Perry(ペリー)症候群の実態、病因・病態の解明と治療法開発研究

文献情報

文献番号
201324123A
報告書区分
総括
研究課題名
Perry(ペリー)症候群の実態、病因・病態の解明と治療法開発研究
課題番号
H25-難治等(難)-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
服部 信孝(順天堂大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 坪井 義夫(福岡大学 医学部)
  • 富山 弘幸(順天堂大学 医学部)
  • 波田野 琢(順天堂大学 医学部)
  • 斉木 臣二(順天堂大学 医学部)
  • 今居 譲(順天堂大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Perry症候群はパーキンソニズム,うつ,体重減少,低換気をきたす予後不良の稀な遺伝性疾患とされる.2009年坪井らのグループによりDCTN1が原因遺伝子として報告されたが,本邦5家系を含む世界で17家系のみの報告で,分布や頻度、臨床像は明らかでない。同様に治療法についてもパーキンソン病に準ずる対症療法のみであり、根本的治療法はないため、本症候群の臨床像を明らかにし、さらに治療法の開発を目的とする。
研究方法
研究目的の達成のため,約3000例のDNAバンク症例中,日本の973例に対し,DCTN1の変異解析を行った.正常対照の解析も行い,解析可能な家系では家系内での変異の共分離も確認し,病的変異としての意義を確認した.変異陽性家系については同意を得た上で実地診療に赴き,変異陽性患者を実際に診察の上,検査所見を検討,解析し、臨床診断基準(案)を世界のPerry症候群患者の担当医,世界のPerry症候群患者の研究者とともに作成した.
 また,機能解析は細胞をもちいた実験でDCTN1の凝集の確認,凝集体の局在の確認,免疫組織化学・生化学的検討を行った.DCNT1の野生型,変異型を発現させたlineやDrosophilaのDNCT1のオルソログであるGluedをノックダウンした各lineの樹立を行い,睡眠のリズムの検討した.運動神経細胞死・黒質神経細胞死の共通メカニズムを解明すべく,初年度に同定した変異型p150glued強制発現によって誘導されたアポトーシスの性質について分子病態を検討した.凝集体形成とアポトーシス誘導との関係を詳細に解明すべく,変異型p150gluedが十分に発現した細胞のみを評価する必要があるため,全ての実験はフローサイトメーターを用いて評価した.
結果と考察
1.新規変異,新規家系を複数同定し,世界の中で本邦での疫学を明らかにした.その中で新規家系を含み本邦家系症例の特徴は,平均発症年齢が48.5歳(範囲:35-70歳)、平均罹病期間が5.4年(範囲2-14年)で,孤発性パーキンソン病より若年発症で経過が速い点では変わりがなかった.治療効果はほぼ全例でみられ,早期の運動合併症が見られる症例が散見された.体重は1~2年以内に10kg以上の減少がみられる例が多く,左右対称性の筋固縮、動作緩慢、姿勢反射障害がみられた.不眠,中途覚醒は多くの頻度でみられ,精神症状としては治療による衝動性制御障害が多くみられた.検査所見では頭部MRIは前頭萎縮を示すものと正常なものがあり,脳血流SPECT検査では前頭葉における血流低下が特徴であり,レビー小体病とは異なった.肺活量,胸部CTなどの異常は見られず,睡眠ポリグラフでは検査を行った6例全例に中枢性の呼吸異常が認められた.死因は突然死あるいは呼吸不全が5例と最も多く,肺炎等の合併症や自殺でなくなる例もみられた.
世界の17家系中5家系が本研究によるものであり,本研究の国際的成果,影響力も大きなものであった.その中で新規家系を含み本邦家系症例の特徴は,平均発症年齢が48.5歳(範囲:35-70歳),平均罹病期間が5.4年(範囲2-14年)で,孤発性パーキンソン病より若年発症で経過が速い点では変わりがない。肺活量、胸部CTなどの異常は見られず、眠ポリグラフでは検査を行った6例全例に中枢性の呼吸異常が認められた.死因は突然死あるいは呼吸不全が5例と最も多く,肺炎等の合併症や自殺でなくなる例もみられた.
2.国際臨床診断基準を作成,公表した.
 この結果が得られたことにより,臨床像の評価に基づき,国際臨床診断基準を作成し公表することができた(国内外の7つの学会).今後も,日本人のみならず人種を超えた多数例での臨床症状,MRI,SPECT,MIBG心筋シンチ,電気生理学的所見,認知機能やうつ病スケールなどの検査所見,経過などに基づき,診断基準の改定を繰り返し,よりよいものにupdateしていく必要がある.
3.細胞実験により変異型dynactin細胞質内凝集物形成からアポトーシス,細胞死に至る機序を確認した.
結論
本研究は,稀少疾患の研究から広く主要な神経変性疾患の根本的病態解明に繋げることを目標として独創的で意義深い成果を生むことができた.
 

