特発性発汗異常症・色素異常症の病態解析と新規治療薬開発に向けた戦略的研究

文献情報

文献番号
201324077A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性発汗異常症・色素異常症の病態解析と新規治療薬開発に向けた戦略的研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-039
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
横関 博雄(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科皮膚科分野)
研究分担者(所属機関)
  • 玉田 康彦 (愛知医科大学皮膚科学 )
  • 佐藤 貴浩   (防衛医科大学校皮膚科 )
  • 渡邉 大輔(愛知医科大学皮膚科学     )
  • 佐々木 成(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科腎臓内科学分野 )
  • 水澤 英洋   (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学分野 )
  • 岩瀬 敏(愛知医科大学生理学講座)
  • 朝比奈 正人(千葉大学医学部神経内科)
  • 中里 良彦 (埼玉医科大学神経内科)
  • 中野 創 (弘前大学大学院医学研究科皮膚科学講座)
  • 室田 浩之 (大阪大学大学院医学系研究科皮膚科教室)
  • 佐野 健司 (信州大学医学部付属病院臨床検査部 )
  • 新関 寛徳 (国立成育医療センター皮膚科 )
  • 藤本 智子(田中 智子) (多摩南部地域病院皮膚科)
  • 鈴木 民夫         (山形大学医学部皮膚科学 )
  • 片山 一朗 (大阪大学大学院医学系研究科皮膚科教室)
  • 錦織 千佳子(神戸大学大学院医学系研究科皮膚科学)
  • 山下 英俊(山形大学医学部眼科学)
  • 佐野 栄紀(高知大学医学部皮膚科)
  • 西村 栄美(東京医科歯科大学難治疾患研究所 )
  • 深井 和吉(大阪市立大学大学院医学研究科臨床医科学専攻皮膚科学)
  • 川上 民裕 (聖マリアンナ医科大学皮膚科学)
  • 大磯 直毅(近畿大学医学部皮膚科学)
  • 佐藤 美保 (浜松医科大学眼科 )
  • 金田 眞理(大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学皮膚科学)
  • 川口 雅一(山形大学医学部皮膚科学)
  • 河野 通浩(名古屋大学大学院医学系研究科皮膚病態学)
  • 種村 篤(大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学皮膚科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今回、頭部・顔面多汗症のガイドラインを加え改正するために本年度ガイドライン委員会を開催する。発汗異常症の治療に関しては各種既存治療法の臨床効果をEBMの高い臨床研究にて検証する。脳血流シンチを用いて多汗症の脳における局在を突き止め前頭葉に血流増加が増加していることさらに症例数を増やして明らかにする。
研究方法
1)診療ガイドライン作成(平成25年度)(中里、朝比奈、玉田、渡邉、横関、片山、佐藤、藤本)
2)多汗症の診療指針に沿った保険医療体制の構築(平成25年度)(玉田、渡邉、横関、片山、藤本)
3)肥厚性皮膚骨膜症の新しい臨床分類の確立
4)発汗異常症の病態解析
①椎間板ヘルニアによる顔面半側多汗の解析
②光コヒーレントトモグラフィーによる汗のイメージング(横関、藤本)
③病因遺伝子決定
④SPECTによる病態解析
⑤汗腺におけるアクアポリン3の発現動態と役割
⑥ビデオ・マイクロスコープによる発汗の解析
⑦ヒスタミンによるアセチルコリン性発汗の抑制機序の解析
⑧AIGAと非AIGAの汗腺におけるアセチルコリンレセプター(M3)発現の比較検討
結果と考察
結果
1)2)診療ガイドライン作成と保健医療体系の構築
顔面以外の原発性局所多汗症の診療ガイドラインはすでに策定(田中智子ほか:原発性局所多汗症ガイドライン、日皮雑誌120(8),1607,2010)。今年度、顔面多汗症診療ガイドライン作成委員会を2回開催後、ガイドラインの改正を行った。その結果、頭部。顔面多汗症治療アルゴリズムを作成した。
