フォン・ヒッペル・リンドウ病の診療指針に基づく診断治療体制確立の研究

文献情報

文献番号
201324155A
報告書区分
総括
研究課題名
フォン・ヒッペル・リンドウ病の診療指針に基づく診断治療体制確立の研究
課題番号
H24-難治等(難)-指定-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
執印 太郎(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門(泌尿器科学))
研究分担者(所属機関)
  • 篠原 信雄(北海道大学大学院医学研究科腎泌尿器外科)
  • 矢尾 正祐(横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器分子遺伝学)
  • 菅野 洋(横浜市立大学医学部脳神経外科)
  • 宝金 清博(北海道大学大学院医学研究科脳神経外科学分野)
  • 西川 亮(埼玉医科大学国際医療センター脳神経外科)
  • 夏目 敦至(名古屋大学大学院医学系研究科脳神経外科)
  • 倉津 純一(熊本大学大学院生命科学研究部脳神経外科学)
  • 齊藤 延人(東京大学医学部脳神経外科学教室)
  • 米谷 新(埼玉医科大学眼科)
  • 福島 敦樹(高知大学教育研究部医療学系眼科学)
  • 石田 晋(北海道大学大学院医学研究科眼科学分野)
  • 西森 功(高知大学医学部)
  • 伊藤 鉄英(九州大学大学院医学研究院病態制御内科学)
  • 田村 和朗(近畿大学理工学部生命科学科遺伝医学)
  • 長谷川 奉延(慶應義塾大学医学部小児科学)
  • 中村 英二郎(京都大学大学院医学研究科メディカルイノベーションセンター)
  • 櫻井 晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
VHL病は遺伝性希少難病であり中枢神経、網膜、副腎、腎臓、膵臓、生殖器に腫瘍や嚢胞を発症する。本研究班では過去の研究成果として疫学調査に基づいて「VHL病診療ガイドライン」「VHL病ガイドブック」を作成し、診断開始時期、経過観察法、発症前遺伝子診断、治療時期の方法と解説を呈示した。平成25年度は、上記の研究を継続するとともにVHL病患者会ベースでの診断治療の啓蒙活動を行う事を目的とした。
研究方法
VHL病の病態は多彩なため、専門医でも単科での診療には苦慮する症例が多い。各科専門医の連携によりガイドラインを用いた症例検討会を、WEB会議を用いて、その解決法を検討する。平成24年度作成したVHL 病の各疾患毎の重症度分類を用いて、医師を主体とした重症度分布調査を行い、その結果に基づいて、可能であれば重症度分類の改良を行う。患者会を対象にVHL病の情報提供および相談会など啓発活動を行う。
結果と考察
Web会議システムを用いて症例検討会を行い、7例の相談を受けて問題点について検討し、相談者に回答した。また、医師主体の重症度分類分布調査を高知大学医学部倫理委員会にて許可を得て行った。その結果、回答数は95名、最重症と判定される患者は全体で25名(26%)という結果となった。患者主体の調査結果と比べると、最重症者の割合は減少した。これは試験的な調査であり、正確な判定とは考えにくいので継続した調査が必要と考えられる。今後、まだ未作成の子宮卵巣周囲ののう胞性疾患と内耳リンパ管腫の重症度作成が必要と考えられた。
結論
VHL 病患者会と協力して、VHL 病患者の早期診断と治療、予後改善とQOL の向上を目的として研究を遂行した。症例検討会を行い、ガイドライン実践を図った。重症度分類を行ったところ、医師主体の重症度分布調査では患者主体のものと比べると、分布傾向はほぼ同様であったが、医師主体の調査では最重症者は減少した。医師の客観的な判断と患者の判断では重症度の認知が異なることが明らかとなった。今後、VHL 病患者の早期診断と治療、予後改善とQOL の向上と、重症度判定システムの改善を図って、希少難治疾患であるVHL 病患者の診断治療に貢献することを目指す。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201324155B
報告書区分
総合
研究課題名
フォン・ヒッペル・リンドウ病の診療指針に基づく診断治療体制確立の研究
課題番号
H24-難治等(難)-指定-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
執印 太郎(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門(泌尿器科学))
研究分担者(所属機関)
  • 篠原 信雄(北海道大学大学院医学研究科腎泌尿器外科)
  • 矢尾 正祐(横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器分子遺伝学)
