文献情報
文献番号
201324068A
報告書区分
総括
研究課題名
急性網膜壊死の診断基準に関する調査研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-030
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
望月 學(東京医科歯科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 高瀬 博(東京医科歯科大学 医学部)
- 後藤 浩(東京医科大学 医学部)
- 岡田 アナベル あやめ(杏林大学 医学部)
- 大黒 伸行(大阪厚生年金病院)
- 水木 信久(横浜市立大学)
- 園田 康平(山口大学)
- 南場 研一(北海道大学)
- 冨田 誠(東京医科歯科大学 臨床試験管理センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
急性網膜壊死は網膜に生じた壊死病巣が急速に進行し、続発性網膜剥離や視神経萎縮により失明する疾患で、予後は極めて不良である。単純ヘルペスウイルス1型・2型、または水痘帯状疱疹ウイルスの眼内感染が原因と考えられている。本疾患は極めて稀な疾患であり、その実態の詳細は不明である。早期診断、早期治療のために必要な診断基準がなく、失明に至る症例が非常に多い。本研究は、我が国における急性網膜壊死の実態調査と治療指針作成に向けて基盤となる診断基準を作成する事を目的とした多施設協同研究である。
研究方法
平成23年度に作成・平成24年度に改訂した急性網膜壊死の診断基準に基づいて、全国大学病院眼科を対象に後ろ向き向き調査研究を行った。調査内容には、急性網膜壊死の診断基準に合致し急性網膜壊死の確定診断群または臨床診断群に分類された患者数、それらの患者について診断基準に挙げられている眼所見6項目、経過5項目、検査2項目の合致の有無に加え、それぞれの患者の視力予後、急性網膜壊死に対する各施設の治療内容を含む。
急性網膜壊死の診断基準には、眼内液を用いてヒトヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型、2型、水痘帯状疱疹ウイルス)のDNAを検査するシステムを診断に取り入れる。DNA検査には、ヒトヘルペスウイルスを網羅的に検出する定性マルチプレックスPCRと、ウイルス量を測定する定量リアルタイムPCRを組み合わせて行う。
この後ろ向き調査研究の結果を用いて、本邦における急性網膜壊死の実態として報告するとともに、現在行われている治療内容についての共通のコンセンサスを確立し、治療指針を作成する。
急性網膜壊死の診断基準には、眼内液を用いてヒトヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型、2型、水痘帯状疱疹ウイルス)のDNAを検査するシステムを診断に取り入れる。DNA検査には、ヒトヘルペスウイルスを網羅的に検出する定性マルチプレックスPCRと、ウイルス量を測定する定量リアルタイムPCRを組み合わせて行う。
この後ろ向き調査研究の結果を用いて、本邦における急性網膜壊死の実態として報告するとともに、現在行われている治療内容についての共通のコンセンサスを確立し、治療指針を作成する。
結果と考察
全国調査研究には、研究班員の所属する7施設に加えて、全国33の大学病院および基幹病院が参加した。これらの施設で調査対象となった急性網膜壊死患者は、101名だった。これを前年度に行った後ろ向き調査研究結果に加え、急性網膜壊死患者148名、対照疾患患者409名として、これらの臨床所見のデータから「急性網膜壊死の診断基準」の診断パラメータを算出した。その結果、感度は80.0%、特異度は100%、PPV 100%、NPV 93.0%となり、感度は約8割と7施設での検討に比べて低下したものの高い診断パラメータを示し、本診断基準が妥当なものである事が示された。各施設で急性網膜壊死と診断したものの本診断基準に合致しなかった症例は、そのほとんどで網膜病変が診断基準と不一致であった事に起因していた。また、硝子体混濁が強いために眼底の観察ができなかったもの、前房や角膜に全く炎症所見がみられなかったものなども診断基準を見たさなかった。
今回の全国調査では、各施設における急性網膜壊死の治療法についても調査を行った。その結果、アシクロビルの点滴が83.6%、バラシクロビルの内服が77.1%、ステロイドの全身投与が94.3%の症例で施行され、これらが急性網膜壊死に対する治療の主流である事が明らかとなった。また、アスピリン内服は65.7%で行われた。少数に対する治療例としては、アシクロビルやガンシクロビルの硝子体注射は5.7%で施行され、またガンシクロビル点滴が2,1%、バルガンシクロビルの内服が1.4%で行われた。硝子体手術は、全体の84.3%で施行された。これらの結果を基に、急性網膜壊死の治療ガイドラインを現在作成中である。しかし、硝子体手術の適切な施行時期およびその方法には未だ議論の余地が多く残されており、今後の研究課題であると言える。
今回の全国調査では、各施設における急性網膜壊死の治療法についても調査を行った。その結果、アシクロビルの点滴が83.6%、バラシクロビルの内服が77.1%、ステロイドの全身投与が94.3%の症例で施行され、これらが急性網膜壊死に対する治療の主流である事が明らかとなった。また、アスピリン内服は65.7%で行われた。少数に対する治療例としては、アシクロビルやガンシクロビルの硝子体注射は5.7%で施行され、またガンシクロビル点滴が2,1%、バルガンシクロビルの内服が1.4%で行われた。硝子体手術は、全体の84.3%で施行された。これらの結果を基に、急性網膜壊死の治療ガイドラインを現在作成中である。しかし、硝子体手術の適切な施行時期およびその方法には未だ議論の余地が多く残されており、今後の研究課題であると言える。
結論
急性網膜壊死の診断基準を作成、改訂した。後ろ向き全国調査研究により、本診断基準は妥当性の高いものである事が示された。現在、本診断基準に基づき治療指針を作成中である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
-