小児希少難病の患者家族会ネットワークを活用した患者臨床情報バンクの構築とその創薬等への活用

文献情報

文献番号
201324055A
報告書区分
総括
研究課題名
小児希少難病の患者家族会ネットワークを活用した患者臨床情報バンクの構築とその創薬等への活用
課題番号
H24-難治等(難)-一般-017
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
奥山 虎之(独立行政法人国立成育医療研究センター 臨床検査部)
研究分担者(所属機関)
  • 井田 博幸(東京慈恵会医科大学)
  • 遠藤 文夫(熊本大学大学院)
  • 酒井 規夫(大阪大学大学院)
  • 清水 教一(東邦大学医療センター大橋病院)
  • 高柳 正樹(千葉県こども病院)
  • 土田 尚(国立成育医療研究センター)
  • 難波 栄二(鳥取大学生命機能研究支援センター)
  • 大竹  明(埼玉医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまで日本は新薬の国際共同治験に参加できず、欧米での承認後、国内臨床開発に着手するため、深刻なドラッグラグ問題が生じていた。そのような状況で、ムコ多糖症IV型酵素製剤の第3相国際共同治験に参加することができたのは日本ムコ多糖症親の会が把握している患者リストから日本人患者の現状を調査した報告書をもとに、酵素製剤開発企業と交渉したことによる。このことは、患者家族会が積極的に臨床情報を収集することで、新薬の早期承認などに貢献できる可能性を示している。これまでの患者登録・フォローアップ事業はその多くが学会や研究班の活動として医師主導で行われたため、長期間継続できず登録数が少ないという限界があった。上記の背景を考慮し、日本先天代謝異常学会と患者家族会のネットワークが主体となり『先天代謝異常症臨床情報バンク(MC-Bank)』を構築し、新規治療薬および早期診断法の開発等の研究に役立てることを目的とする。
研究方法
(1)疾患登録シートの作成と内容:昨年度に引き続き、疾患登録シートは専門医と患者家族会が共同で作成した。18疾患を対象に、医学的、統計学的に信頼性の高いデータが得られるよう修正を行った。なお、疾患登録シートは経年的な変化を観察できるよう定期的に同一患者に配布できるものとした。(2)疾患登録シートの配布と回収:完成した疾患登録シートは、本研究事業に協力している各患者家族会から患者に郵送または直接配布した。疾患登録シート、直接患者から事務局にて回収した。(3)登録情報データの入力と管理:膨大な患者情報を効率よくMC-Bankに登録し、安全に保存、体系的に運用するため、事務局である国立成育医療研究センター内にサーバーを設置し、MC-Bankに特化したデータ入力及び管理ツールを開発した。患者から収集した情報は、サーバーに入力し、院内セキュリティーにより安全性が確保されている状態で保管、管理した。本研究事業は、臨床研究に関する倫理指針および疫学研究に関する倫理指針に準拠し、倫理委員会の承認を得て開始している。
結果と考察
(1)「フォーラム」の開催:本研究事業の推進母体とするため、昨年に引き続き「第2回先天代謝異常症患者会フォーラム」を開催し、総勢117名が参加した。(2)疾患登録シートの作成:疾患登録シートを2本立てとし、はじめに共通項目を検討した。特に、医療上必要な情報だけでなく、患者・家族の日常生活上の問題が明らかになるような質問項目を設定した。個々の疾患の特性を考慮した疾患別項目については、家族会代表と専門医でチームを作り、登録シートを作成した。対象疾患は18疾患とし、Krabbe病と異染性白質ジストロフィーの登録シートは共通制作し、合計17の登録シートが完成した。(3)説明資料のリニューアル:MC-Bankに対する患者の理解度を高め、効果的に登録数を増やすため、MC-Bank登録に関する患者配布用説明資料を全面的にリニューアルした。前のバージョンと比べ、文字数を減らし、イラストと図を増やし見やすく分かりやすい資料に仕上げた。(4)専用ホームページの作成;MC-Bank登録事業の周知と登録者への情報提供の手段として専用ホームページ(www.jasmin-mcbank.com)を作成した。MC-Bank登録方法と内容、研究班組織、協力患者家族会情報、登録に関するQ&Aなどを掲載した。(5)登録データの集計:平成25年11月から現在まで、登録シートの合計配布数は、1280部、回収数は531部、回収率は41.5%であった。回収した531部のうち、男性患者は293名(55.2%)、女性患者は236名(44.4%)、未記入2名(0.4%)で、患者の平均年齢は21.7歳で、20歳未満の小児患者が全体の56.1%を占め、小児期に多く発症する先天代謝異常症の特徴を表している。地域分布をみると、東京都、神奈川県、埼玉県を中心とした関東地方と愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県、広島県の患者登録が多かった。これは東京を拠点として活動している患者家族会が多いことから、患者家族会に加入している患者も関東地域に集中しているためだと思われる。登録シートの回収は現在も続いており、回収率はさらに上がると思われる。医師主導で行われた従来の登録システムに比べ、本登録事業の回収率が高いのは、患者家族会が積極的に参加し、登録へのモチベーションを高めたことが主な理由と考えられる。今後は、先天代謝異常症の最新治療、研究に関する情報や登録事業の進行状況についての情報をアップロードし、積極的に情報を発信していく予定である。
結論
第2回先天代謝異常症患者家族会フォーラム」を開催した。専門医と患者家族会が協力し、18疾患に対する17の登録シートが完成し、患者会を通じて配布と回収を開始し、患者データの登録を行った。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-25
更新日
-

