原発性高脂血症に関する調査研究

文献情報

文献番号
201324014A
報告書区分
総括
研究課題名
原発性高脂血症に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
石橋 俊(自治医科大学 医学部 内科学講座 内分泌代謝学部門)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
15,680,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201324014B
報告書区分
総合
研究課題名
原発性高脂血症に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
石橋 俊(自治医科大学 医学部 内科学講座 内分泌代謝学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 信博(筑波大学)
  • 及川 眞一(日本医科大学 内分泌代謝内科)
  • 白井 厚治(東邦大学医学部 附属佐倉病院)
  • 代田 浩之(順天堂大学医学部 循環器内科学講座)
  • 山下 静也(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 太田 孝男(琉球大学医学部 育成医学)
  • 武城 英明(千葉大学大学院 医学研究院)
  • 荒井 秀典(京都大学大学院医学研究科)
  • 小林 淳二(金沢大学大学院 医学系研究科 脂質研究講座)
  • 島野 仁(筑波大学大学院 人間総合科学研究科 内分泌代謝・糖尿病内科)
  • 林 登志雄(名古屋大学医学部 附属病院老年科)
  • 平田 健一(神戸大学大学院 医学研究科)
  • 後藤田 貴也(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 斯波 真理子(国立循環器病研究センター バイオサイエンス部)
  • 大須賀 淳一(自治医科大学 内科学講座)
  • 石垣 泰(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 野原 淳(金沢大学大学院 医学系研究科 代謝学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
家族性高コレステロール血症(FH)、HDL代謝異常、原発性高カイロミクロン血症、原発性高脂血症の診断・予後に関与する臨床指標を明らかにする。
研究方法
1.FH
FHホモ接合体の我が国初めての全国調査を施行した。
FH症例1397例を解析し、FHの診断基準を見直した。
急性冠症候群におけるFHヘテロの頻度を調査した。
FHヘテロ患者の動脈硬化指標、血管弾性指標を小児・高齢者も含め検討した。
2.HDL代謝異常
LCAT欠損症は低HDL-C血症を呈する希少疾患であるが、表現型により腎予後が異なる。腎予後と関連する因子の検討を行った。またLCAT欠損マウスを用いて、LCAT遺伝子導入治療の有効性・安全性を検討した。
LCAT欠損症によるネフローゼ症候群の治療に対する反応を検討した。
血清の血管内皮リパーゼ(EL)蛋白量はHDL-C値との関連を検討した。
西暦2000年日本人における単独低アルファリポ蛋白血症の頻度を調査した。
3.原発性高カイロミクロン血症
原発性高トリグリセリド(TG)血症の遺伝的要因を調査した。
アポ蛋白C-II低下症例の遺伝子解析を行った。
4.原発性高脂血症の診断・予後に関する臨床指標
アポ蛋白B-48やMDA-LDLといった指標と、冠動脈疾患との関連を解析した。また家族性III型高脂血症の診断指標の探索を行った。
結果と考察
1.
FHの診断基準の見直しを行い、LDL-Cの基準値は180mg/dL以上を採択するのが感度に優れていた。
急性冠症候群でのFHの頻度は5-10%だが、アキレス腱肥厚のある患者は11.6-18.5%と多く認めた。軟部X線単純撮影によるアキレス腱厚の測定がスクリーニングに有用だった。急性冠症候群急性期の患者では脂質が低下するため、アキレス腱肥厚を確認し後日FHの可能性につき診断すべきである。
FHヘテロ接合体では、治療介入して無症候性であっても約2割は狭窄病変を有している可能性があり、非侵襲的な動脈硬化スクリーニングが必要である。高齢のFHヘテロ患者のFMDは、閉経、年齢、一定期間のLDLコントロールと関連していた。小児でLDL-CはIMTと正相関し、FHヘテロ接合体児は非FH児よりIMTが肥厚していた。FHの疾患概念、早期からの治療介入の必要性につき、専門外の臨床医への啓蒙が重要である。
2.
腎不全に至るFLD患者ではそのLCAT異常により、FEDと健常人の中間的なサイズの、そして脂質組成の異常なLDLが産生され腎機能障害進展に関与する。LCAT遺伝子治療により脂質異常症の改善を認め、遺伝子治療臨床研究の実施承認を受けた。
LCAT欠損症によるネフローゼ症候群は蛋白制限食に抵抗性だが、脂肪制限により蛋白尿は改善し、粒子サイズの大きな分画の減少を伴っていた。LCAT欠損症の腎障害はリポ蛋白糸球体症の一つと考えられた。
血清EL蛋白量はHDL-C値と逆相関を示すが、EL値は冠動脈疾患患者において増加しHDL-C値と逆相関を認めたことからELを標的とした低HDL-C血症の治療創薬が期待されている。
単独低アルファリポ蛋白血症の頻度は7.5%であり、さらなる調査を要すると考えられた。
3.
アポ蛋白A-V G185Cが高度高TG血症例で高頻度58.7%(対照者=2.3%)に認められアポA-V G185C変異が主要因である可能性が示唆された。
アポ蛋白C-II遺伝子のmRNAへの転写が低下している一方、アポ蛋白C-II遺伝子自体にはその低下を説明する変異や多型は認めなかった。アポ蛋白C-IIレベルにtransに働く新規遺伝子の存在が初めて示された。
4.
