筋骨格系慢性疼痛の疫学および病態に関する包括的研究

文献情報

文献番号
201323007A
報告書区分
総括
研究課題名
筋骨格系慢性疼痛の疫学および病態に関する包括的研究
課題番号
H25-痛み-指定-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
戸山 芳昭(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 雅也(慶應義塾大学 医学部 )
  • 岩波 明生(慶應義塾大学 医学部 )
  • 西脇 祐司(東邦大学 医学部)
  • 百島 祐貴(慶應義塾大学 医学部)
  • 橋口 さおり(慶應義塾大学 医学部)
  • 小杉 志都子(慶應義塾大学 医学部)
  • 住谷 昌彦(東京大学医学部附属病院医療機器管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 慢性の痛み対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)筋骨格系慢性疼痛の疫学調査:筋骨格系の慢性疼痛が将来のADL低下や要介護認定に及ぼす影響を定量的に明らかにする。2)脊髄髄内腫瘍術後の脊髄障害性疼痛の実態把握と病態およびその発生メカニズムを解明する。3)慢性疼痛患者の橋渡し研究の開発、疫学調査の実施:四肢骨折後の複合性局所疼痛症候群(CRPS)の発症に寄与する医学的因子を解明する。4)術後遷延痛に影響する因子の解明に関する研究:乳房部分切除患者を対象とし、術前の心理的ストレスと術後遷延痛の関連性を調査した。5)神経障害性疼痛の新たな評価法の確立:マウスfunctional MRI(fMRI)による神経障害性疼痛の新たな評価法の構築を試みた。
研究方法
1)平成23年度に調査協力のあった6119名に再度郵送調査を実施し2年間の追跡データを構築し、慢性疼痛が将来のADL低下や要介護認定に及ぼす影響を検討する。2)脊髄髄内腫瘍術後患者(105例)にアンケート調査、温冷刺激装置を用いた定量的評価とfMRIを用いた脳内賦活の定量的評価を行った。3)2007~2010年に国内952病院を退院した319万人分の日本版診断群データベースから四肢骨折に対し観血的骨整復固定術(ORIF)を受けた入院患者(n=185378)について、医学的因子を抽出した。このうち術後入院中にCRPSと診断された患者をICD10コードをもとに同定し、医学的因子と発症の関連性を調べるため、ロジスティック回帰多変量解析を行った。4)乳房部分切除を施行された患者36例を対象とした。術前不安抑うつ尺度として、Hospital Anxiety and Depression Scale(以下HADS)を評価し、術前のストレスホルモンの指標として、24時間蓄尿中のコルチゾールを測定した。術後1,3,6か月後に、簡易型マクギル疼痛質問票(以下SF-MPQ)を用い疼痛を評価し、周術期HADS、尿中コルチゾール、およびSF-MPQの各項目との相関を調べた。5)全麻下に後肢電気刺激を行い、小動物用MRIで正常マウスのfMRIを撮像した。 次に片側第5腰髄神経根結紮モデルを作製し、同様の条件でfMRIを撮像し、抗IL6受容体抗体とプレガバリンの効果をfMRIを用いて評価した。
結果と考察
1)平成23年度の調査協力者に再度郵送調査を実施し、81.5%の者から有効回答を得た。来年度は23年度と25年度のデータを連結し、2年間の追跡研究データを構築する。このデータを用いて、慢性疼痛が将来のADL低下や要介護認定に及ぼす影響を定量的に明らかにする予定である。2)脊髄障害性疼痛患者では脳内の疼痛関連領域を中心として、健常者にはない過剰な賦活が起こっていることが判明した。また電気刺激装置による評価では症例により各fiberの障害の程度は多様であり、疼痛を生じるメカニズムにもいくつかのタイプがあることが示唆された。3)四肢末梢の骨折でCRPS発症率が高く、長い手術時間とタニケットによる駆血時間が長かったことを示唆し、超急性期CRPSの発症に虚血再潅流傷害が関連する可能性が考えられた。四肢骨折は年間数十万人が罹患し、術後CRPSの発症予防法の開発の礎となる。また、CRPSの病態解明に繋がる可能性がある。4)乳癌術後遷延痛の危険因子として周術期の心理的ストレスは大きな要因であり、術前からの心理的サポート、不安やうつを軽減する有効な薬剤の使用は遷延痛の形成を回避し、痛みの予防につながる可能性がある。5)神経障害性疼痛の新たな評価法の確立: fMRIを用いた神経障害性疼痛の客観的評価のみならず、治療効果も判定できる可能性がある。さらに、抗IL-6受容体抗体は損傷直後だけでなく神経障害性疼痛の出現後に遅延して投与しても、痛みを軽減できる可能性が明らかになった。抗IL-6受容体抗体は既に臨床で使用されている薬剤であり、今後は神経障害性疼痛への効能も期待される。
結論
平成23年度の筋骨格系慢性疼痛の疫学調査協力者に再度郵送調査を実施した。このデータを用いて、慢性疼痛が将来のADL低下や要介護認定に及ぼす影響を定量的に明らかにする予定である。fMRIにより神経障害性疼痛の客観的評価のみならず、治療効果も判定できる可能性がある。四肢末梢の骨折の超急性期CRPSの発症に虚血再潅流傷害が関連する可能性が考えられた。

公開日・更新日

公開日
2014-07-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2014-07-28
更新日
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収支報告書

文献番号
201323007Z