臓器移植・造血細胞移植後日和見感染症に対する有効かつ安全な多ウイルス特異的T細胞療法の開発と導入に関する研究

文献情報

文献番号
201322036A
報告書区分
総括
研究課題名
臓器移植・造血細胞移植後日和見感染症に対する有効かつ安全な多ウイルス特異的T細胞療法の開発と導入に関する研究
課題番号
H25-難治等(免)-一般-105
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
森尾 友宏(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 聡(東京大学医科学研究所)
  • 高橋義行(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 立川 愛(東京大学医科学研究所先端医療研究センター)
  • 服部元史(東京女子医科大学)
  • 水田耕一(自治医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
移植領域全体の成績向上を最終目標とし、「ペプチドパルスと至適サイトカインを用いた短期間に増幅可能な特異的T細胞療法」の開発と導入を目的として研究を実施する。第一世代EBV, CMV特異的T細胞について臨床研究を進め、第二世代の3ウイルス特異的T細胞では細胞傷害活性、アロ反応評価系、無血清化を評価し、最終的には臨床研究に進むと共に、7ウイルス特異的T細胞療法を確立する。
研究方法
1.移植後様々な時期で15ウイルス検出を行う(後ろ向き研究)。また前向き解析も倫理審査委員会承認後開始する。検査法は年内を目処に、全解析系の全自動化を試みる。2.アロ反応性を最小限にする方策を模索すると共に、新規細胞傷害活性測定法や、CFSE系で簡便・高感度でアロ反応を検出する方法を検証する。前者においては通常の51Cr遊離試験に加えて、caspase 3の活性化を指標とした検出方法などを用いる。3.第一世代特異的T細胞は症例数を重ね、有効性、有害事象評価系と搬送系を確立する。4.1)3ウイルス7抗原特異的T細胞調製について基礎検討を行う。EBV(LMP2, EBNA1, BZLF1), CMV(pp65, IE6), AdV(penton, hexon)の領域をカバーし11アミノ酸ずつ重なる15merのペプチドを用い、末梢血単核球と、IL-4, IL-7存在下で共培養する。10日前後に細胞を収集し、表面抗原特性、特異的T細胞の比率などを検証する。2)細胞傷害活性やアロ反応性を検証する。標的細胞に51Crラベルし、特異的T細胞と4時間培養し、上清に遊離した51Crを測定する。(倫理的側面に対する配慮)患者でのウイルス測定や、健常人でのHLA検査及びT細胞培養が実施される。倫理審査委員会の承認を得て、十分な説明と書類による同意取得のもとに実施する。
結果と考察
結果
1.造血細胞移植後、肝移植後、腎移植後に測定すべきウイルスを抽出し、測定系を再検証した。現時点では、肝臓移植分担者と腎臓移植分担者がそれぞれ施設倫理審査委員会に諮り、前向き及び後ろ向き解析の両者を始めようとしている。測定系については抽出から分注、検出に至るまでをストリームライン化した測定系が確立しつつある。2 6名の健常人にてHLAタイピングを行い、それぞれに対してのアロ反応性をCFSE assayを用いて検証した。PHA blastを標的とした51Cr遊離アッセイを用いて検討したところ、比較的良好な感度を得た。3.名古屋大学でEBV特異的T細胞、CMV特異的T細胞治療の臨床研究を継続した。移植後EBV関連リンパ増殖症候群となり、感染細胞がCD20陰性となってリツキシマブの効果を認めない症例に対して、EBV特異的T細胞を投与して、良好な結果を得た。本症例は後にCMV感染症に罹患し、同様にドナーからCMV特異的T細胞を用意して輸注して、ウイルスの消失を認めた。4.作成した3ウイルス特異的T細胞はCD3が95%以上でCD4が優位であった。5名での貝瀬kいではCD4/CD8比率はドナーにより大きく異なる。大半の細胞はcentral memory分画にあるが、それぞれの細胞は細胞内IFNγ染色およびELISPOTアッセイで特異的T細胞の存在が明らかになり、合計ほぼ20-50%程度が特異的T細胞であった。調製においては、無血清化を試み成功した。最終的な臨床応用を視野に入れ、標準作業手順書を作成している。細胞傷害活性検査の開発にもあたった。本年度はまたHHV6(U90,U54), BKV(Large T, VP1)を加えた5ウイルス11抗原特異T細胞、JCV(Large T, VP1), VZV (IE62, IE63)を加えた7ウイルス15抗原特異的T細胞の調製も試み、すべての抗原に対して特異的な反応の誘導が可能であることを明らかにした。
考察
 研究が進捗する中、いくつかの課題(価格、純度のさらなる向上、CD4/CD8比率の至適化、再増殖法の確立)があがっており、今後臨床応用に向けて検討・改善が必要である。特異的CTLの検証には、HLA拘束性の検討が必要であり、ELISPOT法を用いた検討を開始した。先行する1ウイルス特異的CTL療法では輸送システムの確立と共に、臨床研究開始に向けて、経済的基盤の確立が必須の段階に入った。
結論
ウイルス計測技術が確定し、測定すべきウイルスを決定し今年度内からデータが集積し始めている。3ウイルス特異的T細胞の樹立方法をほぼ確立し、樹立した細胞の性格を明らかにし、抗原特異的細胞傷害活性を証明した。無血清化、IL-4, IL-7の低濃度化、気密容器の使用、標準作業手順書の作成など、平成26年度内の臨床応用に向けての準備が進んだ。5ウイルス特異的、7ウイルス特異的T細胞培養にも着手した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
201322036Z