高齢者の急性期入院医療の質の標準化に関する基礎的調査研究

文献情報

文献番号
199800278A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の急性期入院医療の質の標準化に関する基礎的調査研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
松田 朗(国立医療・病院管理研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岩田健治(全国社会保険協会連合会)
  • 加藤隆正(医療法人渓仁会)
  • 亀田俊忠(亀田総合病院)
  • 川渕孝一(日本福祉大学)
  • 木村明(日本診療録管理学会)
  • 鈴木久雄(健康保険組合連合会)
  • 徳田禎久(禎心会病院)
  • 西澤寛俊(西岡病院)
  • 松村耕三(松村総合病院)
  • 山本修三(済生会神奈川県病院)
  • 長谷川敏彦(国立医療・病院管理研究所)
  • 小山秀夫(国立医療・病院管理研究所)
  • 西村秋生(国立医療・病院管理研究所)
  • 清谷哲朗(国際疾病管理研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全国の一般病院における高齢者急性期医療の実態を、診断分類の観点から把握することを目的とする。すなわち、急性期医療を受療している高齢者において、特徴的かつ普遍的な診断分類群を抽出し、医療の標準化に資するデータベースを構築することが目的である。さらに、それらに対して投入された医療資源量の算出について検討することにより、わが国の高齢者医療において、医療の標準化の可能性を追求する。
研究方法
上記のメンバーにて「入院医療費の定額支払い方式に関する懇談会」とする検討委員会を組織し、全国より高齢者の急性期医療に積極的に関わっている20病院を選定し、これらの病院に入院している高齢者の診断に関するデータを抽出する。その際、医療資源の投入量を反映する診断分類として、ICD-9-CM処置・手術一覧をVHJ(わが国の12病院で組織するボランタリー組織)のメンバーが翻訳した「97年度β版for NIHSM」によるコーディングを用いた。またそれぞれの症例について、経費データも併せて算出することにより、投入された医療資源の算定を試みた。
結果と考察
本年度の研究結果は、以下のとおりである。
高齢者は一般に、成人に比べ転帰が不安定であり、症状も多彩であると考えられていることから、一般病院においては高齢者に対して、多量の医療資源が投入されがちである。その結果、高齢者に係る医療費は、死亡を前にして大きく上昇することが指摘されている。
しかし、個々の医療行為は必ずしも科学的根拠(Evidence)に基づいた必要性が証明されたものであるとはいえず、過剰な医療行為が行われている可能性も否定できない。実際には、一定年齢以降発症率の増加する疾患は少なくなく、多くの高齢者が一般成人層と異なる特徴な状態像を有しており、かつそのその状態像は高齢者層の中においては普遍的であることが想像されるが、現段階でこれらの高齢患者に対し、その特徴を十分に考慮した治療が行われているとは必ずしもいえない。科学的根拠に基づいているとはいえない、高齢であることを過度に警戒した過剰な医療行為が、患者である高齢者生活の質をむしろ低下せしめている可能性も考えられる。長寿科学の一環として、今後は急性期医療においても、高齢者のQOLに十分考慮した、「必要十分な医療」を提供して行くことが重要である。そのためには、各医療行為に対する質の標準化がなされてゆくことが必要となる。
DRGによる診断分類は、高齢者を共通した状態像により群分けすることを可能にする。
共通する状態像の患者に対しては、必要な医療資源投入量を示すなど、医療の標準化を図ることが比較的容易であると考えられる。すなわち、診断分類群は、医療の質の標準化を行うための、重要なデータベースであるといえる。本研究では、高齢者急性期医療の現状を、高齢者において特徴的、かつ普遍的な状態像としての診断分類群という観点から把握し、データベースを構築した。また、分けられた各診断分類群毎に、投入された医療資源量についても算出方法を検討した。
結論
本調査の成果としての診断分類群データベースは、診断分類による高齢者の状態像把握を可能にすることから、高齢者急性期医療に対する質の標準化を図るための、重要な基礎資料といえる。さらに、各状態像毎に係る医療資源投入量を示すことにより、必要投入量を算定してゆくための指標を提供する。このことは、高齢者に対する医療において、「行いうるすべてを行う医療」から、「必要十分な医療」への転換を促す動機付けとなることが期待される。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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