アポ蛋白B-48やMDA-LDLは冠動脈疾患と相関し、原発性高脂血症の診断・予後に関与する臨床指標として有用である。脂質異常のない健常者での空腹時アポB-48濃度の基準値上限は5.7 μg/mL(基準範囲;0.74-5.65 μg/mL)であった。
アポ蛋白B48/TG比は、家族性III型高脂血症患者でのみ有意な高値をとり、Cut-off値は0.110であった。投薬後でもその有意差は維持されていたので診断的価値が高い。
結論
 原発性高脂血症の早期診断、早期介入は、患者の予後の改善のために重要であることが再確認された。本研究期間にFHに関しては、診断基準や診療ガイドラインの改訂を行った。IIb型高脂血症、I/V型高脂血症、HDL-Cに関する診療ガイドラインの礎になる英文総説を発表した。
 しかし、臨床検査指標や診療ガイドラインの整備や周知が不十分なため、これらの脂質異常症は診断されず放置されている症例が少なからず存在する。わが国での実態が解明されれば、早期診断と治療の啓蒙に役立てることができると期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201324014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
家族性III型高脂血症の診断指標としてApoB48/TG比が有用であることが示された。
臨床的観点からの成果
新しい家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合型の診断基準をガイドラインに明記した。それにより冠動脈疾患の高リスク群であるFHヘテロ接合型患者に対して早期介入が可能となることが期待される。今後は新診断基準の周知啓発が重要である
LCAT欠損症に対する遺伝子治療臨床研究の実施承認を得た。
ガイドライン等の開発
日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012における「原発性高脂血症」の項における改訂の根拠となった。
その他行政的観点からの成果
特定疾患に指定されているFHホモ接合体患者の実態調査の結果、LDLアフェレシスを施行されていても予後が悪いことから、他の治療法の開発が必要と考えられた。
その他のインパクト
とくにありません。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
279件
その他論文(和文)
40件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
326件
学会発表(国際学会等)
100件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体(成人・小児)の新しい診断基準の普及・啓発に努めている。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Gotoda T, Shirai K, et al.
Diagnosis and management of type I and type v hyperlipoproteinemia.
J. Atheroscler. Thromb. , 19 (1) , 1-12  (2012)
原著論文2
Sone H, Tanaka S, et al.
Serum Level of Triglycerides Is a Potent Risk Factor Comparable to LDL Cholesterol for Coronary Heart Disease in Japanese Patients with Type 2 Diabetes:
J Clin Endocrinol Metab. , 96 , 3448-3456  (2011)
原著論文3
Arai H, Kokubo Y, et al.
Small Dense Low-Density Lipoproteins Cholesterol can Predict Incident Cardiovascular Disease in an Urban Japanese Cohort:The Suita Study
J. Atheroscler. Thromb. , 20 (2) , 195-203  (2013)
原著論文4
Yokoyama S, Yamashita S, et al.
Background to Discuss Guidelines for Control of Plasma HDL-Cholesterol in Japan
J. Atheroscler. Thromb. , 19 (2) , 207-212  (2012)
原著論文5
Harada-Shiba M, Arai H, et al.
Multicenter Study to Determine the Diagnosis Criteria of Heterozygous Familial Hypercholesterolemia in Japan
J. Atheroscler. Thromb. , 19 , 1019-1026  (2012)
原著論文6
Harada-Shiba M, Arai H, et al.
Guidelines for the Management of Familial Hypercholesterolemia
J. Atheroscler. Thromb. , 19 , 1043-1060  (2012)
原著論文7
Arai H, Ishibashi S, et al.
Management of type IIb dyslipidemia
J. Atheroscler. Thromb. , 19 , 105-114  (2012)
原著論文8
Yamamoto T, Obika S, et al.
Locked nucleic acid antisense inhibitor targeting apolipoprotein C-III efficiently and preferentially removed triglyceride from large VLDL particles from murine plasma.
