文献情報
文献番号
201324113A
報告書区分
総括
研究課題名
傍シルビウス裂症候群の病態に基づく疾患概念の確立と新しい治療法の開発に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-075
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 光広(山形大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 白石 秀明(北海道大学病院)
- 遠山 潤(国立病院機構西新潟中央病院)
- 荒井 洋(社会医療法人大道会森之宮病院 診療部)
- 鳥巣 浩幸(九州大学病院)
- 川村 孝(京都大学環境安全保健機構 健康科学センター)
- 加我 牧子(東京都東部療育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,539,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者の加我牧子が国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所から東京都東部療育センターに所属機関変更
研究報告書(概要版)
研究目的
傍シルビウス裂症候群は、シルビウス裂周辺の構造異常(多くは多小脳回)もしくは機能異常により、構語障害・嚥下困難・上肢優位の痙性麻痺をきたし、知能障害やてんかん発作・高次脳機能障害を併発する難治性疾患である。本年度の研究では、傍シルビウス裂症候群の診断基準の妥当性を検証し、疾患概念を確立することを目的とした。また、新規原因遺伝子の同定による分子レベルでの病態解明と、原因遺伝子と臨床情報の比較による疾患概念の確立、個別化医療の実現を目的として、次世代シーケンサーによる網羅的な遺伝子解析技術を導入した。先行研究の滑脳症では慶應義塾大学との共同研究でiPS細胞の樹立と神経系細胞への分化に成功した。傍シルビウス裂症候群においても、原因遺伝子が同定された症例のiPS細胞作製を目的とした。
研究方法
平成23,24年度に①先天性もしくは後天性両側性傍シルビウス裂症候群(BPSS)、②先天性核上性球麻痺(ウースター・ドロート症候群WDS)、③非定型良性小児部分てんかん(ABPE)、④悪性ローランド・シルビウスてんかん(MRSE)の4疾患について、国内の病院に対し層化無作為抽出による全国疫学調査を行い、本年度⑤ランドー・クレフナー症候群(LKS)を加えて、二次調査および三次結果に基づき診断基準を検証した。また、新しい治療法につながる病態解明のための原因遺伝子解析と、既存の治療薬による効果的な治療法開発のための臨床調査を行った。高解像度融解曲線分析(HRM)法で既知遺伝子(GPR56, SRPX2, SNAP29, EOMES, TUBA8, TUBB2B, TUBB3)の変異スクリーニングを行なった。既知遺伝子の変異が否定された症例は横浜市立大学と連携し、次世代シーケンサーによる全エクソーム解析を患者と両親のトリオ検体に対して行った。
結果と考察
BPSSは、頭部画像所見のクラスター解析によりシルビウス裂病変限局と厚脳回の有無で3群に分けられ、臨床像が異なっていた。WDSは、虚血による背側脳幹症候群と症状と神経生理所見が類似し、病態の共通性が示唆された。ABPEは脳磁図検査が病変同定と診断に有用であり、既存治療薬であるエトサクシマイドの発作消失効果が極めて高かった。MRSEは薬物では難治であり、手術療法の有効性が示された。LKSでは環境音弁別検査が比較的簡便に行え、視覚的補助があると成績が著しく向上した。BPSSの1例でSRPX2変異を同定し、母は保因者であった。前年度に同定したBPSSのGPR56変異例については疾患特異的iPS細胞樹立が開始された。
結論
各分担研究の結果に基づき、5疾患の診断基準の一部を改訂し疾患概念を確立した。孤発例でも遺伝性を示す例が存在し、原因同定による正確な遺伝相談が必要である。適切な診断と治療により症状の改善が得られる例があり、啓蒙が必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
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