我が国における関節リウマチ治療の標準化に関する多層的研究

文献情報

文献番号
201322037A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における関節リウマチ治療の標準化に関する多層的研究
課題番号
H23-免疫-指定-016
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宮坂 信之(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科膠原病・リウマチ内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 天野 宏一(埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科)
  • 伊藤 宣(京都大学大学院医学研究科リウマチ性疾患制御学講座)
  • 遠藤 平仁(東邦大学医学部内科学講座(大森)膠原病科)
  • 金子 祐子(慶應義塾大学医学部リウマチ内科)
  • 鎌谷 直之(東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター)
  • 川上 純(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座)
  • 川人 豊(京都府立医科大学大学院医学研究科免疫内科学)
  • 岸本 暢将(聖路加国際病院アレルギー膠原病科)
  • 小池 隆夫(北海道大学大学院医学研究科内科学講座第二内科)
  • 小嶋 俊久(名古屋大学医学部附属病院整形外科)
  • 小嶋 雅代(千田 雅代)(名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野)
  • 瀬戸 洋平(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター)
  • 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野)
  • 西田 圭一郎(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科人体構成学整形外科)
  • 針谷 正祥(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科薬害監視学講座)
  • 平田 信太郎(産業医科大学医学部第一内科学講座)
  • 松井 利浩(独立行政法人国立病院機構相模原病院リウマチ科)
  • 松下 功(富山大学医学部整形外科)
  • 山中 寿(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
33,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の関節リウマチ診療の標準化を目指して、1)エビデンスに基づいた診療ガイドラインの作成、2)リウマチ診療の地域格差、施設間格差などに関する実態調査のための疫学データベースの構築、3)医療の標準化・及び拠点病院の構築、などの研究活動を多角的に行う。
研究方法
1)RA診療ガイドライン作成分科会:Systemic Literature Review (SLR)の手法を駆使して、エビデンスの質と強さを分離するGRADE recommendationに基づいたリウマチ診療ガイドラインを作成することを目指し、リウマチ専門医、臨床疫学者、医学統計学者、患者代表などにより診療ガイドラインガイドライン案を作成する。
2)RA臨床疫学データベース構築分科会:RA診療の国際標準に基づいて、我が国におけるRA診療の現状と問題点を臨床疫学的手法により明らかにし、標準的診療を普及させるための基礎的なデータを提供する。具体的には、a. 活動性早期RA患者におけるMTXをアンカードラッグとする計画的強化治療の有効性と安全性に関するランダム化並行群間比較試験(活動性早期RA強化治療試験)b. 中・高疾患活動性RA患者における「目標達成に向けた治療」に関する臨床疫学的研究(T2T疫学試験)、c. 関節リウマチにおける合併症に関する研究(COMORA試験)などを3年計画で行う。本年度は我が国の保険データベースであるJapan Medical Data Center Claims dataを用いた解析も行った。
3)RA診療拠点病院ネットワーク構築分科会:関節リウマチ診療拠点病院形成のための一つのツールとして関節超音波検査を選び、関節超音波検査の標準化・普及活動を通じてRA診療拠点病院ネットワークの構築を行う。具体的には、1)関節超音波検査の評価法の標準化、2)関節超音波検査を普及させるための講習会実施指針とモデルの作成、3)関節超音波検査担当者を対象としたRAに対する教育活動並びに検査方法の講習会、4)関節超音波検査を用いたRAの新たな診断(分類)基準の作成、などを行う。
結果と考察
1)新たなRA治療ガイドラインの作成を通して、我が国の診療環境においてエビデンスに基づいた最新の診療を行うことが可能になり、我が国のRA診療の標準化及び適正化が可能になることが期待される。本ガイドラインは、日本リウマチ学会より電子媒体を通じて全国に広く提供される予定である。
2)我が国においてもMTXをアンカードラッグとする計画的強化療法の有効性と安全性が確認されつつあり、我が国における標準的治療法の確立に資すると思われる。
3)「目標達成に向けた治療」(T2T)が我が国においても有用であり、その実施によって高い寛解率が得られるとともに、T2Tを実践する上での我が国の問題点も明確となった。
4)COMORA studyを通じて我が国のRA患者の疫学的特性が明らかにされた。
5)我が国の大規模データベース(JMDC Claims Data)を用いた解析により、我が国RA患者の疫学的データが明らかにされ、我が国RA患者が心血管障害、高脂血症、糖尿病、骨粗鬆症などの合併症を高頻度に有することが明らかとなった。
6)関節超音波検査の標準化及び普及活動を行うことで、各地域に高度の専門性を有するRA診療拠点病院を設置できる可能性が明確となった。また、関節超音波検査がRA早期診断にきわめて有用であることも明らかとなった。
7)「リウマチ対策」が講じられた結果、RAの総合的疾患活動性指標としてDAS28, SDAI, CDAIなどが日常診療にも導入されるようになった。さらに、これらの総合的疾患活動性指標を用いながら「目標達成に向けた治療」(T2T)を行うことが、我が国においても根付きつつある。また、我が国においても、関節破壊の客観的指標としてmodified total Sharp score (mTSS)が用いられていることも明らかとなった。
8)薬剤の安全性評価については、我が国のみで行われた各種生物学的製剤の市販後全例調査が世界的に大きなエビデンスをもたらした。また、IORRA、REAL、NinJaなどのRA患者データベースが我が国でも構築され、我が国RA患者の特性が明らかにされるとともに、薬剤の適正使用に大きく貢献をしている。
結論
本研究は、我が国のRA診療の標準化及び適正化、RA患者の疫学データベースの構築と発展、RA診療拠点病院の設立などに大きく資するものであり、RA診療における病院格差及び地域格差の縮小・改善にも大きく貢献するものであると思われる。

