT)、救急外来に特化した電子カルテシステム(EDIS)、臨床診断意思決定支援システム(CDSS)に関する論文の収集、(2)日本におけるEDIS、CDSSに関する論文の収集、(3)医療安全を目指した電子カルテシステム構築に関する論文の収集、(4)日本の救急医療における電子カルテシステムの実際、(5)救急外来の安全を目指した電子カルテ構築、(6) 救急外来の安全を目指した臨床診断意思決定支援システムの構築を行う。次年度は、電子カルテシステムの改良を行い、現場への導入を図る。
結果と考察
【結果】
日本における電子カルテの現状
 我々が全国の救急救命センターにアンケートをしたところ、EDISの概念は日本の救急医療では未だ広がっておらず、EDISの中に含まれる救急外来に特化した電子カルテの開発は殆ど行われていなかった。諸外国のEDISをそのまま導入する方法も考えられたが、国により救急医療の体制や方法が異なる。米国のEDISをオーストラリアで導入した所、診療効率が落ちたという報告が有り、我が国の救急医療に準じたEDISの開発が必要である。
 
EDISの開発
 アンケート調査では、CPOEやCDSSには高い満足度を示していたが、カルテ入力システムに不満が多かった。よって初年度は、カルテ入力の効率化ならびに患者データの蓄積に重きを置いて開発した。さらにアンケート調査では、研修医に教育的なシステムが望まれるという結果が得られた。これらは主訴から見逃してはならない疾患表を作成することに繋がった。

CDSSの開発
 救急外来は同時に多数の患者を見なければならず、ともすると血液検査や画像検査を優先させてしまう。しかし身体所見や問診で必要な検査は絞られることが多い。我々は取るべき身体所見や見逃してはならない鑑別疾患表を画面に表示させることで、診療効率の改善、医療費削減を期待し作成した。これらは多数の教科書から、情報を収集し作成した。

電子カルテの導入
 我々は日立総合病院、JR東京総合病院にてEDISの導入を行った。導入した。無線の環境作りやスタッフの教育に時間を要したが、使用した医師にアンケートを取った所では、教育的に有効、見逃しを減少させる可能性がある、今後救急医療における基礎となるといった意見が聞かれた。

【考察】
 救急外来に特化した電子カルテシステムを開発するに当たり、現在各病院に導入されているシステム全てを入れ替えることは非常に大がかりとなり、費用的や情報漏洩を考えると現実的ではない。よって、我々は診療記録を入力しやすいインターフェースならびに見逃しては成らない疾患の表示をさせる電子カルテシステムの開発に重点を置くことにした。
この電子カルテの利点は、救急隊の情報、来院時の患者の情報、重症度や緊急度、主訴、主訴から取るべき身体所見、主訴から見逃してはならない鑑別疾患の表示があることで、救急医療の安全性を高めるだけでなく、主訴による患者の疾患や身体所見のデータ蓄積が行えることである。これにより日本人の主訴と身体所見や疾患を結びつけた疫学調査が可能となることが期待される。よってこれらが日本の救急病院に導入されることにより、この分野の研究情報基盤としてEBM確立に資すものと期待される。
結論
現在の救急医療では、救急医の数が少なくまた業務が多忙なため、安全、教育的でかつ効率的な電子カルテシステムが望まれている。開発した電子カルテシステムにより、これらの向上が期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201325013C

収支報告書

文献番号
201325013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
0円
(2)補助金確定額
0円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-06-05
更新日
-