原発性免疫不全症候群患者支援団体による患者レジストリの構築を通した研究支援体制の構築に関わる研究

文献情報

文献番号
201324060A
報告書区分
総括
研究課題名
原発性免疫不全症候群患者支援団体による患者レジストリの構築を通した研究支援体制の構築に関わる研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-022
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
今井 耕輔(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 小児・周産期地域医療学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 野々山 恵章(防衛医科大学校 小児科)
  • 宮脇 利男(富山大学・富山市立富山市民病院)
  • 原 寿郎(九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野)
  • 小原 收(公益財団法人かずさDNA 研究所ヒトゲノム研究部門)
  • 佐藤 弘樹(防衛医科大学校病院医療情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
原発性免疫不全症(PID)患者支援団体であるNPO法人PIDつばさの会により個人電子医療記録機能を持つ患者レジストリPierを構築し、患者背景、病歴、治療経過に関する情報を、自ら収集、分析し、既存のPIDJネットワークに提供することで、研究を加速し、より効果的な診療に役立て、患者の予後を改善することを目的とした。
研究方法
 平成24年度、NPO 法人 PID つばさの会の患者理事が中心となり、医師理事である研究代表者、分担者と共同で、Pierサイトおよびデータベースを構築した(http://pier.kazusa.or.jp/pier/jsp/)。PID患者支援団体「PIDつばさの会」の患者理事らとの会合などにより、患者や患者家族が感じている現状の問題点やニーズを調査した。
その中で、Pierに記載が必要な項目や画面構成、ユーザー権限などについて、検討を行った。
患者団体側からニーズの高かった掲示板機能、アンケート機能の実装、サポーターの追加を行った。
また、Pierに登録した患者のデータを分析することにより、治療効果について検討した。PID中央診断登録システムであるPrimary Immunodeficiency Database in Japan (PIDJ)に登録された患者数、疾患種類など臨床情報も解析した。
なお、本研究では、診療施設あるいは患者より情報提供を受け、問題点の抽出等の作業を行うため、患者の人権擁護のために情報管理などに十分の配慮を行った。患者氏名などの個人情報は情報管理者のもと、連結可能匿名化されて厳重に管理されている。
結果と考察
 Pierサイトのデザイン変更を行い、患者、および患者家族が親しみやすいインターフェースを構築した。
 さらに、スマートフォン、タブレットでの入力が可能なようにデザインを変更した。
 Pierユーザーとして、58人の登録があった。北海道から九州まで全国に分布しており、遠隔医療としての側面としても有用であると考えられた。
 日々3回熱型、身体症状を登録している自己炎症症候群のユーザーもあり、その患者での解析を行ったところ、新しい薬剤の投与を境に高熱が減少し、登校が可能になっており、治療効果の判定にも半客観的基準として利用が可能なことが明らかになった。
 掲示板機能を2013/12に実装した。それに合わせて、新しいユーザータイプとしてサポーターを新設した。これは、掲示板機能が利用可能な患者家族、友人、医療関係者などからなるユーザータイプである。サポーターは、患者のからだの記録、プロフィールなどの患者情報にはアクセスできないが、掲示板を通し、患者を勇気づけたり、アドバイスを与えたりすることが可能である。すでに11人のサポーターの登録があり、掲示板機能も動き出している。
 2014/1には、アンケート機能を実装した。これにより、QOL評価項目をユーザーに聞くことにより、リアルタイムにQOL調査等が可能になると考えられる。 患者とその家族において、患者の日常の生活の記録を管理するのみならず、患者や患者家族同士での意見交換や交流の場としての機能の重要性が示された。
また、日々の入力の結果得られる情報をもとに解析することにより、客観的に患者の状態を把握することが可能になった。これにより、治療効果の判定に利用できた例もあり、今後、積極的に患者さんがデータを入れてくれることを促すことで、研究の促進と同時に臨床的な効果も上がることが期待された。
 PIDJは原発性免疫不全症候群の中央診断登録システムとして活用されていると考えられた。臨床情報、診断名、治療、予後などでソートできるシステムになっており、解析が容易である点も患者の把握という点でメリットが大きい。サンプルも保存されており、新規遺伝子が同定されたときに遺伝子診断が容易にできた例もあった。また、Exome解析などで新規遺伝子を同定することにも応用可能である。
 ただし、入力漏れがあり、必須入力項目を増やす必要性があると考えられた。また、患者情報の系時的な入力が必要であり、入力を促す新たな方式を考案する必要もあると考えられた。
患者が自身で入力するPierシステムからの入力の補完が可能になれば、より情報量が増え、有用性が高まると考えられた。
結論
 本システムは、患者のQOL向上に向けて大変有用であると考えられ、今後も継続運営を行い、Pier登録者数の増加、利用頻度の増進、PIDJデータ、遺伝子解析データとの連係が重要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201324060B
報告書区分
