慢性疼痛の多面的評価システムの開発と客観的評価法の確立に対する研究

文献情報

文献番号
201323002A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性疼痛の多面的評価システムの開発と客観的評価法の確立に対する研究
課題番号
H23-痛み-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
紺野 愼一(福島県立医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 倉田 二郎(東京医科歯科大学 医学部附属病院)
  • 大城 宜哲(医療法人仁寿会石川病院)
  • 齋藤 繁(群馬大学 大学院医学系研究科)
  • 福井 聖(滋賀医科大学 医学部)
  • 大鳥 精司(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 西原 真理(愛知医科大学 医学部学際的痛みセンター)
  • 竹林 庸雄(札幌医科大学 医学部)
  • 矢吹 省司(福島県立医科大学 医学部)
  • 川上 守(和歌山県立医科大学 附属病院紀北分院)
  • 越智 光夫(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院)
  • 竹下 克志(東京大学 医学部附属病院)
  • 松本 守雄(慶應義塾大学 医学部)
  • 住谷 昌彦(東京大学 医学部附属病院)
  • 関口 美穂(福島県立医科大学 医学部)
  • 二階堂 琢也(福島県立医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 慢性の痛み対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性疼痛に対する多様な主観的、客観的評価法に関する研究を包括的に連結させることにより、多面的な慢性疼痛評価システムを構築することを第一の目的とする。さらに、それらの研究で得られた知見を基に、治療法の選択に直結する客観的評価システムの開発をめざすことを第二の目的とする。
研究方法
開発した質問票を用いて、研究実施施設を受診した慢性疼痛患者を対象とし、調査を実施した。
(倫理面での配慮)
本研究の実施に際しての倫理的配慮
1)本研究は、ヒトを対象とした臨床研究である、ヘルシンキ宣言に基づく倫理原則と倫理研究に関する倫理指針を厳守して実施した。
2)研究の実施に当たっては、研究計画書を主研究施設での倫理委員会の承諾を得た。
3)被験者の特定はできない。
被験者への説明と同意
以下について調査票の表紙に記載した。
1)研究の目的及び内容
2)調査に参加しない場合、あるいは、調査途中で中止した場合でも何の不利益を被ることが無いことを保証すること
3)対象者は、調査票に回答し記入うることによって、同意の意思を示したと判断されること
4)プライバシーの保護
調査票の記入をもって、対象者が本研究への参加に同意したものとした。
結果と考察
研究結果
①慢性疼痛と難治性疼痛の定義
・Expert consensus methodにより、慢性疼痛は、発症から3ヶ月以上持続する疼痛と定義(国際疼痛学会の定義と同じ)し、疼痛の程度は問わない(NRS1以上)とした.
②慢性疼痛患者へのアンケート調査
・設定した定義にあてはまる慢性疼痛患者(脊椎疾患、関節疾患、複合性局所疼痛症候群)を対象とし、252名(男性154名、女性96名、平均年齢64.1歳)に対してアンケート調査を実施した.
③痛みの重症度評価ツールの開発
・QOLを基準とした「重症(難治性)疼痛」を規定する尺度を開発した.得点が0より小さい場合にQOLが非常に低い疼痛(重症、難治性)、0より大きい場合にQOLが比較的高い疼痛患者と判定できる重症度評価ツールが完成した.ROC曲線は面積が0.79、感度57.9%、特異度85.7%であった。
④Spine Pain DETECTの開発
・Pain DETECTを用いて、脊椎疾患と関節疾患を効率よく判別するSpine Pain DETECTを開発した.ROC曲線は0.79、感度84.4%、特異度70.6%であった.
⑤社会的因子の評価プロファイルの作成
・慢性疼痛患者の社会的因子を測定・評価するためのプロファイル型評価スケールを開発した.
・エキスパートパネルに協議を行い、因子分析の結果、社会的因子の5つのプロファイル:仕事(ストレス、人間関係、満足度)3項目、家族(サポート)2項目、睡眠関連3項目、メンタルヘルス5項目、痛み関連QOL 2項目の計15項目を最終的な評価項目に決定した.
・5つのプロファイルスコアをレーダーチャートで表すことによって、社会的背景の特徴を明らかにできる.
⑥脳機能画像による評価
・VBM (Voxel-based morphometry)で萎縮変化が認められる慢性腰痛では、非特異的腰痛の割合が高いことが示唆された.また、Pain DETECTと前頭・頭頂弁蓋から島、後帯状皮質のVBMでの萎縮変化に正の相関が認められた.
・変形性膝関節症患者に対するfMRI(Functional Magnetic Resonance Imaging)では、表皮内電極による膝関節裂隙の刺激によって、前頭前野背外側部で活動の増加が認められた.
・機能性疼痛障害患者(CRPS TypeⅠや線維筋痛症)でdefault mode network (DMN)の機能的結合の低下が認められた.