結論
今年度で原発性局所多汗症診療ガイドラインの改正ができ頭部・顔面多汗症の治療アルゴリズムも加えられたことは意義がある。また、塩化アルミニウム外用療法の臨床治験が始まったことは第一選択枝である外用療法が保険診療内で可能になる点において意味のあることである。また、新しい発汗機能検査法として、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)が応用できる可能性が示唆された点は臨床的に有意義な結果である。さらに、ビデオ・スコープを用いて汗腺活動を記録し、画像解析ソフトを用いて経時的に個々の汗腺の活動を評価する方法を開発された.この非侵襲的な方法は、汗腺活動の神経調節機序を解明するのに役立つ可能性がある.多汗症の病態解析ではストレス負荷時に健常者では前頭葉の血流低下を認めるのに対し、多汗症患者では増加することより、交感神経系の興奮を介して発汗異常を惹き起こしている可能性が示唆された。暗調細胞はPAS陽性の糖蛋白で構成される顆粒を豊富に含み、汗に含まれる微量な物質、すなわち免疫物質、サイトカイン、上皮増殖因子 (EGF)等を産生する細胞であると予想される。AQP3がこれらの物質の産生機構に関わる可能性が推察された。後天性特発性全身性無汗症(AIGA)の発症原因の候補分子であるムスカリニックアセチルコリンレセプターtype 3(M3)の発現は、AIGA例で相対的に低下しているものが多く、AIGAの病因の可能性を示唆している。ヒスタミンがアセチルコリン作動性発汗を抑制する機所が解明されたことは、特発性全身性無汗症の病態へのヒスタミンの関与を検討するとともに、H1受容体拮抗治療の有用性を検証していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201324077B
報告書区分
総合
研究課題名
特発性発汗異常症・色素異常症の病態解析と新規治療薬開発に向けた戦略的研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-039
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
横関 博雄(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科皮膚科分野)
研究分担者(所属機関)
  • 玉田 康彦 (愛知医科大学皮膚科学 )
  • 佐藤 貴浩 (防衛医科大学校皮膚科 )
  • 渡邉 大輔 (愛知医科大学皮膚科学 )
  • 佐々木 成 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科腎臓内科学分野 )
  • 水澤 英洋 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学分野 )
  • 岩瀬 敏 (愛知医科大学生理学講座  )
  • 朝比奈 正人  (千葉大学医学部神経内科 )
  • 中里 良彦(埼玉医科大学神経内科   )
  • 中野 創 (弘前大学大学院医学研究科皮膚科学講座)
  • 室田 浩之 (大阪大学大学院医学系研究科皮膚科教室)
  • 佐野 健司 (信州大学医学部付属病院臨床検査部 )
  • 新関 寛徳 (国立成育医療センター皮膚科 )
  • 藤本 智子(田中 智子)(多摩南部地域病院皮膚科)
  • 鈴木 民夫  (山形大学医学部皮膚科学)
  • 片山 一朗(大阪大学大学院医学系研究科皮膚科教室 )
  • 錦織 千佳子 (神戸大学大学院医学系研究科皮膚科学 )
  • 山下 英俊 (山形大学医学部眼科学)
  • 深井 和吉 (大阪市立大学大学院医学研究科臨床医科学専攻皮膚科学 )
  • 川上 民裕 (聖マリアンナ医科大学皮膚科学 )
  • 大磯 直毅 (近畿大学医学部皮膚科学 )
  • 金田 眞理 (大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学皮膚科学 )
  • 川口 雅一 (山形大学医学部皮膚科学 )
  • 河野 通浩(名古屋大学大学院医学系研究科皮膚病態学 )
  • 種村 篤(大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学皮膚科学)
  • 佐野 栄紀 (高知大学医学部皮膚科 )
  • 西村 栄美(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
