ジストニアの病態と疫学に関する研究

文献情報

文献番号
201324160A
報告書区分
総括
研究課題名
ジストニアの病態と疫学に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-指定-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
梶 龍兒(徳島大学 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部・臨床神経科学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働省精神・神経疾患研究委託事業「ジストニアの疫学・病態・治療に関する研究」(長谷川一子班長)によりジストニアの疫学調査が施行され、1993年に比して2006年では増加している事が判明した。この先行研究によりジストニア患者の実態調査が進み、種々の病型のジストニアの診断基準が作成された。この成果を踏まえ、H25年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「ジストニアの病態と疫学に関する研究」(研究代表者梶)ではアンケート調査を中心に疫学調査を行い、ジストニアの有病率などを再検討したが、確定には至っていない。本研究ではこれまでの研究成果を踏まえ、引き続きジストニアに関する疫学調査を行うとともに、その病態解明に向けた研究を進めていくことを目標とした。
研究方法
本年度における各項目の到達目標を下記に示す。
1) 肩こりや演奏家の演奏困難など、身近な症状の中にジストニアが隠れていないか、アンケートなどを中心に調査を行う。またジストニアと診断された人のうち、遺伝子異常の有無や年齢別の発症様式などを調査し、疫学調査を通じてジストニアの病態解明を進める。
2) 新たに発見されたものも含め、遺伝子検査を行えるシステムを整備し、遺伝子診断に応じた遺伝子相談や治療法の開発、治療ガイドラインの作成を目指す。
(倫理面への配慮)課題遂行に当たっては、必要に応じて徳島大学、または研究者の所属機関に於いて、倫理委員会による審査を受審し承認を得ている。
結果と考察
結果
1) 疫学調査
慢性の肩こりを主訴として病院を受診した人31例のアンケート調査では、ジストニアの臨床特徴を2項目有する人は11例、3項目を有する人は2例であった。また、音楽大学の生徒・職員に対する1300通のアンケート調査では、「演奏しにくくなった」経験については38例(2.9%)で回答を得られた。ジストニアと診断された101例の調査では、発症年齢における病型の分布は、これまでの報告同様に、若年発症群で全身性ジストニアが多く、中年発症群で痙性斜頚が、高齢発症群で眼瞼痙攣/メイジュ症候群が多い結果であった。また内服治療、BTX治療の有効例はいずれも高齢発症群で少ない傾向にあった。DYT1変異が否定されている280人の一次性ジストニア患者のうち、THAP1変異(DYT6)の頻度は1.4% (4/280) であり、他民族での頻度とほぼ同様であった。
2) 遺伝子検査
DYT10ジストニアである発作性運動起源性ジストニアが疑われた患者2名(親子症例)について、DYT10原因遺伝子PRRT2の遺伝子解析システムを構築し、全エクソンを標的とした変異解析を行った。シークエンスによる変異解析の結果、患者2名からPRRT2のexon 2において新規の遺伝子変異(c.G879G/A [M293I])を検出した。

