文献情報
文献番号
201324027A
報告書区分
総括
研究課題名
呼吸不全に関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-難治-一般-024
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
三嶋 理晃(京都大学大学院医学研究科 呼吸器内科学)
研究分担者(所属機関)
- 西村 正治(北海道大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野)
- 中田 光(新潟大学医歯学総合病院生命科学医療センター)
- 巽 浩一郎(千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科学)
- 瀬山 邦明(順天堂大学大学院医学研究科呼吸器内科学)
- 赤柴 恒人(日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野)
- 別役 智子(慶應義塾大学医学部呼吸器内科学教室)
- 長瀬 隆英(東京大学大学院医学系研究科呼吸器内科学)
- 玉置 淳(東京女子医科大学第一内科学講座 )
- 久保 惠嗣(信州大学医学部内科学第一講座)
- 谷口 博之(公立陶生病院呼吸器・アレルギー内科)
- 伊達 洋至(京都大学大学院医学研究科呼吸器外科学)
- 陳 和夫(京都大学大学院医学研究科呼吸管理睡眠制御学講座)
- 裏出 良博((公財)大阪バイオサイエンス研究所 分子行動生物学部門)
- 中西 宣文(国立循環器病研究センター研究所 肺高血圧先端医療学研究部)
- 井上 義一(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
- 中野 恭幸(滋賀医科大学呼吸器内科学)
- 木村 弘(奈良県立医科大学内科学第二講座)
- 横山 彰仁(高知大学医学部医学科血液・呼吸器内科学教室)
- 星野 友昭(久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科部門)
- 渡辺 憲太朗(福岡大学医学部呼吸器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
30,531,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
呼吸不全を来たす難治性呼吸器疾患である7つの疾患群(若年発症肺気腫(若年発症COPD)、リンパ脈管筋腫症(LAM)、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)、肥満低換気症候群(OHS)、肺胞低換気症候群(PAHS)、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH))を横軸とし、疫学・病態解析・診断・原疾患治療を縦軸とする2次元的発想で、呼吸不全の予防と治療の標準化・均てん化を目指す。対象疾患に対する新規薬剤の開発、前向き臨床試験の充実、ガイドラインの作成や、呼吸不全に対する非侵襲的換気・肺移植といった先進医療の標準化などを進め、厚生労働行政の施策への貢献に繋がる研究を行う。
研究方法
呼吸不全を来たす難治性呼吸器疾患に対して、発症機序、病態の解明や治療法の確立につなげるべく、疫学、生理学、病理学、分子生物学、遺伝子学的な多面的アプローチから臨床および基礎研究を実施した。
結果と考察
対象7疾患に対する包括的疫学調査として、独自のホームページを設け、当研究班で構築した疫学調査システムを用いたインターネット経由の症例登録を継続した。また特定疾患であるLAM、肺高血圧症の2疾患(PAH・CTEPH)に対しては、臨床調査個人票を用いた解析も実施した。呼吸不全患者に対するアンケート調査をまとめた「在宅呼吸ケア白書」について、今年度は、疾患別解析を行い、日本呼吸器学会と共に「在宅呼吸ケア白書 COPD患者アンケート調査疾患別解析」として上梓した。若年発症重症COPDに関しては、全国疫学調査により、306症例の患者数があることがわかり、2次調査として84例が登録された。α1アンチトリプシン欠損症は稀で、男性に多く、ほとんどは喫煙に関連しているものの、非喫煙者も一部みられること、また、重度の肺機能障害があり、薬物治療にもかかわらず、45%で在宅酸素療法を要し、増悪の頻度が多いという、重症で難治性の病像であることが明らかとなった。COPDに関する自然歴や予後、併存症に関する臨床研究、動物モデルや培養細胞を用いた基礎研究を実施し、よりよい治療や管理法に向けての知見を得た。LAMについては、平成22年~24年度にかけての縦断的な解析を実施し、発病平均年齢が35.7歳、在宅酸素療法の導入率が21%などの病像を明らかとし、呼吸機能低下率や1年間の気胸発症率の病像との関係を示した。また、血清VEGF-Dの有用性や診断時年齢と病態との関係を検討し、治療については、シロリムスの安全性確立のための医師主導治験を継続中である。また、患者会と共同で勉強会を開催し、LAMに関する情報提供と相互交流を行った。LCHに関しては、小児血液学会HLH/LCH委員会と共同して疫学調査を実施し、肺病変を中心としたLCHの臨床像の実態について検討を行った。小児と成人例の病像の相違や小児でも肺病変をもつ症例が従来知られていたよりも多いこと、診断時からの10年生存は89.9%であるものの、肺病変ありの症例では、死因に呼吸不全が関与していることなどが明らかとなった。OHSについては、多施設共同の疫学研究の結果により、睡眠呼吸障害の有無は問わない国際分類とも整合性があり、国際比較が可能な診断基準を新たに確立した。また、OHSの臨床的特徴を重症OSASと比較することで、OHSが有意に若く、拘束性換気障害が強く,肺胞低換気が著明で、肝機能障害、糖尿病、高尿酸血症を認めるという病像を明らかにした。PAH、CTEPHについては、疫学調査により患者の高齢化と経口肺血管拡張薬の併用例の頻度の増加が示された。PAHにおける内服治療による生命予後に対する効果の検討やCTEPHにおける新規治療法としての経皮的肺動脈拡張術についての研究なども実施した。肺移植適応患者の予後とQOLの調査研究では、137例の登録を得て、健康関連QOLが、患者の呼吸機能の生理学的指標との相関がやや低く、QOLの観点からの介入の必要性が示唆された。慢性呼吸不全患者の有力な治療法としての長期NPPV療法について、多施設共同の前向き研究で55例が登録され、患者のQOLが、生理的指標より呼吸困難や心理状態と強い関係をもつことや、患者の生命予後と関係している可能性が示唆された。iPS細胞研究については、肺胞上皮細胞への分化誘導は可能となり、難治性呼吸器疾患についても登録が開始された。
結論
呼吸不全関連7疾患の発症機序、病態、予後との関連や治療に関する、臨床・基礎研究を実施し、多くの新たな知見や成果を得た。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
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