文献情報

文献番号
201324055B
報告書区分
総合
研究課題名
小児希少難病の患者家族会ネットワークを活用した患者臨床情報バンクの構築とその創薬等への活用
課題番号
H24-難治等(難)-一般-017
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
奥山 虎之(独立行政法人国立成育医療研究センター 臨床検査部)
研究分担者(所属機関)
  • 井田 博幸(東京慈恵会医科大学小児科学講座)
  • 遠藤 文夫(熊本大学大学院生命科学研究部小児科学分野)
  • 酒井 規夫(大阪大学大学院医学系研究科小児科学)
  • 清水 教一(東邦大学医療センター大橋病院小児科学)
  • 高柳 正樹(千葉県こども病院小児科)
  • 土田 尚((独)国立成育医療研究センター総合診療部)
  • 難波 栄二(鳥取大学生命機能研究支援センター)
  • 大竹 明(埼玉医科大学小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまで日本は新薬の国際共同治験に参加できず、欧米での承認後、国内臨床開発に着手するため、深刻なドラッグラグ問題が生じていた。そのような状況で、ムコ多糖症IV型酵素製剤の第3相国際共同治験に参加することができたのは日本ムコ多糖症親の会が把握している患者リストから日本人患者の現状を調査した報告書をもとに、酵素製剤開発企業と交渉したことによる。このことは、患者家族会が積極的に臨床情報を収集することで、新薬の早期承認などに貢献できる可能性を示している。上記の背景を考慮し、日本先天代謝異常学会と患者家族会のネットワークが主体となり『先天代謝異常症臨床情報バンク(MC-Bank)』を構築し、新規治療薬および早期診断法の開発等の研究に役立てることを目的とする。
研究方法
(1)先天代謝異常症臨床情報バンクの構築:患者から得られた臨床情報を総合的に管理し、新規治療薬や早期診断法に関わる研究に有効活用するため、MC-Bankを構築する。(2)疾患登録シートの作成、配布、回収:18疾患を対象に疾患登録シートを専門医と患者家族会が共同で作成した。完成した疾患登録シートは、本研究事業に協力している各患者家族会から患者に郵送または直接配布し、疾患登録シートの回収は、直接患者から事務局に郵送で行った。(3)登録情報データの入力と管理:MC-Bank事務局である国立成育医療研究センター内にサーバーを設置し、患者から収集した情報を院内セキュリティーにより安全性が確保されている状態で保管、管理した。また本研究事業は、臨床研究に関する倫理指針および疫学研究に関する倫理指針に準拠し、倫理委員会の承認を得て行った。
結果と考察
(1)フォーラムの開催:登録制度の必要性と現状を伝え、登録を促すと同時に患者への情報提供の場として、1年に1回、先天代謝異常症患者家族会フォーラムを開催した。またMC-Bank登録事業の周知と登録者の情報入力手段として専用ホームページ(www.jasmin-mcbank.com)を作成した。(2)疾患登録シートの作成:疾患登録シートは、専門医と患者家族会が共同で作成し、すべての疾患に共通の共通項目と疾患に特有の疾患別項目を策定した。対象疾患は次の18疾患で、一部疾患の登録シートは共通制作し、合計17の登録シートが完成した。(3)登録データの集計:平成25年11月から現在まで、登録シートの合計配布数は、1280部、回収数は531部、回収率は41.5%であった。回収した531部のうち、男性患者は293名(55.2%)、女性患者は236名(44.4%)、未記入2名(0.4%)で、患者の平均年齢は21.7歳で、20歳未満の小児患者が全体の56.1%を占め、小児期に多く発症する先天代謝異常症の特徴を表している。地域分布をみると、東京都を中心とした関東地方と愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県、広島県の患者登録が多かった。これは東京を拠点として活動している患者家族会が多いことから、患者家族会に加入している患者も関東地域に集中しているためだと思われる。登録シートの回収は現在も続いており、回収率はさらに上がると思われる。医師主導で行われた従来の登録システムに比べ、本登録事業の回収率が高いのは、患者家族会が積極的に参加し、登録へのモチベーションを高めたことが主な理由と考えられる。本研究事業は2年間であり、先天代謝異常症臨床情報バンク(MC-Bank)が運用できるシステム構築を重点的に行った。MC-Bankのような患者登録や実態調査は、希少疾患の新規治療法を検討する際に必要不可欠な情報となる。本研究事業で確立したような統一的な枠組みで多くの疾患を一括して登録するシステムは、国際的にも例がなく、その学術的・国際的意義は大きい。今後、MC-Bankに登録された疾患情報の収集が進むと、新薬開発などの新たな臨床研究のシーズ(データベース)が利用可能となることが中長期的には期待される。また、本研究事業を通して、複数の患者会が一致協力し事業を展開したことにより、患者会相互の連携や患者会と専門医の連携が密接なものとなった。将来的には、患者家族会の国際交流が発展することにより、欧米の患者家族会が進める研究者への助成制度の日本での導入も可能となり、新規治療法や早期診断法などの研究が推進できると期待される。
結論
本研究事業の推進母体とするための「先天代謝異常症患者家族会フォーラム」を開催した。専門医と患者家族会が協力し、新規治療薬および早期診断法の開発等の研究に役立てることを目的とし、患者登録制度である『先天代謝異常症臨床情報バンク(MC-Bank)』を構築し、18疾患に対する登録を行った。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201324055C