総合
研究課題名
原発性免疫不全症候群患者支援団体による患者レジストリの構築を通した研究支援体制の構築に関わる研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-022
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
今井 耕輔(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 小児・周産期地域医療学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 野々山 恵章(防衛医科大学校 小児科)
  • 宮脇 利男(富山大学・富山市立富山市民病院)
  • 原 寿郎(九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野)
  • 小原 收(公益財団法人かずさDNA 研究所ヒトゲノム研究部門)
  • 佐藤 弘樹(防衛医科大学校病院医療情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 原発性免疫不全症候群(PID)は、免疫系に生まれつき異常を示す疾患群であり、約200以上の病型の遺伝子異常が明らかになっているが、ひとつひとつの病型の症例数は稀少であり、原因不明の例も少なくない。易感染性以外にも、様々な合併症に苦しめられている患者も多い。
 今回の研究では、研究代表者・分担研究者および研究協力者が理事であるPID患者支援団体NPO法人PIDつばさの会により個人電子医療記録機能を持つ患者レジストリ"Pier":Primary Immunodeficiency electronic recordを構築し、患者情報、病歴、治療経過に関する情報を、より詳細かつリアルタイムに、既存の専門医、一般医で構築した免疫不全症の診断のための全国規模のネットワーク(PIDJネットワーク)に提供することで、効果的な診療に役立て、研究を加速し、患者の予後を改善することを目的とした。
研究方法
 本研究班では、患者および患者家族が、症状の経過、検査データや治療、生活の様子を記録し、自己管理するために利用可能な個人電子医療記録機能を持つ患者レジストリPierをかずさDNA研究所(KDRI)内のセキュアサーバー上に新たに構築した(http://pier.kazusa.or.jp/pier/jsp/)。
 PIDつばさの会の患者理事らとの会合などにより、患者や患者家族が感じている現状の問題点やニーズを調査し、その中で、Pierに記載が必要な項目や画面構成、ユーザー権限などについて、検討を行い、患者団体側からニーズの高かった掲示板機能、アンケート機能の実装、サポーターの追加を行った。  また、Pierに登録した患者のデータを分析することにより、治療効果について検討した。さらに、PIDJに登録された患者数、疾患種類など臨床情報を解析した。
 本研究では、診療施設あるいは患者より情報提供を受け、問題点の抽出等の作業を行うため、患者の人権擁護のために情報管理などに十分の配慮を行った。患者氏名などの個人情報は情報管理者のもと、連結可能匿名化されて厳重に管理されている。
結果と考察
 Pierレジストリは、説明書を読み同意した患者のみ匿名化した情報の登録が可能であり、その機能(基本情報に加え、受診歴、症状の変化、検査歴、治療内容、など)を利用することが可能となる。なお、匿名化したデータについては、統計解析等に利用可能である。
 24年度は、PIDつばさの会(会員数140名前後)を通じて、登録を呼びかけたが、構築準備に時間がかかったこと、修正の必要な部分があることから、登録は限定的であった(約25例)。年度末にかけて、PierおよびPIDに関する周知ポスターを配布し、PIDつばさの会の医療講演会、勉強会、会報、ホームページ等を通じて周知したところ、25年度末時点で、2倍以上の58人の登録となった。患者は、北海道から九州まで全国に分布しており、遠隔医療としての側面としても有用であると考えられた。
 25年度には、Pierサイトのデザイン変更を行い、患者、および患者家族が親しみやすいインターフェースを構築した。さらに、スマートフォン、タブレットでの入力が可能なようにデザインを変更した。
 日々3回熱型、身体症状を登録しているユーザーもあり、その患者での解析を行ったところ、新しい薬剤の投与を境に高熱が減少し、登校が可能になっていたことが判明した。治療効果の判定にも半客観的基準として利用が可能なことが明らかになった。
 掲示板機能も実装した。それに合わせて、新しいユーザータイプとしてサポーターを新設した。これは、掲示板機能が利用可能な患者家族、友人、医療関係者などからなるユーザータイプである。サポーターは、患者のからだの記録、プロフィールなどの患者情報にはアクセスできないが、掲示板を通し、患者を勇気づけたり、アドバイスを与えたりすることが可能である。すでに11人のサポーターの登録があり、掲示板機能も動き出している。
 また、アンケート機能を実装した。これにより、QOL評価項目をユーザーに聞くことにより、リアルタイムにQOL調査等が可能になると考えられる。
 PIDJには2987例が登録されていた。年令では小児から成人まで、地域では日本全国から登録されていた。疾患種類も国際分類で示されている大分類がほぼ登録されていた。患者が自身で入力するPierシステムからの入力の補完が可能になれば、より情報量が増え、有用性が高まると考えられた。
結論
 本システムは、患者のQOL向上に向けて大変有用であると考えられ、今後も継続運営を行い、Pier登録者数の増加、利用頻度の増進、PIDJデータ、遺伝子解析データとの連係が重要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201324060C