考察
1) 疫学調査
肩こりや音楽関係者に対するアンケート調査では、肩こりや演奏家の演奏困難など、身近な症状の中にジストニアが隠れている可能性が示唆されたが、アンケート回収率が低く、発症率の同定には至らなかった。ジストニアの発症年齢における病型の分布や、一次性ジストニアにおけるDYT6の頻度などは、これまでの海外報告とほぼ同様であった。
2) 遺伝子検査
DYT10ジストニアが疑われた患者2名におけるPRRT2の遺伝子解析から、同一の新規遺伝子変異(c.G879G/A [M293I])を検出した。PRRT2は主に大脳基底核に発現しており、神経伝達物質放出の制御に関わることが報告されている。今回の変異は、その機能異常を来たす可能性が考えられた。これらのことから、M293I変異は疾患特異的な変異であることが強く示唆された。
結論
ジストニアは症状が多彩であり、診断を含めて病態が不明な点が多く、治療も困難であることが多い。疫学調査や臨床病態の検討、また薬物・ボツリヌス・DBSなどによる治療など臨床面も踏まえて、今後も研究を続けていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201324160B
報告書区分
総合
研究課題名
ジストニアの病態と疫学に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-指定-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
梶 龍兒(徳島大学 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部・臨床神経科学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働省精神・神経疾患研究委託事業「ジストニアの疫学・病態・治療に関する研究」(長谷川一子班長)によりジストニアの疫学調査が施行され、1993年に比して2006年では増加している事が判明した。この先行研究によりジストニア患者の実態調査が進み、種々の病型のジストニアの診断基準が作成された。この成果を踏まえ、H25年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「ジストニアの病態と疫学に関する研究」(研究代表者梶)ではアンケート調査を中心に疫学調査を行い、ジストニアの有病率などを再検討したが、確定には至っていない。本研究ではこれまでの研究成果を踏まえ、引き続きジストニアに関する疫学調査を行うとともに、その病態解明に向けた研究を進めていくことを目標とした。
研究方法
本年度における各項目の到達目標を下記に示す。
1) 肩こりや演奏家の演奏困難など、身近な症状の中にジストニアが隠れていないか、アンケートなどを中心に調査を行う。またジストニアと診断された人のうち、遺伝子異常の有無や年齢別の発症様式などを調査し、疫学調査を通じてジストニアの病態解明を進める。
2) 新たに発見されたものも含め、遺伝子検査を行えるシステムを整備し、遺伝子診断に応じた遺伝子相談や治療法の開発、治療ガイドラインの作成を目指す。
結果と考察
研究結果
1) 疫学調査
慢性の肩こりを主訴として病院を受診した人31例のアンケート調査では、ジストニアの臨床特徴を2項目有する人は11例、3項目を有する人は2例であった。また、音楽大学の生徒・職員に対する1300通のアンケート調査では、「演奏しにくくなった」経験については38例(2.9%)で回答を得られた。ジストニアと診断された101例の調査では、発症年齢における病型の分布は、これまでの報告同様に、若年発症群で全身性ジストニアが多く、中年発症群で痙性斜頚が、高齢発症群で眼瞼痙攣/メイジュ症候群が多い結果であった。また内服治療、BTX治療の有効例はいずれも高齢発症群で少ない傾向にあった。DYT1変異が否定されている280人の一次性ジストニア患者のうち、THAP1変異(DYT6)の頻度は1.4% (4/280) であり、他民族での頻度とほぼ同様であった。
2) 遺伝子検査
DYT10ジストニアである発作性運動起源性ジストニアが疑われた患者2名(親子症例)について、DYT10原因遺伝子PRRT2の遺伝子解析システムを構築し、全エクソンを標的とした変異解析を行った。シークエンスによる変異解析の結果、患者2名からPRRT2のexon 2において新規の遺伝子変異(c.G879G/A [M293I])を検出した。

考察
1) 疫学調査
肩こりや音楽関係者に対するアンケート調査では、肩こりや演奏家の演奏困難など、身近な症状の中にジストニアが隠れている可能性が示唆されたが、アンケート回収率が低く、発症率の同定には至らなかった。ジストニアの発症年齢における病型の分布や、一次性ジストニアにおけるDYT6の頻度などは、これまでの海外報告とほぼ同様であった。
2) 遺伝子検査
DYT10ジストニアが疑われた患者2名におけるPRRT2の遺伝子解析から、同一の新規遺伝子変異(c.G879G/A [M293I])を検出した。PRRT2は主に大脳基底核に発現しており、神経伝達物質放出の制御に関わることが報告されている。今回の変異は、その機能異常を来たす可能性が考えられた。これらのことから、M293I変異は疾患特異的な変異であることが強く示唆された。
結論
ジストニアは症状が多彩であり、診断を含めて病態が不明な点が多く、治療も困難であることが多い。疫学調査や臨床病態の検討、また薬物・ボツリヌス・DBSなどによる治療など臨床面も踏まえて、今後も研究を続けていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201324160C

