腸管不全に対する小腸移植技術の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201324053A
報告書区分
総括
研究課題名
腸管不全に対する小腸移植技術の確立に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-015
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
福澤 正洋(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター )
研究分担者(所属機関)
  • 仁尾 正記(東北大学医学系研究科・小児外科)
  • 黒田 達夫(慶應義塾大学・外科学(小児外科))
  • 田口 智章(九州大学大学院医学研究院小児外科学分野)
  • 上野 豪久(大阪大学大学院医学系研究科・小児成育外科)
  • 羽賀 博典(京都大学医学部附属病院病理診断学 病理学)
  • 森井 英一(大阪大学大学院医学系研究会・病理学)
  • 石田 和之(岩手医科大学医学部病理学講座分子診断病理学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
31,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、腸管不全患者において、移植適応を適切に判断し小腸移植の推進を行う一方、小腸移植技術の成績の向上、治療の標準化図るべく、全国調査を行ったうえで生検試料も含めて登録事業を行い、治療指針の策定と、治療の標準化を行うことである。
研究方法
過去5年の後方視的観察研究とする。並びに2年間の前向き研究とする。腸管不全並びに小腸移植の患者を診療する施設に対して、多施設共同研究としての症例登録を行う。対象は、経静脈栄養を必要とする、腸管不全と診断された全症例を対象とする。前向き研究は、経静脈栄養から6か月以上離脱できない腸管不全の患者、並びに小腸移植後の患者を対象とした。
結果と考察
後方視的研究については63施設より354症例の腸管不全に対して検討を加えることができた。小腸運動機能障害132例、短腸症候群177例、その他が12例であった。生存は288例で、44例が死亡していた。218例(76%)が中心静脈栄養から離脱できず、184例は6ヶ月以上離脱ができずに不可逆的腸管不全と判断した。現在生存している不可逆的腸管不全患者のうち1.黄疸を伴った肝障害(19例) 2.中枢ルートが2本以上閉塞(49例) の合計68例(重複2症例)は、小腸移植の適応だと考えられる。
結論
今回初めて腸管不全の全国調査が行われた。また、今回の調査によって、初めて全国の腸管不全の患者の症例数が把握できた。現在、腸管不全の患者登録、並びに小腸移植患者の登録を行っているので、より詳細な結果が明らかになると思われる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-25
更新日
-

文献情報

文献番号
201324053B
報告書区分
総合
研究課題名
腸管不全に対する小腸移植技術の確立に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-015
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
福澤 正洋(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター )
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小腸運動機能不全の全国調査に引続き、腸管不全全体の調査を行い患者登録を行う。また、同時に同疾患群への小腸移植実施患者に対しても登録を行う。特に小腸移植に関しては1)小腸移植患者の選別 2)適正な移植時期と方法の決定 3)周術期管理の標準化 4)小腸生検試料の共通化 を行う。ヒルシュスプルング病類縁疾患の研究班,小腸移植適応評価委員会,日本移植学会の登録,ガイドライン委員もメンバーに加え研究成果が速やかに政策、臨床に反映する事を目的としている。
研究方法
腸管不全症例(①)と腸管不全に対する小腸移植実施症例(②)に対し、過去5年の後方視的観察研究及び2年の前方視的観察研究とする。また、小腸生検試料(③)の結果の共有を行う。腸管不全に対して、日本小児外科学会認定施設,日本小腸移植研究会,日本在宅静脈経腸栄養研究会の会員施設に対し、データセンターより症例登録依頼状を送付し、応諾が得られた施設を対象に、多施設共同研究としての症例登録を行う。小腸移植術後症例に対しては日本小腸移植研究会に実施報告された症例を対象とし、症例の登録並びに試料の登録を行う。データセンターより1症例あたり1部の症例登録票、1試料あたり1部の登録を依頼する。各実施施設は連結可能匿名化を行った後、Web上でデータセンターのサーバーに症例を登録する。Web症例登録システム,中央病理診断システムの構築を行う。
結果と考察
①総括研究:腸管不全の全国調査と登録
後方視的研究については63施設より354症例の腸管不全に対して検討を加える事ができた。小腸運動機能障害132例,短腸症候群177例,その他12例であった。生存は288例で、44例が死亡していた。218例(76%)が中心静脈栄養から離脱できず、184例は6ヶ月以上離脱ができずに不可逆的腸管不全と判断した。現在生存している不可逆的腸管不全患者のうち1.黄疸を伴った肝障害(19例) 2.中枢ルートが2本以上閉塞(49例) の合計68例(重複2症例)は、小腸移植の適応と考えられる。
②分担研究1:腸管不全の肝障害に関する研究
2006〜2011年に発症した乳児症例122例の後方視的解析により、20例(16.4%)に腸管不全関連肝障害(IFALD)を発症し、肝不全は乳児発症の腸管不全の最大の死因である事が判明した。特に乳児発症のIFALDに対し魚油由来ω3系脂肪製剤の有効性が近年報告され、すでに国内でIFALDの数十例に対し使用されていると考えられるが、この薬剤は国内未承認薬である。
IFALDの発症率、死亡率は実際にはもう少し高い可能性があり、日本国内全体の新生児,乳児腸管不全の発症数,IFALDの発症数,死亡数に関する調査を行うと共に、ω3系脂肪製剤の使用症例数、適応とその効果などに関する全国調査を行う。
③分担研究2:成人発症の短腸症候群による腸管不全の研究
成人発症の短腸症候群患者の症例数と現況を把握し得た。今後は成人発症の短腸症候群患者に対する予後因子を特定する為の前方視的観察研究を行うと共に、小腸移植の適応判断に関する検討が必要である。
④分担研究3:クローン病の腸管不全に関する研究
クローン病患者の残存小腸長はクローン病以外の短腸症候群と比較し、有意に長い結果が得られた。また、運動機能障害と比較すると有意に短い結果が得られた。
近年、クローン病患者数は増加傾向にあるが、新たな治療薬等の登場により腸管不全に陥る症例は減少傾向である。一方で、ヨーロッパからの報告では腸管不全に陥る病因としてクローン病は最も多く、少なからず腸管移植の候補となり、実際小腸移植を実施される症例も報告されている。今後、本邦のクローン病における前向きのデータ集積が望まれる。
⑤分担研究4:腸管不全と成長の研究
小児の成人との違いは成長発達する事であり、腸管不全の発症時期が若年である事から成長障害を起こし発達障害を起こしうる。原病の治療に加えて長期の適切な栄養管理は患児の生活予後を大きく作用する。Infant:成長スピードが最も大きい胎児期後半から乳児期の成長でこれを支えている大きな要素は[栄養]、Child:1歳ごろから穏やかに成長する時期で[成長ホルモン]が関与、そしてPubertyには[性ホルモン]が関与しスパートをかけ成長が完了する。このうちどれが欠けても順調な成長はできない。