  • 佐藤 美保(浜松医科大学眼科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚労省研究班にて原発性局所多汗症の診断基準、重症度基準、診療ガイドラインを作成(田中智子、日皮雑誌、2010)。今後、頭部・顔面多汗症のガイドラインも作成するために本年度ガイドライン委員会を開催。発汗異常症の治療に関しては各種既存治療法の臨床効果をEBMの高い臨床研究にて検証した。
研究方法
1)診療ガイドライン作成(平成24-25年度)(中里、朝比奈、玉田、渡邉、横関、片山、佐藤、藤本)
2)多汗症の診療指針に沿った保険医療体制の構築(平成24-25年度)(玉田、渡邉、横関、片山、藤本)
3)肥厚性皮膚骨膜症の新しい臨床分類の確立
4)発汗異常症の病態解析(平成24-25年度)(中里、朝比奈、玉田、渡邉、横関、片山、佐藤、藤本、井上、岩瀬)
①特発性後天性全身性無汗症((AIGA)の電気生理学的な病態の解析(玉田、岩瀬、朝比奈)
②病因遺伝子決定(横関、中野、佐々木、新関)
③SPECTによる病態解析班(藤本、水澤)
④汗腺におけるアクアポリン3、5の発現動態と役割(横関、佐々木)
⑤光コヒーレントトモグラフィーによる汗のイメージング(横関、藤本)
⑥ヒスタミンによるアセチルコリン性発汗の抑制機序の解析
結果と考察
頭部・顔面多汗症を加えた原発性局所多汗症の診療ガイドラインはすでに改正後印刷中。特発性全身性無汗症の診療ガイドラインも策定された。また、多汗症に関するQ and Aを作製して日本皮膚科学会ホームページに掲載準備中であり幅広く社会に認知されるように努力している。塩化アルミニウム療法、ボトックス療法は保険適応外のため、療法の有効性に関し有効性を確認。ボトックス療法は保険適応になった。外用療法は保険適応申請予定。多汗症・無汗症の診療ガイドラインを策定されたことは現在まで無治療に近い状態で放置されていた現状を改善可能にした。ガイドライン策定による標準治療の一般化により社会の労働生産性も向上する。新規に集積した患者家系において遺伝子多型マーカーを用いてハプロタイプ解析を行ている。脳血流シンチ(SPECT)により発汗誘発刺激により掌蹠多汗症の前頭葉の血流が増加し発汗量と正の相関にあることを認めた。将来的に前頭葉の血流をターゲットとした抗てんかん薬などの開発により新規治療法が期待できる。ヒト、マウスのエクリン汗腺の分泌部にアクアポリン5が発現し発汗増加したときにアクアポリン5が細胞質からappicalに移動し重要な役割を果たすことを解明した(JDS ,2013)。
結論
今年度で原発性局所多汗症診療ガイドラインの改正ができ頭部・顔面多汗症の治療アルゴリズムも加えられたことは意義がある。また、塩化アルミニウム外用療法の臨床治験が始まったことは第一選択枝である外用療法が保険診療内で可能になる点において意味のあることである。また、新しい発汗機能検査法として、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)が応用できる可能性が示唆された点は臨床的に有意義な結果である。さらに、ビデオ・スコープを用いて汗腺活動を記録し、画像解析ソフトを用いて経時的に個々の汗腺の活動を評価する方法を開発された.この非侵襲的な方法は、汗腺活動の神経調節機序を解明するのに役立つ可能性がある.多汗症の病態解析ではストレス負荷時に健常者では前頭葉の血流低下を認めるのに対し、多汗症患者では増加することより、交感神経系の興奮を介して発汗異常を惹き起こしている可能性が示唆された。暗調細胞はPAS陽性の糖蛋白で構成される顆粒を豊富に含み、汗に含まれる微量な物質、すなわち免疫物質、サイトカイン、上皮増殖因子 (EGF)等を産生する細胞であると予想される。AQP3がこれらの物質の産生機構に関わる可能性が推察された。後天性特発性全身性無汗症(AIGA)の発症原因の候補分子であるムスカリニックアセチルコリンレセプターtype 3(M3)の発現は、AIGA例で相対的に低下しているものが多く、AIGAの病因の可能性を示唆している。ヒスタミンがアセチルコリン作動性発汗を抑制する機所が解明されたことは、特発性全身性無汗症の病態へのヒスタミンの関与を検討するとともに、H1受容体拮抗治療の有用性を検証していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201324077C

