micro RNA解析による間質性膀胱炎病態の解明

文献情報

文献番号
201324156A
報告書区分
総括
研究課題名
micro RNA解析による間質性膀胱炎病態の解明
課題番号
H24-難治等(難)-指定-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
本間 之夫(東京大学医学部附属病院 泌尿器科)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 基文(東京大学医学部附属病院 泌尿器科)
  • 新美 文彩(東京大学医学部附属病院 泌尿器科)
  • 山田 幸央(東京大学医学部附属病院 泌尿器科)
  • 野宮 明(東京大学医学部附属病院 泌尿器科)
  • 西松 寛明(東京大学医学部附属病院 泌尿器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
間質性膀胱炎は、頻尿・知覚過敏・尿意切迫感・膀胱痛などの症状を呈する原因不明の難治性疾患である。間質性膀胱炎は、潰瘍の有無で潰瘍型と非潰瘍型に分けられる。一般に潰瘍型が重症で、当科での検討でも潰瘍型のみでCXCL9, ASIC1などのmRNAの発現の亢進が認められる。しかし、間質性膀胱炎は良性疾患であるために膀胱水圧拡張術などに伴って採取される膀胱粘膜の組織量に限界があり、病態に関連していると思われるタンパクに関する検討は難しい。
本研究の特色としては膀胱粘膜標本を使用して今まで蛋白レベルでは発見し得なかった変化を、mRNAの解析で間質性膀胱炎の病態を迫ること、さらに、近年臨床的に別個の病態を持つと考えられ始めた潰瘍型と非潰瘍型を鑑別する目的でmRNAの発現を比較する。さらにmRNAの発現を制御するmicro RNA(以下、miRNAと略す。)にまで解析し、比較することで、その臨床像も含めた発現と症状の程度、排尿状態などとの関連性も合わせて解析することを目的とした。
研究方法
2008年以降、当科では間質性膀胱炎に対する膀胱水圧拡張術に際して患者の同意を得た上で膀胱粘膜の一部を採取し、-80℃にて凍結保管している。また、膀胱癌に対する経尿道的膀胱腫瘍切除術に際しても同様に正常膀胱粘膜の一部を採取、凍結保管している。これら、保管されている検体を用いて本研究を行う。
2年目である本年度はmicro RNAについてマイクロアレイによる網羅的解析を行う。潰瘍の有無や、それぞれの臨床データをもとに比較検討した。基礎研究と平行して行っている症例のデータベース作成は1年目の時点で完成しており、これを用いて既存の治療法について潰瘍型と非潰瘍型の病型に応じて変化が生じるかの検討も行う。
結果と考察
マイクロアレイによるmiRNAの網羅的解析では潰瘍型ICでは、miR-551b-3p、miR-205-5p、miR-141-3p、miR-31-3p、miR-31-5pの発現が増加していた。非潰瘍型ICでは、miR-223-3pの発現が増加しており、これは非潰瘍型のみに特異的であった。これらのmiRNAと炎症の関連性について今後検討予定である。症例データベースの解析では潰瘍型と非潰瘍型では最も一般的な治療で唯一保険適応のある水圧拡張術の治療効果継続期間が術後15か月までは潰瘍型の方が良好であったが、それ以降では非潰瘍型と有意差を認めないという結果となった。この結果は従来なされてきた潰瘍型では水圧拡張術が効果があるが、非潰瘍型では効果が少ない、という報告と違い、1年程度の短期間では潰瘍型の方が治療効果が高いという従来の報告を裏付ける結果となったが、長期的なフォローを行うと両者とも有意差がないという新しい知見を得ることが出来た。また間質性膀胱炎の症例に対して行ったヘパリンリドカイン療法の解析を行ったところ60%の患者で効果を認めたが、リドカイン注入による効果は潰瘍型ではより高く認められた。
結論
Real time RT-RCR,およびマイクロアレイアッセイによる結果、間質性膀胱炎における潰瘍型と非潰瘍型では病態が大きく違うことが予想される。
同一の治療を行った場合でも潰瘍型と非潰瘍型では治療効果0の発現が大きく違い、基礎研究におけるTRPチャンネル、ASIC、NGFなどの発現の違いが関与している可能性が示唆される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201324156B
報告書区分
総合
研究課題名
micro RNA解析による間質性膀胱炎病態の解明
課題番号
H24-難治等(難)-指定-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
本間 之夫(東京大学医学部附属病院 泌尿器科)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 基文(東京大学医学部附属病院 泌尿器科)
  • 新美 文彩(東京大学医学部附属病院 泌尿器科)
  • 山田 幸央(東京大学医学部附属病院 泌尿器科)
  • 野宮 明(東京大学医学部附属病院 泌尿器科)
  • 西松 寛明(東京大学医学部附属病院 泌尿器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
間質性膀胱炎は、頻尿・知覚過敏・尿意切迫感・膀胱痛などの症状を呈する原因不明の難治性疾患である。間質性膀胱炎は、潰瘍の有無で潰瘍型と非潰瘍型に分けられる。一般に潰瘍型が重症で、当科での検討でも潰瘍型のみでCXCL9, ASIC1などのmRNAの発現の亢進が認められる。しかし、間質性膀胱炎は良性疾患であるために膀胱水圧拡張術などに伴って採取される膀胱粘膜の組織量に限界があり、病態に関連していると思われるタンパクに関する検討は難しい。
本研究の特色としては膀胱粘膜標本を使用して今まで蛋白レベルでは発見し得なかった変化を、mRNAの解析で間質性膀胱炎の病態を迫ること、さらに、近年臨床的に別個の病態を持つと考えられ始めた潰瘍型と非潰瘍型を鑑別する目的でmRNAの発現を比較する。さらにmRNAの発現を制御するmicro RNA(以下、miRNAと略す。)にまで解析し、比較することで、その臨床像も含めた発現と症状の程度、排尿状態などとの関連性も合わせて解析することを目的とした。
研究方法
2008年以降、当科では間質性膀胱炎に対する膀胱水圧拡張術に際して患者の同意を得た上で膀胱粘膜の一部を採取し、-80℃にて凍結保管している。また、膀胱癌に対する経尿道的膀胱腫瘍切除術に際しても同様に正常膀胱粘膜の一部を採取、凍結保管している。これら、保管されている検体を用いて本研究を行う。
平成24年度は、サンプルの採取と保管、膀胱粘膜生検サンプルからのRNA抽出手技の確立、mRNAの解析から影響を及ぼす因子の選定、データベースの作成を行う。2年目はmicro RNAについてマイクロアレイによる網羅的解析をお行う。潰瘍の有無や、それぞれの臨床データをもとに比較検討した。基礎研究と平行して、症例のデータベース作成を行った。データベースには、患者の診断時年齢、発症時年齢、性別、既往症・依存症、1日排尿回数、夜間排尿回数、1回平均排尿量、1回最大排尿量、拡張時膀胱容量、潰瘍の有無、潰瘍の程度、間質性膀胱炎の自覚症状の程度を評価するO’Leary and Santの症状スコア・問題スコア、疼痛スコア、国際前立腺症状スコア、下部尿路主要症状スコア、過活動膀胱スコアをそれぞれ記入した。また既存の治療法について潰瘍型と非潰瘍型の病型に応じて変化が生じるかの検討も行った。
結果と考察
間質性膀胱炎の膀胱粘膜組織におけるmRNAの発現を検討した結果、Hunner’s lesionの有無でTRP チャンネルおよびケモカインのmRNAの発現様式に違いを認めた。臨床症状との関連性ではTRPM2、CXCL9、TRPV2の発現が症状と特に高い関連を示していた。
miRNAの機能は遺伝子発現を制御することであり、一部のmRNAと相補的な塩基配列を有し、これらが結合することで翻訳を阻害する。既存の報告では血管床では細動脈レベルでの血管炎や潰瘍の治癒過程においてmiRNAが深く関与していることが示唆されている。間質性膀胱炎においても、Hunner’s lesionの有無でmiRNAの発現の様式が異なっており、特にmiR-223-3pの発現が大きく異なっていた。
今回の研究結果で、知覚亢進や炎症との関連が知られているmRNAやmiR-223-3pの発現亢進を認めたことは、従来の臨床像との関連からも納得できる結果であった。これらの知見は、間質性膀胱炎の病態の解明と、Hunner’s lesionの病理に迫る手がかりになると考えられる。
結論
Hunner’s lesionの有無でTRPチャンネルだけではなく、NGFやケモカインでもmRNAの発現に差異を認めた。また、miRNAの発現もHunner型と非Hunner型、コントロールで炎症に関連する部分で発現に違いが認められた。間質性膀胱炎の病態やHunner’s lesionの病態を解明する上で重要な知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201324156C