考察
本研究により、慢性疼痛患者のプロファイリングを評価する因子を抽出することができた。このシステムを用いて、疾患別の特徴、慢性化の危険因子や治療方針を解明することや、治療効果の判定に応用することが可能である。
結論
客観的疼痛評価項目の選定により、患者プロファイリングを評価できるシステムを構築した。縦断研究の継続による臨床研究の継続も必要である。

公開日・更新日

公開日
2014-07-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2014-07-31
更新日
-

文献情報

文献番号
201323002B
報告書区分
総合
研究課題名
慢性疼痛の多面的評価システムの開発と客観的評価法の確立に対する研究
課題番号
H23-痛み-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
紺野 愼一(福島県立医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 倉田 二郎(東京医科歯科大学 医学部附属病院)
  • 大城 宜哲(医療法人仁寿会石川病院)
  • 齋藤 繁(群馬大学 大学院医学系研究科)
  • 福井 聖(滋賀医科大学 医学部)
  • 大鳥 精司(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 西原 真理(愛知医科大学 医学部学際的痛みセンター)
  • 竹林 庸雄(札幌医科大学 医学部)
  • 矢吹 省司(福島県立医科大学 医学部)
  • 川上 守(和歌山県立医科大学 附属病院紀北分院)
  • 越智 光夫(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院)
  • 竹下 克志(東京大学 医学部附属病院)
  • 松本 守雄(慶應義塾大学 医学部)
  • 住谷 昌彦(東京大学 医学部附属病院)
  • 関口 美穂(福島県立医科大学 医学部)
  • 二階堂 琢也(福島県立医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 慢性の痛み対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性疼痛に対する評価法するためには、患者立脚アウトカムが含まれていることが必要である。しかし、臨床の現場で慢性疼痛の病態を評価し、適切な治療法を選択するのは必ずしも容易ではない。本研究では、慢性疼痛に対する多様な主観的、客観的評価法に関する研究を包括的に連結させることにより、多面的な慢性疼痛評価システムを構築することを目的とする。さらに、治療法の選択に直結する客観的評価システムの開発をめざすことを第二の目的とする。
研究方法
1)質問票の選定
Expert consensus methodにより各項目(慢性疼痛と難治性疼痛の定義、痛みの程度の評価、神経障害性疼痛のスクリーニングの評価、心理的因子の評価、社会的因子の評価、QOLの評価、脳機能画像による評価、電気生理学的診断による評価)の評価法の有用性と限界について検討を行い、多面的評価システムに含める項目を決定した。
2)運動器慢性疼痛患者の調査
開発した質問票を用いて慢性疼痛患者を対象とし、調査を実施した。
3)多面的な慢性疼痛評価システムの構築
a) 痛みの重症度評価ツールの開発
SF36のスコアより、因子分析と判別分析によってQOLを基準とした「重症(難治性)疼痛」を規定する尺度を開発した。
b) Spine Pain DETECTの開発
Pain DETECTを用いて、判別分析により脊椎疾患と関節疾患を効率よく判別するSpine Pain DETECTを開発した。
c) 社会的因子の評価プロファイルの作成
社会的因子の5つのプロファイルを抽出し、因子分析を用いてプロファイル型評価スケールを開発した。
(倫理面での配慮)
1)本研究は、ヒトを対象とした臨床研究で、ヘルシンキ宣言に基づく倫理原則と指針を厳守して実施した。
2)研究の実施には、研究計画書を主研究施設での倫理委員会の承諾を得た。
3)被験者の特定はできない。
被験者への説明と同意
以下について調査票の表紙に記載した
1)研究の目的及び内容
2)調査に参加しない、あるいは途中で中止した場合でも不利益を被ることが無いことを保証すること
3)対象者は、調査票に回答することによって、同意の意思を示したと判断されること
4)プライバシーの保護
調査票の記入をもって、対象者が本研究への参加に同意したものとした。
結果と考察
研究結果
1)質問票の決定
H23~24年度に、問診票項目(Pain DETECT、BS-POP (Brief Scale for Psychiatric Problems in Orthopaedic Patients)、Pain Catastrophizing Scale:PCS、SF-36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey)、社会的因子に関する35問)を決定した。
2)運動器慢性疼痛患者の調査
a) 対象者の背景
対象者は244例(男133例、女89例)(脊椎疾患は125例、関節疾患は59例、複合性局所疼痛症候群(CRPS)は26例、その他14例)であった。平均年齢は65±16歳であった。
b) 疼痛の特徴
Pain DITECT、BS-POP治療者用およびPCSでは、疾患別に相違はなかった。一方BS-POP患者用では、CRPSで有意に高値を示した。
c) 社会的因子評価の項目選定
因子負荷量の高い「仕事は楽しいですか」(0.52)、「仕事上の人間関係に満足していますか」(0.63)、「家族の問題にストレスになっていますか」(0.99)、「娯楽や楽しみがありますか」(0.78)、「趣味や娯楽を楽しむ時間が十分にありますか」(0.64)を選定した。
3)多面的な慢性疼痛評価システムの構築
a) 痛みの重症度評価ツールの開発
得点から、疼痛とQOLが判定できるツール(ROC曲線は0.79、感度57.9%、特異度85.7)を開発した。
b)Spine Pain DETECTの開発
Pain DETECTを用いて、脊椎疾患と関節疾患を効率よく判別するSpine Pain DETECT (ROC曲線は0.79、感度84.4%、特異度70.6%)を開発した。
c)社会的因子の評価プロファイルの作成
5つのプロファイル:仕事3項目、家族2項目、睡眠3項目、メンタルヘルス5項目、痛み関連QOL 2項目(計15項目)に決定した。そのスコアをレーダーチャートで表記できる。
考察
本研究により、慢性疼痛患者のプロファイリングを評価する因子を抽出した。このシステムを用いて、疾患別の特徴、慢性化の危険因子や治療方針を解明することや、治療効果の判定に応用することが可能である。
結論
客観的疼痛評価項目の選定により、患者プロファイリングを評価できるシステムを構築した。縦断研究の継続による臨床研究の継続も必要である。