  • 菅野 洋(横浜市立大学医学部脳神経外科)
  • 宝金 清博(北海道大学大学院医学研究科脳神経外科学分野)
  • 西川 亮(埼玉医科大学国際医療センター脳神経外科)
  • 夏目 敦至(名古屋大学大学院医学系研究科脳神経外科)
  • 倉津 純一(熊本大学大学院生命科学研究部脳神経外科学)
  • 米谷 新(埼玉医科大学眼科)
  • 福島 敦樹(高知大学教育研究部医療学系眼科学)
  • 石田 晋(北海道大学大学院医学研究科眼科学分野)
  • 西森 功(高知大学医学部)
  • 伊藤 鉄英(九州大学大学院医学研究院病態制御内科学)
  • 田村 和朗(近畿大学理工学部生命科学科遺伝医学)
  • 長谷川奉延(慶應義塾大学医学部小児科学)
  • 齊藤 延人(東京大学医学部脳神経外科学教室)
  • 中村英二郎(京都大学大学院医学研究科メディカルイノベーションセンター)
  • 櫻井 晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では脳神経外科、泌尿器科、眼科、消化器内科医、小児科内分泌専門医、遺伝専門医を班員に加え、VHL病患者会と連携協力し、ガイドラインによるVHL病患者の早期診断と治療、予後改善とQOLの向上を図り、VHL病患者が生涯、病気と共存するためのガイドラインの運用検討会を行い、患者会ベースでVHL病の診断治療の啓蒙などを目的として研究を遂行した。さらに、VHL病患者には身体的機能、臓器機能において無症状、軽症の患者から身体的機能、臓器機能の低下から重度の医療的、生活面での支援を要する患者が存在するため、症状、QOLに応じた支援の程度を決定するため、各専門医の検討で重症度度分類を作成し、VHL病患者の重症度分類を作成し試験的な適用と評価を目的として研究を行った。
研究方法
VHL病の病態は多彩なため、専門医でも単科での診療には苦慮する症例が多い。各科専門医の連携によりガイドラインを用いた症例検討会を、WEB会議を用いて、その解決法を検討する。同時に、ガイドラインの改良を図る。VHL 病の各疾患毎の重症度分類作成し、それを用いて、患者主体、医師主体とした重症度分布調査を行い、その結果に基づいて、可能であれば重症度分類の改良を行う。患者会を対象にVHL病の情報提供および相談会など啓発活動を行う。
結果と考察
2年に7回でVHL病ガイドラインを用いた診断治療の質向上のための症例検討会を行った。各学会や各地域の受け持ち医から依頼あったVHL症例について匿名化した病歴や画像によるものであり、中枢神経、腎臓、副腎、膵臓、生殖器などの重症や治療困難例について、ガイドラインに従い一定の治療方針を呈示しそれを主治医に伝達した。合計で14症例について行った。これにより、ガイドラインの実践と改良を図った。
班会議を開催し、脳神経外科、泌尿器科、眼科、消化器内科医、小児科内分泌専門医、遺伝専門医などの合議検討でVHL病に各臓器で発症する疾患を対象に重症度分類を作成して改良に努めた。重症度には各臓器の機能を判断基準として患者のQOLを評価基準に加えた。なるべく一般医、患者でも判定しやすい客観性のある平易なものとした。重症度は0-4の5段階とした。重症度の判断基準は、<症状なし-Grade0>から<最重症、日常生活の障害重度あり-Grade4>を判断基準とした。重症度が最も高い臓器の重症度判定結果を各患者の重症度とし、患者でGrade3の臓器が2つ以上ある場合の者は最重症とした。これを用いて重症度判定システムの試験的適用を患者主体、医師主体で行った。
患者46名を対象として重症度判定を行った結果では最重症者の患者が46%であり、Grade3の患者が15%という結果で約半数の患者が日常生活の障害があると判明した。さらに医師主体で95名の患者を対象に重症度判定を行った結果では、最重症者は、26%であった。全体として患者主体のものと比べると、分布傾向はほぼ同様であったが、医師主体の調査では最重症者は減少した。医師の客観的な判断と患者の判断では重症度の認知が異なることが明らかとなった。さらに精密な多数例の解析が必要と考えられた。その結果、子宮卵巣周囲ののう胞性疾患と内耳リンパ管腫の重症度作成が必要であると明らかになった。
結論
2年間の研究で、①VHL病ガイドラインの改良と実践、②重症度分類の作成、③重症度分類の適用、④VHL病患者会との共催による相談会の開催による疾患理解の普及啓発活動などを行った。これらはVHL病が将来、難病に指定されれば必ず、本疾患の診断、治療、経過観察および新規治療法開発のためには有効な研究内容と考えている。是非とも今後も本研究の長期間の継続が必須であると結論された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201324155C