成果

専門的・学術的観点からの成果
先天代謝異常症などの患者数が少なく臨床情報に乏しい希少疾患の情報が『先天代謝異常症臨床情報バンク(MC-Bank)』に直接、患者からに登録されることにより、より詳細で有用な希少疾患情報のデータベース化が進むことが可能となる。その情報を用いて、希少疾患の新しい診断法や新薬開発などの新たな臨床研究のシーズ(データベース)が利用可能となることが期待される。
臨床的観点からの成果
『先天代謝異常症臨床情報バンク(MC-Bank)』のような患者登録や実態調査は、希少疾患の新規治療法を検討する際に必要不可欠な情報となる。日本人患者の患者数、年齢、臨床像、重症度、自然歴などの情報の一元化が可能となり、小児希少難病の治療薬開発において、極めて有用である。また日本人患者の新薬の国際共同治験参加が可能となり、ドラッグラグ問題の改善につながる。
ガイドライン等の開発
先天代謝異常症臨床情報バンク(MC-Bank)のシステムを開発、確立させた。患者家族会を中心とした疾患登録シートを作成することにより、患者家族が本当に必要とする内容を含めた登録シートが完成した。H25年11月から登録シートを患者に配布し、現在も順調に回収を進めている。患者家族自らの登録によりMC-Bankに集められた患者臨床情報は、近い将来患者家族に役に立つ研究等に活用されることが期待される。

その他行政的観点からの成果
本研究事業を通して、複数の患者会が一致協力し事業を展開したことにより、患者会相互の連携や患者会と専門医の連携が密接なものとなった。将来的には、患者家族会の国際交流が発展することにより、欧米の患者家族会が進める研究者への助成制度の日本での導入も可能となり、新規治療法や早期診断法などの研究が推進できると期待される。
その他のインパクト
希少疾患を対象とする登録制度の必要性と現状について広く伝え、登録を促すと同時に患者への情報提供の場として年に1回「先天代謝異常症患者家族会フォーラム」を開催した(2012年~2014年)。患者家族会、専門医、研究者、企業から約120名が参加し、現状の患者登録制度の運用、最新治療情報、患者家族会の活動と役割について紹介、登録制度の継続運用の必要性、情報提供の方法について議論を行い、患者家族会同士の交流および協力体制を求める認識が高まった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
29件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kaoru Eto,Norio Sakai,Shiho Shimada et al.
Microdeletions of 3p21.31 characterized by developmental delay, distinctive features, elevated serum creatine kinase levels, and white matter involvement.
Am J Med Genet A. , 121A (12) , 3049-3056  (2013)
原著論文2
Hossain MA, Otomo T, Saito S et al.
Late-onset Krabbe disease is predominant in Japan and its mutant precursor protein undergoes more effective processing than the infantile-onset form.
Gene , 534 (2) , 144-154  (2014)

公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
2017-07-04

収支報告書

文献番号
201324055Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
13,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,957,459円
人件費・謝金 3,527,429円
旅費 2,157,590円
その他 1,210,772円
間接経費 3,000,000円
合計 12,853,250円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
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