成果

専門的・学術的観点からの成果
特発性後天性全身性無汗症の機序に関してはムスカリニックアセチルコリンレセプターtype 3(M3)の発現が、AIGA例で相対的に低下しているものが多いことが明らかになった。原発性掌蹠多汗症患者では前頭葉の血流増加が症例数を増加して確認。新規治療法の開発を念頭にして、日本人OCA1のナンセンス変異R278Xをもつチロシナーゼ遺伝子、および野生型チロシナーゼを定常的に発現する細胞株を3種類確立。遺伝性対側性色素異常症の第2の原因遺伝子を明らかにする目的で、ADAR1に変異を認めない家系の試料を収集。
臨床的観点からの成果
今年度、多汗症診療ガイドライン改正作成委員会による新しいガイドラインを策定。現在、日本皮膚科学会雑誌に投稿中。特発性全身性無汗症の診療ガイドラインも策定された(自律神経雑誌、2013年3月号)。遺伝性色素異常症の発症率、予後、治療・生活指導実態を把握。眼皮膚白皮症をはじめ、脱色素性母斑や結節性硬化症の報告が多く、新知見であった。実践的な治療と生活指導ガイドラインを眼皮膚白皮症について作成した。眼科医と共同で眼症状についての指導のためのガイドラインも作成したことより、皮膚科医にとっては有益。
ガイドライン等の開発
【特発性後天性全身性無汗症診療ガイドライン】 自律神経49巻4号2012年

【原発性局所多汗症診療ガイドライン2014年改訂版】

【尋常性白斑診療ガイドライン】日皮会誌122(7),1725-1740 2012年

【Guidelines for the diagnosis and treatment of vitiligo in Japan】 Journal of Dermatology 2013;40:344-354

【眼皮膚白皮症診療ガイドライン】
その他行政的観点からの成果
多汗症・無汗症の診療ガイドラインを策定されたことは現在まで無治療に近い状態で放置されていた(原発性多汗症患者の90%以上が医療機関への受診歴なし)現状を改善可能。重症原発性局所多汗症患者の労働生産性は48%も損失していることが報告されておりガイドライン策定による標準治療の一般化により社会の労働生産性も向上。また、眼皮膚白皮症については、実践的な治療と生活指導のためのガイドラインをまとめ、現在公表準備中。このガイドライン公表により、適切な医療が受けられていない“眼皮膚白皮症難民“を救済できる。
その他のインパクト
1. 横関博雄:朝日新聞2011年8月3日:帰ってきたモンジロー「たっぷり汗をかき夏を元気に」
2. 横関博雄:朝日新聞2011年8月6日:元気の秘訣:汗をいとわず洗いすぎない「夏の汗と肌のトラブル対策」
3. 横関博雄:日刊ゲンダイ2012.8.16 多汗症「安易に手術に飛びついては行けない」
4. 横関博雄協力:ニュートン.意外と知らない「汗」のこと2012.8.102-107

発表件数

原著論文(和文)
16件
原著論文(英文等)
99件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
41件
学会発表(国際学会等)
35件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fujimoto T, Kawahara K, Yokozeki H.
Epidemiological study and considerations of primary focal hyperhidrosis in Japan: From questionnaire analysis
J Dermatol. , 40 (11) , 886-890  (2013)
原著論文2
Inoue R, Sohara E, Rai T, Satoh T, Yokozeki H, Sasaki S, Uchida S.
Immunolocalization and translocation of aquaporin-5 water channel in sweat glands
J Dermatol Sci. , 70 (1) , 26-33  (2013)
原著論文3
Oiso N, Suzuki T, Wataya-Kaneda M, et al
Guidelines for the diagnosis and treatment of vitiligo in Japan.
J Dermatol , 40 (5) , 344-354  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2017-06-13

収支報告書

文献番号
201324077Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
58,500,000円
(2)補助金確定額
58,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 29,094,204円
人件費・謝金 5,176,182円
旅費 3,708,927円
その他 6,918,060円
間接経費 13,500,000円
合計 58,397,373円

備考

備考
見積額より実際の請求額の方が安価であったため、差額が生じた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-