成果

専門的・学術的観点からの成果
VHL病は発症数が少ない優性遺伝性難治性疾患である。多発再発性に発症する脳・脊髄、網膜の血管芽腫、腎癌、褐色細胞腫、膵腫瘍に対して根本的な治療法はない。本研究班では本邦に即したVHL病の診断治療指針の確立を行い、各領域の専門医に対して、普及を行い、班員間で難治性の患者に対してガイドラインを利用して討議し改善を図った。同時に重症度分類を作成し、病態の種類だけではなく、質的に軽症~重症者まで分類して最適な診断治療方法の確立を図った。
臨床的観点からの成果
VHL病は発症数が少ない優性遺伝性難治性疾患である。多発再発性に発症する脳・脊髄、網膜の血管芽腫、腎癌、褐色細胞腫、膵腫瘍に対して根本的な治療法はない。臨床的には脳神経外科、眼科、泌尿器科、内分泌内科、消化器内科、消化器外科の専門医、及び遺伝専門医に対して診断治療指針の普及活動を行い、ガイドブックを作成することにより患者にも診断治療指針を理解させ、同時に専門医間で重症の難治性患者に対して診断治療指針を利用して討議しその改善を図った。
ガイドライン等の開発
VHL病で多発再発性に発症する各疾患に対して、脳神経外科、眼科、泌尿器科、内分泌内科、消化器内科の専門医、及び遺伝専門医により診断治療指針(ガイドライン)を作成した。難治性のVHL病患者の診断治療に用い、専門医間で討議しその改良を図った。内容を平易にした患者用ガイドブックを作成した。診断治療指針、ガイドブックを全国の専門医、患者に配布しその普及につとめた。
その他行政的観点からの成果
希少な優性遺伝性難治性疾患について対象患者や基幹病院の専門医に診断治療法についての理解を目指すという新しい観点で検討した点でその他の同様の疾患の診断治療のモデルとなると考えられる。希少な優性遺伝性難治性疾患の対象者に対して本邦では医療が適切に行われているという点で、社会的にも優れた効果を導いたと考えられる。同時にこのようなシステムを作ることにより、医療費の軽減という観点でも優れた結果を導いたと考えられる。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yao M, Shinohara N, Yamasaki I, et al.
von Hippel-Lindau Disease-Associated Pheochromocytoma: Epidemiology, Clinical Characteristics, and Screening and Surveillance Protocols in Japan
J Transl Med Epidemiol , 2 (1)  (2014)
原著論文2
Shuin T, Yamasaki I, Fukushima A, et al.
A Proposed Clinical Grading System to Define Impaired Organ Function and Quality Of Life in Patients with von Hippel-Lindau (VHL) Disease in Japan
J Transl Med Epidemiol , 2 (1)  (2014)
原著論文3
Kanno H, Kuratsu J, Shuin T, et al.
Clinical features of patients bearing central nervous system hemangioblastoma in von Hippel-Lindau disease
Acta Neurochir , 155 , 1-7  (2013)
10.1007/s00701-012-1514-y
原著論文4
執印太郎、篠原信雄、矢尾正祐、他
von Hippel Lindau病全国疫学調査における腎癌の臨床的解析
日本泌尿器科学会雑誌 , 103 (3) , 552-556  (2012)
原著論文5
執印太郎、矢尾正祐、篠原信雄、他
本邦von Hippel-LIndau病に伴う褐色細胞腫の特徴:全国疫学調査とその解析結果
日本泌尿器科学会雑誌 , 103 (3) , 557-561  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
2018-05-22

収支報告書

文献番号
201324155Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,900,000円
(2)補助金確定額
3,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,268,395円
人件費・謝金 0円
旅費 666,730円
その他 65,760円
間接経費 900,000円
合計 3,900,885円

備考

備考
研究分担者に配分した研究費のうち2施設において、消耗品購入の際、やむを得ず自己資金を用いて購入した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-