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201324123C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1) 神経難病であり、責任遺伝子同定後も臨床像が不明瞭であった本疾患の臨床的特徴をまとめ、診断基準を作成できたこと。
2) 疾患責任遺伝子DCTN1の新規遺伝子変異を同定できたこと。
3) 本疾患の分子病態の一端(アポトーシスの関与)を解明できたこと。
臨床的観点からの成果
1) 本疾患は臨床像が長らく不明であり、運動ニューロン症状・パーキンソニズムを重複するという特徴以外神経内科専門医すら十分な知識を持たないことが多かったが、その臨床像を明らかにした。
2) 疾患分子病態の一部を解明できたため、同特長を用いた化合物スクリーニングに進むことが可能となった。
ガイドライン等の開発
ペリー症候群国際臨床診断基準の策定(現在論文投稿中)
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
本疾患をターゲットとした国際シンポジウムInternational Symposium on Motor Neuron Disease and Perry Syndrome in Tokyoを、平成23年2月22-23日に開催した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
1) Shiba-Fukushima K, Inoshita T, Hattori N, et al.
PINK1-mediated phosphorylation of Parkin boosts Parkin activity in Drosophila.
PLOS GENET , 10 , e1004861-  (2014)
原著論文2
Ishikawa K, Saiki S, Furuya N, et al.
p150glued-associated disorders are caused by activation of intrinsic apoptotic pathway.
PLOS ONE , 9 , e94645-  (2014)
原著論文3
Li Y, Sekine T, Funayama M, et al.
Clinicogenetic  study of GBA mutations in patients with familial Parkinson disease.
Neurobiol Aging , 35 , 935-  (2014)
原著論文4
Furuya N, Ikeda SI, Sato S, et al.
PARK2/Parkin-mediated mitochondrial clearance contributes to proteasome activation during slow-twitch muscle atrophy via NFE2L1 nuclear translocation.
Autophagy , 10 (4)  (2014)
原著論文5
Matsui H, Sato F, Sato S, et al.
ATP13A2 deficiency induces a decrease in cathepsin D activity, fingerprint-like inclusion body formation, and selective degeneration of dopaminergic neurons.
FEBS Lett , 587 (9) , 1316-1325  (2013)
原著論文6
Ogaki K, Li Y, Takanashi M, et al.
Analyses of the MAPT, PGRN, and C9orf72 mutations in Japanese patients with FTLD, PSP, and CBS.
Parkinsonism Relat Disord , 19 , 15-20  (2013)
原著論文7
Yoritaka A, Shimo Y, Takanashi M, et al.
Motor and non-motor symptoms of 1453 patients with Parkinson's disease: prevalence and risks.
Parkinsonism Relat Disord , 19 , 725-731  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2018-06-18

収支報告書

文献番号
201324123Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,700,000円
(2)補助金確定額
11,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,804,685円
人件費・謝金 0円
旅費 65,960円
その他 2,129,355円
間接経費 2,700,000円
合計 11,700,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
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