希少難治性神経疾患の疫学、病態解明、診断・治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201324153A
報告書区分
総括
研究課題名
希少難治性神経疾患の疫学、病態解明、診断・治療法の開発に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-指定-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
中川 正法(京都府立医科大学 大学院・医学研究科 医療フロンティア展開学)
研究分担者(所属機関)
  • 蜂須賀 研二(産業医科大学医学部・リハビリテーション医学)
  • 山下 敏彦(札幌医科大学・医学部・整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、神経内科医、整形外科医、リハビリテーション医、CMT患者会などと協力して、CMTに関する情報を医療関係者とCMT患者が共有するシステムとCMTの病態解明と治療法開発を主目的とする。
研究方法
①CMTに関する啓発活動、②労支援活動、③ロボットスーツHALⓇ(CYBERDYNE 株)のCMT患者への装着および改良の取り組み、④CMT1A患者に対するアスコルビン酸投与前後での末梢神経軸索興奮性(Qtracによる測定)の検討、⑤CMT患者の手・足変形に対する外科的療法、リハビリテーション、装具療法のガイドライン化への取り組み、⑥関連研究班との共同によるCMTの遺伝子診断・分子疫学研究の推進、⑦CMTの病態解明・治療法開発:iPS(京都大学iPSセンターとの共同研究)細胞、動物モデル(ショウジョウバエ:京都工芸繊維大学等との共同研究、マウスなど)等を用いて、その発症メカニズムを解明し治療法を開発する。
結果と考察
①CMTに関する啓発活動:CMT診療マニュアルは2010年に3000部作成したがほぼ完売した。市民公開講座を沖縄と東京で開催し、計70名の参加者があった。東京会場では装具の展示会も行った。CMTの遺伝相談を横浜、京都でCMT患者会と協力して行った。
②労支援活動:就労上の問題点に関する医学的支援を外来診療の中で行った。
③「希少性難治性疾患-神経・筋難病疾患の進行抑制治療効果を得るための新たな医療機器、生体電位等で随意コントロールされた下肢装着型補助ロボット (HAL-HN01)に関する医師主導治験」を2例のCMT患者で完了した。
④CMT1A患者に対するアスコルビン酸投与1年間前後での末梢神経軸索興奮性の検討を7名のCMT患者で行い、60歳未満のCMT患者では進行が抑制されている可能性が示唆された。
⑤CMT患者の手・足変形に対する外科的療法、リハビリテーション、装具療法のガイドライン化への取り組み:十分な症例数がなくガイドライン化は出来なかった。
⑥関連研究班との共同によるCMTの遺伝子診断・分子疫学研究の推進:TFG遺伝子解析をはじめ、計400例以上の遺伝子解析を行った。
⑦CMTの病態解明・治療法開発:文科省疾患特異的iPS細胞拠点である京都大学iPSセンターと協力し、iPS細胞作成等が進行中である。現在、MFN2患者4例、CMT1A患者1例の末梢血より、iPS細胞を作成し、神経細胞に分化誘導することに成功した。現在、その機能解析および治療薬剤スクリーニングを行っている。
本研究により、CMTに関する患者・患者家族および医療関係者の理解度の向上がある程度計られたと考える。ロボットスーツHAL改良型を用いた医師主導臨床治験(現在進行中)を行ったこと、次世代シークエンサーによる遺伝子診断の進展、CMTのiPS細胞作成と神経細胞に分化誘導の成功は学術的にも社会的にも評価されると考える。しかし、就労支援、外科手術適応の標準化などは不十分な結果になった。本研究班および関連研究班の努力により、わが国おけるCMT研究は明らかに進展していると考える。本研究を継続することにより、CMTに関するわが国発の治療法開発が期待される。
結論
本研究により、CMTに関する患者・患者家族および医療関係者の理解度の向上、ロボットスーツHAL改良型を用いた医師主導臨床治験への貢献、CMTの遺伝子診断の進展、CMT患者血液からiPS細胞作成・神経細胞への分化誘導などの成果を得た。本研究の継続により、わが国におけるCMT研究とCMT患者の診療・生活環境をより高いレベルに引き上げることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201324153B
報告書区分
総合
研究課題名
希少難治性神経疾患の疫学、病態解明、診断・治療法の開発に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-指定-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
中川 正法(京都府立医科大学 大学院・医学研究科 医療フロンティア展開学)