本研究の目的は、腸管不全の患児の現状と発育発達を栄養法・栄養状態との関係で評価し、将来的に腸管不全患児のQOLを考慮した治療方法を探る事である。
結論
今回初めて腸管不全の全国調査が行われ、患者の症例数を把握できた。腸管不全を重症度別に層別化した重症群に対しては小腸移植が適応となる。現在、小腸移植は保険適用外の為、早急な保険適用が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201324053C

成果

専門的・学術的観点からの成果
腸管不全の全国調査データのクリーニングと統計解析が行えた。腸管不全の肝障害に関する研究,成人発症の短腸症候群による腸管不全の研究,クローン病の腸管不全に関する研究,腸管不全と成長の研究について、解析項目を決定し各分担研究者により発表された。今回の成果の一部は2013年5月に米国で開催された米国移植学会、6月に開催された国勢小腸移植シンポジウムで発表された。論文についても、英文論文が発表されている。
臨床的観点からの成果
Webベースの登録システムが構築され登録作業が始まっている。その結果、小腸移植後の全患者が中央病理診断システムと統合した形で登録されている。希少症例のため治療レベルの格差が大きい疾患であるが、症例が登録され治療のプロトコールが標準化され、また中央病理診断システムの構築で専門的な判断ができるようになった。
ガイドライン等の開発
解析プロトコールが作成され、またWebベースの登録システムが構築され登録作業が始まっている。本年度末には目標症例数を達成し予後解析、ガイドライン作成に関する因子、小腸移植の適応となる患者への勧告が行われる予定である。
その他行政的観点からの成果
全国の腸管不全の総数が把握され、小児慢性特定疾患助成の申請や、小腸移植の保険適用への要望書など腸管不全の治療対策に対して利用されている。また、国内の小腸移植の成績、年代や、年齢、生体と脳死などの違いによる詳細な成績が把握され小腸移植の保険適用への要望書など、腸管不全の治療対策に対して利用されている。
その他のインパクト
腸管不全の患者会を実施して患者同士の情報交換、今後の医療情報の公開に努めた。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ueno T, Wada M, Hoshino K et. al
Impact of pediatric intestinal transplantation on intestinal failure in Japan: findings based on the Japanese intestinal transplant registry.
Pediatr Surg Int  (2013)
原著論文2
Ueno T, Wada M, Hoshino K et. al.
A national survey of patients with intestinal motility disorders who are potential candidates for intestinal transplantation in Japan.
Transplant Proc  (2013)
原著論文3
Ueno T, Takama Y, Masahata K et. al.
Conversion to prolonged-release tacrolimus for pediatric living related donor liver transplant recipients.
Transplant Proc  (2013)
原著論文4
Wada M, Kudo H, Yamaki S et. al
Life-threatening risk factors and the role of intestinal transplantation in patients with intestinal failure.
Pediatr Surg Int  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2016-06-20

収支報告書

文献番号
201324053Z