公開日・更新日

公開日
2014-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2014-07-25
更新日
-

文献情報

文献番号
201322037B
報告書区分
総合
研究課題名
我が国における関節リウマチ治療の標準化に関する多層的研究
課題番号
H23-免疫-指定-016
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宮坂 信之(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科膠原病・リウマチ内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 天野 宏一(埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科)
  • 伊藤 宣(京都大学大学院医学研究科リウマチ性疾患制御学講座)
  • 遠藤 平仁(東邦大学医学部内科学講座(大森)膠原病科)
  • 金子 祐子(慶應義塾大学医学部リウマチ内科)
  • 鎌谷 直之(東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター)
  • 川上 純(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座)
  • 川人 豊(京都府立医科大学大学院医学研究科免疫内科学)
  • 岸本 暢将(聖路加国際病院アレルギー膠原病科)
  • 小池 隆夫(北海道大学大学院医学研究科内科学講座第二内科)
  • 小嶋 俊久(名古屋大学医学部附属病院整形外科)
  • 小嶋 雅代(千田 雅代)(名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野)
  • 瀬戸 洋平(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター)
  • 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野)
  • 西田 圭一郎(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科人体構成学整形外科)
  • 針谷 正祥(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科薬害監視学講座)
  • 平田 信太郎(産業医科大学医学部第一内科学講座)
  • 松井 利浩(独立行政法人国立病院機構相模原病院リウマチ科)
  • 松下 功(富山大学医学部整形外科)
  • 山中 寿(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の関節リウマチ診療の標準化を目指して、1)エビデンスに基づいた診療ガイドラインの作成、2)リウマチ診療の地域格差、施設間格差などに関する実態調査のための疫学データベースの構築、3)医療の標準化・及び拠点病院の構築、などの研究活動を多角的に行う。
研究方法
1)RA診療ガイドライン作成分科会:Systemic Literature Review (SLR)の手法を駆使して、エビデンスの質と強さを分離するGRADE recommendationに基づいたリウマチ診療ガイドラインを作成することを目指し、リウマチ専門医、臨床疫学者、医学統計学者、患者代表などにより診療ガイドラインガイドライン案を作成する。