成果

専門的・学術的観点からの成果
DYT10ジストニアである発作性運動起源性ジストニアが疑われた患者2名(親子症例)について、DYT10原因遺伝子PRRT2の遺伝子解析システムを構築し、全エクソンを標的とした変異解析を行い、患者2名からPRRT2のexon 2において新規の遺伝子変異(c.G879G/A [M293I])を検出した。またDYT1変異が否定されている280人の一次性ジストニア患者のうち、THAP1変異(DYT6)の頻度は1.4% (4/280) で、他民族での頻度とほぼ同様であった。
臨床的観点からの成果
慢性の肩こり31例のアンケート調査では、ジストニアの臨床特徴を2項目有する人は11例、3項目を有する人は2例であった。また、音楽大学の生徒・職員に対する1300通のアンケート調査では、「演奏しにくくなった」経験については38例(2.9%)で回答を得られた。ジストニアと診断された101例の調査では、発症年齢における病型の分布はこれまでの報告と同様に、若年発症群で全身性ジストニアが多く、中年発症群で痙性斜頚が、高齢発症群で眼瞼痙攣/メイジュ症候群が多い結果であった。
ガイドライン等の開発
ジストニアの最新の治療指針として、「ジストニアのすべてー最新の治療指針」を2013年5月24日発行した。
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ryosuke Miyamoto, Hidetaka Koizumi, Hiroyuki Morino, et al.
DYT6 in Japan-genetic screening and clinical characteristics of the patients
Movement Disorders , 29 (2) , 278-280  (2014)
10.1002/mds.25745
原著論文2
Ryosuke Miyamoto, Hiroyuki Morino, Akio Yoshizawa, et al.
Exome sequencing reveals a novel MRE11 mutation in a patient with progressive myoclonic ataxia
Journal of the Neurological Sciences , 337 (1-2) , 219-223  (2013)
10.1016/j.jns.2013.11.032
原著論文3
Hideyuki Matsumoto, Yasuo Terao, Yoshikazu Ugawa.
Ocular paradoxical movement and severity of Parkinson’s disease
Brain , 136 (10)  (2013)
10.1093/brain/awt124
原著論文4
Toshiaki Furubayashi, Hitoshi Mochizuki, Yasuo Terao, et al.
Cortical hemoglobin concentration changes underneath the coil after single-pulse transcranial magnetic stimulation: a near-infrared spectroscopy study
Journal of Neurophysiology , 109 (6) , 1626-1637  (2013)
10.1152/jn.00980.2011
原著論文5
Goto S, Kawarai T, Morigaki R, Okita S, Koizumi H, Nagahiro S, Munoz EL, Lee LV, Kaji R.
Defects in the striatal neuropeptide Y system in X-linked dystonia- parkinsonism.
Brain , 136 (10) , 1555-1567  (2013)
doi: 10.1093/brain/awt084. Epub 2013 Apr 18.
原著論文6
Mure H, Morigaki R, Koizumi H, Okita S, Kawarai T, Miyamoto R, Kaji R, Nagahiro S, Goto S
Deep brain stimulation of the thalamic ventral lateral anterior nucleus for DYT6 dystonia.
Stereotact Funct Neurosurg , 92 (6) , 393-399  (2014)
doi: 10.1159/000365577. Epub 2014 Oct 28.
原著論文7
Koizumi H, Goto S, Okita S, Morigaki R, Akaike N, Torii Y, Harakawa T, Ginnaga A, Kaji R
Spinal Central Effects of Peripherally Applied Botulinum Neurotoxin A in Comparison between Its Subtypes A1 and A2.
Front Neurol , 5 (98)  (2014)
doi: 10.3389/fneur.2014.00098. eCollection 2014.
原著論文8
Kumar KR, Lohmann K, Masuho I,;, Kaji R,et al
Mutations in GNAL: a novel cause of craniocervical dystonia.
JAMA Neurol , 71 (4) , 490-494  (2014)
10.1001/jamaneurol.2013.4677.
原著論文9
Goto S, Morigaki R, Okita S, Nagahiro S, Kaji R.
Development of a highly sensitive immunohistochemical method to detect neurochemical molecules in formalin-fixed and paraffin-embedded tissues from autopsied human brains.
Front Neuroanat. , 9 (22)  (2015)
10.3389/fnana.2015.00022. eCollection 2015.
原著論文10
Miyamoto R, Kawarai T, Oki R, Matsumoto S, Izumi Y, Kaji R.
Lack of C9orf72 expansion in 406 sporadic and familial cases of idiopathic dystonia in Japan.
Mov Disord , 30 (10) , 1430-1431  (2015)
10.1002/mds.26310. Epub 2015 Jul 14. No abstract available.
原著論文11
Miyamoto R, Mure H, Morigaki R, Goto S, Murayama S, Izumi Y, Kaji R.et al
Autopsy case of severe generalized dystonia and static ataxia with marked cerebellar atrophy
Neurology. , 85 (17) , 1522-1526  (2015)
10.1212/WNL.0000000000002061. Epub 2015 Sep 25. No abstract available.

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2019-10-23

収支報告書

文献番号
201324160Z