公開日・更新日

公開日
2014-07-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2014-07-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201323002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
多面的な慢性疼痛評価システムを構築するために、慢性疼痛患者のプロファイリングを評価する因子を抽出し、プロファイルスコアを表示できるレーダーチャートを開発した。患者プロファイリングを評価の妥当性の検証へ進むことができる。
臨床的観点からの成果
多面的な慢性疼痛評価システムの構築により、疾患別の特徴、慢性化の危険因子や治療方針を解明することや、治療効果の判定に応用することが可能である。
ガイドライン等の開発
多面的多面的な慢性疼痛評価システムを用いての慢性疼痛患者の治療と診療のガイドライン開発に繋がると考えられるが、さらなる検証が必要である。
その他行政的観点からの成果
慢性疼痛評価システムを用いて慢性疼痛の患者プロファイリングを解析することで、標準的評価法が明らかにされ治療法の選択が容易になれば、国民の健康維持やQOLの向上に貢献できるばかりでなく、医療活動の円滑化や医療費の低減にもつながることが期待される。
その他のインパクト
自記式調査票であることから、大規模疫学調査の実施や一般国民が自己評価することが可能であることから、検証後に普及を目指す。

発表件数

原著論文(和文)
142件
原著論文(英文等)
92件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
177件
学会発表(国際学会等)
71件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yoshitaka Matsubayashi, Katsushi Takeshita, Masahiko Sumitani, et al.
Validity and reliability of the Japanese version of the painDETECT questionnaire: a multicenter observational study.
PLoS One , 8 (9) , e68013-  (2013)
doi:10.1371/journal.pone.0068013
原著論文2
Kaneko H, ZhangS, Sekiguchi M, et al.
Dysfunction of Nucleus Accumbens is associated with psychiatic problems in patients with chenic low back pain-a functional magnetic resonance imaging study.
Spine , 42 (11) , 844-853  (2017)
doi:10.1097/BRS.0000000000001930.
原著論文3
Nikaido T, Fukuma S, Wakita T, et al.
Development of a profile scoring system for assessing the psychosocial situation of patients with chronic musculoskeletal apin.
Journal of pain research , in press  (2017)

公開日・更新日

公開日
2014-06-04
更新日
2018-06-13

収支報告書

文献番号
201323002Z