2)RA臨床疫学データベース構築分科会:RA診療の国際標準に基づいて、我が国におけるRA診療の現状と問題点を臨床疫学的手法により明らかにし、標準的診療を普及させるための基礎的なデータを提供する。具体的には、a. 活動性早期RA患者におけるMTXをアンカードラッグとする計画的強化治療の有効性と安全性に関するランダム化並行群間比較試験(活動性早期RA強化治療試験)b. 中・高疾患活動性RA患者における「目標達成に向けた治療」に関する臨床疫学的研究(T2T疫学試験)、c. 関節リウマチにおける合併症に関する研究(COMORA試験)などを3年計画で行う。我が国の保険データベースであるJapan Medical Data Center Claims dataを用いた解析も行う。
3)RA診療拠点病院ネットワーク構築分科会:関節リウマチ診療拠点病院形成のための一つのツールとして関節超音波検査を選び、関節超音波検査の標準化・普及活動を通じてRA診療拠点病院ネットワークの構築を行う。具体的には、1)関節超音波検査の評価法の標準化、2)関節超音波検査を普及させるための講習会実施指針とモデルの作成、3)関節超音波検査担当者を対象としたRAに対する教育活動並びに検査方法の講習会、4)関節超音波検査を用いたRAの新たな診断(分類)基準の作成、などを行う。
結果と考察
1)新たなRA治療ガイドラインの作成を通して、我が国の診療環境においてエビデンスに基づいた最新の診療を行うことが可能になり、我が国のRA診療の標準化及び適正化が可能になることが期待される。本ガイドラインは、日本リウマチ学会より電子媒体を通じて全国に広く提供される予定である。
2)我が国においてもMTXをアンカードラッグとする計画的強化療法の有効性と安全性が確認されつつあり、我が国における標準的治療法の確立に資すると思われる。
3)「目標達成に向けた治療」(T2T)が我が国においても有用であり、その実施によって高い寛解率が得られるとともに、T2Tを実践する上での我が国の問題点も明確となった。
4)COMORA studyを通じて我が国のRA患者の疫学的特性が明らかにされた。
5)我が国の大規模データベース(JMDC Claims Data)を用いた解析により、我が国RA患者の疫学的データが明らかにされ、我が国RA患者が心血管障害、高脂血症、糖尿病、骨粗鬆症などの合併症を高頻度に有することが明らかとなった。
6)関節超音波検査の標準化及び普及活動を行うことで、各地域に高度の専門性を有するRA診療拠点病院を設置できる可能性が明確となった。また、関節超音波検査がRA早期診断にきわめて有用であることも明らかとなった。
7)「リウマチ対策」が講じられた結果、RAの総合的疾患活動性指標としてDAS28, SDAI, CDAIなどが日常診療にも導入されるようになった。さらに、これらの総合的疾患活動性指標を用いながら「目標達成に向けた治療」(T2T)を行うことが、我が国においても根付きつつある。また、我が国においても、関節破壊の客観的指標としてmodified total Sharp score (mTSS)が用いられていることも明らかとなった。
8)薬剤の安全性評価については、我が国のみで行われた各種生物学的製剤の市販後全例調査が世界的に大きなエビデンスをもたらした。また、IORRA、REAL、NinJaなどのRA患者データベースが我が国でも構築され、我が国RA患者の特性が明らかにされるとともに、薬剤の適正使用に大きく貢献をしている。
結論
本研究は、我が国のRA診療の標準化及び適正化、RA患者の疫学データベースの構築と発展、RA診療拠点病院の設立などに大きく資するものであり、RA診療における病院格差及び地域格差の縮小・改善にも大きく貢献するものであると思われる。

公開日・更新日

公開日
2014-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2014-07-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201322037C

収支報告書

文献番号
201322037Z