成果

専門的・学術的観点からの成果
患者および患者家族が経時的に患者臨床情報を入れていき、遺伝子解析情報と結合解析することができるのは、世界的にPierのみであり、その臨床像の解析と原因遺伝子の同定を組み合わせることにより、より詳細な記載、問題点の把握、治療への応用のヒントが得られるしくみである。
PID患者サンプルを保存するシステムは世界的にPIDJのみであり、Exome解析による遺伝子同定、遺伝子診断などに応用出来る点は国際的にみても優れている。
臨床的観点からの成果
順調に患者登録が進んでいて、現在134人の患者が登録し、利用している。
新規遺伝子同定により遺伝子診断ができるようになれば、診断可能な疾患が増え、さらに患者情報から病態との関連も明らかにする事ができるため、臨床的意義も大きい。今後は、Pierとの連携が進めばさらに有用な情報が増えると考えられる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
かずさ DNA 研究所/産総研 生命情報工学研究センター共催ワークショップ「バイオインフォマティクスとゲノム医療 ─その課題と将来展望」にて、講演を行った。第2回先天代謝異常症患者会フォーラムにて講演を行った。患者会総会にて、説明会を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
14件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yang X, Kanegane H, Nishida N,et al.
Clinical and genetic characteristics of XIAP deficiency in Japan.
J Clin Immunol , 32 , 411-420  (2012)
10.1007/s10875-011-9638-z
原著論文2
Nozaki T, Takada H, Ishimura M, et al.
Endocrine complications in primary immunodeficiency diseases in Japan.
Clin Endocrinol , 77 , 628-634  (2012)
10.1111/j.1365-2265.2012.04390.x.
原著論文3
Nakaoka H, Kanegane H, Taneichi H, et al.
Delayed onset adenosine deaminase deficiency associated with acute disseminated encephalomyelitis.
Int J Hematol , 95 , 692-696  (2012)
10.1007/s12185-012-1055-4.
原著論文4
Kanegane H, Yang X, Zhao M,et al.
Clinical features and outcome of X-linked lymphoproliferative syndrome type1 (SAP deficiency) in Japan identified by the combination of flow cytometric assay and genetic analysis.
Pediatric Allergy & Immunollogy , 23 , 488-493  (2012)
10.1111/j.1399-3038.2012.01282.x.
原著論文5
Kanegane H, Taneichi H, Nomura K, et al.
Successful bone marrow transplantation with reduced intensity conditioning in a patient with delayed-onset adenosine deaminase deficiency.
Pediatr Transplant , 17 , E29-E32  (2013)
10.1111/j.1399-3046.2012.01762.x.
原著論文6
Wada T, Muraoka M, Toma T, et al.
Rapid detection of intracellular p47phox and p67phox by flow cytometry; useful screening tests for chronic granulomatous disease.
J Clin Immunol , 33 , 857-864  (2013)
10.1007/s10875-012-9859-9.
原著論文7
Mizoguchi Y, Tsumura M, Okada S, et al.
Simple diagnosis of STAT1 gain-of-function alleles in patients with chronic mucocutaneous candidiasis.
J Leukoc Biol , 95 , 667-676  (2014)
10.1189/jlb.0513250.

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2017-06-15

収支報告書

文献番号
201324060Z