研究分担者(所属機関)
  • 蜂須賀 研二(産業医科大学医学部・リハビリテーション医学)
  • 山下 敏彦(札幌医科大学・医学部・整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は先行研究の結果を踏まえて、神経内科医、整形外科医、リハビリテーション医、CMT患者会と協力して、CMTの治療・ケア・研究に関する情報を医療関係者とCMT患者が共有するシステムとCMTの病態解明と治療法開発を主目的とする。
研究方法
①CMT患者診療状況の調査、②CMTに関する啓発活動、③労支援活動、④ロボットスーツHALⓇ(CYBERDYNE 株)のCMT患者への装着および改良の取り組み、⑤CMT1A患者に対するアスコルビン酸投与前後での末梢神経軸索興奮性(Qtracによる測定)の検討、⑥CMT患者の手・足変形に対する外科的療法、リハビリテーション、装具療法のガイドライン化への取り組み、⑦関連研究班との共同によるCMTの遺伝子診断・分子疫学研究の推進、⑧CMTの病態解明・治療法開発:iPS(京都大学iPSセンターとの共同研究)細胞、動物モデル(ショウジョウバエ:京都工芸繊維大学等との共同研究、マウスなど)等を用いて、その発症メカニズムを解明し治療法を開発する。
結果と考察
①CMT患者診療状況の調査:CMT患者131名(3歳~81歳、中央値 52歳、男 :女=71:60)から回答を得た。その結果、CMTは若年発症群と中年以降発症群の2相性分布をとる、3/4が下肢症状で発症するが上肢症状で発症する一群も存在する、患者の76%は歩行可能(<modified Rankin Scale:mRS 3)、就労をあきらめている患者はmRSが高い傾向にある、mRS 4-5であっても就労している患者もいる、CMT患者の7割は自分のCMT病型について知らない、原因遺伝子が判明している患者は全体の約3割、罹病期間とADLは必ずしもは相関しないなどが明らかとなった。②CMTに関する啓発活動:CMT診療マニュアルは2010年に3000部作成したがほぼ完売した。市民公開講座を札幌、仙台、沖縄、東京で開催し、計100名以上の参加者があった。東京会場では装具の展示会も行った。CMTの遺伝相談を横浜、京都でCMT患者会と協力して行った。平成26年1月26日のCMT市民公開講座東京会場では、補助装具の展示と整形靴技術士による説明会を行った。③労支援活動:就労上の問題点に関する医学的支援を外来診療の中で行った。④「希少性難治性疾患-神経・筋難病疾患の進行抑制治療効果を得るための新たな医療機器、生体電位等で随意コントロールされた下肢装着型補助ロボット (HAL-HN01)に関する医師主導治験」を2例のCMT患者で完了した。⑤CMT1A患者に対するアスコルビン酸投与1年間前後での末梢神経軸索興奮性の検討を7名のCMT患者で行い、60歳未満のCMT患者では進行が抑制されている可能性が示唆された。⑥CMT患者の手・足変形に対する外科的療法、リハビリテーション、装具療法のガイドライン化への取り組み:十分な症例数がなくガイドライン化は出来なかった。⑦関連研究班との共同によるCMTの遺伝子診断・分子疫学研究の推進:TFG遺伝子解析をはじめ、計400例以上の遺伝子解析を行った。⑧CMTの病態解明・治療法開発:文科省疾患特異的iPS細胞拠点である京都大学iPSセンターと協力し、iPS細胞作成等が進行中である。現在、MFN2患者4例、CMT1A患者1例の末梢血より、iPS細胞を作成し、神経細胞に分化誘導することに成功した。現在、その機能解析および治療薬剤スクリーニングを行っている。
本研究により、CMT患者の実態がある程度解明された。CMTに関する患者・患者家族および医療関係者の理解度の向上がある程度計られたと考える。ロボットスーツHAL改良型を用いた医師主導臨床治験(現在進行中)を行ったこと、次世代シークエンサーによる遺伝子診断の進展、CMTのiPS細胞作成と神経細胞に分化誘導の成功は学術的にも社会的にも評価されると考える。しかし、就労支援、外科手術適応の標準化などは不十分な結果になった。
 本研究班および関連研究班の努力により、わが国おけるCMT研究は明らかに進展していると考える。本研究を継続することにより、CMTに関するわが国発の治療法開発が期待される。わが国におけるCMT研究とCMT患者の診療・生活環境を少しでも世界の先進国レベルに近づけ、さらにより高いレベルに引き上げるために継続的な研究が必要と考える。
結論
本研究により、CMTに関する患者・患者家族および医療関係者の理解度の向上、ロボットスーツHAL改良型を用いた医師主導臨床治験への貢献、CMTの遺伝子診断の進展、CMT患者血液からiPS細胞作成・神経細胞への分化誘導などの成果を得た。本研究の継続により、わが国におけるCMT研究とCMT患者の診療・生活環境をより高いレベルに引き上げることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201324153C