European Journal of Pharmacology , 723 , 353-359  (2014)
原著論文9
Terasaki F, Morita H, et al.
Familial Hypercholesterolemia with Multiple Large Tendinous Xan-thomas and Advanced coronary Artery Atherosclerosis
Intern Med , 52 , 577-581  (2013)
原著論文10
Sugisawa T, Okamura T, et al.
Defining patients at extremely high risk for coronary artery disease in heterozygous familial hypercholes-terolemia
J. Atheroscler. Thromb. , 19 (4) , 369-375  (2012)
原著論文11
Teramoto T, Sasaki J, et al.
Familial hypercholesterolemia, Ex-ecutive summary of the Japan Ath-erosclerosis Society(JAS) Guide-lines for diagnosis and prevention of atherosclerotic cardiovascular diseases in Japan-2012 version.
J. Atheroscler. Thromb. , 21 (1) , 6-10  (2014)
原著論文12
Katsuren K, Nakamura K, et al.
Effect of body mass index Z-score on adverse levels of cardiovascular disease risk factors.
Pediatrics International , 54 , 200-204  (2012)
原著論文13
Sone H, Tanaka S, et al.
Comparison of various lipid variables as predictors of coronary heart disease in Japanese men and women with type 2 diabetes: subanalysis of the Japan Diabetes Complications Study.
Diabetes Care. , 35 (5) , 1150-1157  (2012)
原著論文14
Fujihara K, Suzuki H, et al.
Carotid Artery Plaque and LDL-to-HDL Cholesterol Ratio Predict Atherosclerotic Status in Coronary Arteries in Asymptomatic Patients with Type 2 Diabetes Mellitus.
J. Atheroscler. Thromb. , 20 (5) , 452-464  (2013)
原著論文15
Naito S, Kamata M, et al.
Amelioration of circulating lipoprotein profile and proteinuria in a patient with LCAT deficiency due to a novel mutation (Cys74Tyr) in the lid region of LCAT under a fat-restricted diet and ARB treatment.
Atherosclerosis. , 228 , 193-197  (2013)
原著論文16
Ina K, Hayashi T, et al.
Importance of high-density lipoprotein cholesterol levels in elderly diabetic individuals with type IIb dyslipidemia: A 2-year survey of cardiovascular events.
Geriatr Gerontol Int  (2013)
10.1111/ggi.12168
原著論文17
Asada S, Kuroda M, et al.
Ceiling culture-derived proliferative adipocytes retain high adipogenic potential suitable for use as a vehicle for gene transduction therapy.
Am J Physiol Cell Physiol. , 301 , C181-C185  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2018-06-11

収支報告書

文献番号
201324014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
63,280,000円
(2)補助金確定額
63,280,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 48,356,221円
人件費・謝金 0円
旅費 1,292,265円
その他 8,988,926円
間接経費 4,667,000円
合計 63,304,412円

備考

備考
年度末の購入物品で超過した部分がありましたが、自己資金にて補填し執行しました。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-