成果

専門的・学術的観点からの成果
初年度に本研究では間質性膀胱炎膀胱検体におけるmessengerRNAの解析を行い、病型ごとにTRPチャネルの発現が違うことが判明した。また、現在までに間質性膀胱炎においてmicroRNAの網羅的解析を行った報告はないため、この結果については現在in sutu hybridizationを含めた追加研究を施行中であり、結果がそろった時点で報告予定である
臨床的観点からの成果
間質性膀胱炎は泌尿器科専門医にもなじみの低い疾患であったが、ここ数年、泌尿器科学会内での啓蒙が進み、一般泌尿器科医にも認知されるようになってきた。臨床診断および治療に難渋するケースも多く、病型分類に基づいた治療アルゴリズムの作製が急務となっている。本研究で得られた臨床データにより、病型の重症度判定法などを作成し、間質性膀胱炎研究会で上梓し、指定難病の認定判定の際の重症度分類に生かされている。
ガイドライン等の開発
研究代表者の本間が主導となり、2007年に本邦の間質性膀胱炎ガイドラインが、2008年に東アジア地域(Asian Urological Society)での間質性膀胱炎ガイドラインが上梓されている。ガイドラインの初回の刊行から既に7年が経過しており、本研究結果および平成28年度から開始している患者レジストリの結果を含め、改訂を行う予定である。
その他行政的観点からの成果
2010年に間質性膀胱炎に対する膀胱水圧拡張術が保険適応となったが、Hunner型と非Hunner型では治療効果に差があることが本研究で判明した。今年度間質性膀胱炎が難病指定を受けるにあたり、本間を中心として間質性膀胱炎研究会で、間質性膀胱炎の重症度判定方法を制定した。本重症度判定は指定難病であるハンナ型間質性膀胱炎の認定の際に用いられている。
その他のインパクト
研究代表者の本間が新聞および雑誌での取材を受けている。共同研究者の野宮がテレビで
間質性膀胱炎を含めた排尿障害について啓蒙活動を行っている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
2018-06-25

収支報告書

文献番号
201324156Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
37,700,000円
(2)補助金確定額
37,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,235,710円
人件費・謝金 0円
旅費 1,252,870円
その他 411,420円
間接経費 870,000円
合計 3,770,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
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