成果

専門的・学術的観点からの成果
Charcot-Marie-Tooth(CMT)病は、四肢遠位部の筋力低下と感覚障害を示す希少神経難病である。本研究では、文科省疾患特異的iPS細胞拠点と協力しiPS細胞作成等が進行中である。本研究の継続により、わが国におけるCMT研究をより高いレベルに引き上げることが期待される。
臨床的観点からの成果
本研究では、CMT患者実態調査、下肢装着型補助ロボット (HAL-HN01)の医師主導治験、CMT療養マニュアルの刊行・普及、ホームページ作成、市民公開講座、分子疫学研究を行った。本研究の継続により、わが国におけるCMT患者の診療・生活環境をより高いレベルに引き上げることが期待される。
ガイドライン等の開発
先行研究班で作成したCMT診療マニュアルの普及に努めた。2015年12月に「シャルコー・マリー・トゥース病診療マニュアル改訂2版」を発刊した。
その他行政的観点からの成果
CMTの患者会である「CMT友の会」と連携した活動を行うことが出来た。
京都府立医科大学附属病院神経内科外来には100名以上のCMT患者が通院しており、HP等を通じて本研究班の活動が知られるようになっている。学校関係者向けにCMTを解説したパンフレットを作成し、都道府県の教育委員会へ発送した。
その他のインパクト
東京、大阪、岡山、福岡、札幌、沖縄で公開講座を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
10件
Shiga K, et al. J Peripher Nerv Syst 17(2):206-209, 2012
その他論文(和文)
7件
中川正法、髙嶋 博。「近位筋優位運動感覚ニューロパチーの疾患概念の確立」。神経内科 79(6):726-731, 2013
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
第54回日本神経学会学術集会
学会発表(国際学会等)
1件
The morning lecture in Sao Paulo University, Department of Neurology.
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
5件
CMT市民公開講座 札幌、仙台、沖縄、東京(2回)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shiga K, Noto Y, Nakagawa M, et al.
A novel EGR2 mutation within a family with a mild demyelinating form of Charcot-Marie-Tooth disease.
J Peripher Nerv Syst , 17 (2) , 206-209  (2012)
10.1111/j.1529-8027.2012.00403.x.
原著論文2
Noto Y, Shiga K, Tsuji Y, et al.
Nerve ultrasound depicts peripheral nerve enlargement in patients with genetically distinct Charcot-Marie-Tooth disease.
J Neurol Neurosurg Psychiatry. , 86 (4) , 378-384  (2015)
10.1136/jnnp-2014-308211.
原著論文3
Tsuji Y, Noto Y, Shiga K, et al.
Does hand dominance affect peripheral nerve excitability?
Clin Neurophysiol. , 127 (4) , 1921-1922  (2016)
10.1016/j.clinph.2016.01.009.
原著論文4
Ohara R, Imamura K, Morii F, Mizuno T, Nakagawa M, Inoue H, et al.
Modeling drug-induced neuropathy using human iPSCs for predictive toxicology.
Clin Pharmacol Ther. , 101 (6) , 754-762  (2017)
10.1002/cpt.5622.

公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
2018-06-11

収支報告書

文献番号
201324153Z