免疫疾患に対する有効な治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201322029A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫疾患に対する有効な治療法の確立に関する研究
課題番号
H25-難治等(免)-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
田中 栄(東京大学医学部付属病院 整形外科・脊椎外科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡 敬之(東京大学医学部附属病院 関節疾患総合研究講座)
  • 門野 夕峰(東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科)
  • 安井 哲郎(東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科)
  • 大橋 暁(東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科)
  • 飯室 聡(東京大学医学部附属病院 生物統計学)
  • 吉村 典子(東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科)
  • 田中 良哉(産業医科大学医学部 第1内科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
免疫疾患の中でも、本邦での有病者数が70万人と推定される関節リウマチ(RA)患者の有効な治療法の確立は喫緊の課題である。メトトレキサート(MTX)や生物学的製剤など分子標的薬の登場により多くのRA患者は病勢がコントロールされつつあるが、一方で関節破壊が抑制できずに薬物でのコントロールに難渋する例も散見されており、全てのコースのRA患者治療を的確かつ効率的に規定するアルゴリズムの確立が求められている。治療アルゴリズムを確立するためには、まずRA診断の標準化が必要とされるが、RAの評価に使用される評価ツールは煩雑で臨床での使用が難しいものも多く、簡易かつ信頼性の高い評価ツールの普及が望まれる。また現在のRA評価には改善の余地があり、これらを用いた治療効果判定は十分とは言えない。
研究方法
本研究では初年度である平成25年に1)RA患者における構造学的評価用の医用画像定量計測ICT(information and communication technology)ツールの構築(X線画像/MRI)、2)EDC(Electronic Data Capture)による即時性・信頼性を向上させたデータサンプリング、3)RA患者における種々の身体機能評価法におけるスコアの統計学的検討、をサブテーマに、新たな評価法の確立に向けたValidationを行う。また整形外科を中心とした研究グループの特性を生かし、4)RA患者外科治療における機能改善を評価のための工学的アプローチ、を考案しておりPreliminaryな検討を行う。更には、 評価法の信頼性を確認するため、5)一般住民コホートを用いたRA関連指標の疫学的検証、を行うとともにMTXと生物製剤の併用療法にも拘らず、約1割の症例で関節破壊が進行するという現状を顧みてTNF阻害薬使用下に於いても骨軟骨破壊進行に寄与する危険因子を同定するため、6) 治療にもかかわらず関節破壊が進行するRA患者の危険因子、を検討する研究を行う。
結果と考察
造学的評価用の医用画像定量計測ICTツールは膝・股関節・脊椎・手のX 線自動評価ソフトウエア精度検証も終了し、EDCによるX線画像収集も進むなど、一般臨床での実用段階にほぼ到達しており次年度以降で一般住民コホートを用いた疫学的検証、関節破壊が進行するRA患者の危険因子同定におけるX線学的検討に向け、システムを調整中である。MRI画像においては滑膜増生の強いサブグループで軟骨量の低下が大きい傾向にあるという興味深い知見を得ており、症例を蓄積し詳細な解析予定である。身体機能評価法におけるスコアの統計学的検討により、RA 患者の手指関節破壊を評価する身体機能評価尺度としてDASH は有用であること、つまみ力がTSS の代用となりうることが明らかになり、日常診療において導入可能な簡易な評価法の有用性が示唆された。工学アプローチでは、患者では内側広筋および外側広筋の発火に乏しく、術後に健常者と同様のピークを持った筋力の発火分布が見られるようになった。各々の筋の働きを定量評価することにより術前後のリハビリテーションに関して有用な知見が得られる可能性が高く、今後簡易な計測法の導入とシュミレーションモデルの構築を予定している。疫学的検証ではRAの有病率が0.7%と従来の試算と同程度であることが明らかになり、今後この一般住民コホートを用いて血清学的マーカー、医用画像を詳細に検討予定である。RA関連指標CRP 高値は関節破壊進行の独立した予測因子であり、治療開始1年後の血清MMP-3値異常はmTSSおよび関節裂隙狭小化の進行、CRP 高値はErosion進行の指標であった。今後疾患活動性指標、血清学的マーカー、医用画像所見を比較評価するべく症例を蓄積中である。
結論
新たな評価法の確立に向けたValidationを行い実用段階現在までの検討を行うともに、住民コホートによる検証の準備と、治療難治例に関して危険因子を同定することが出来た。本研究を推進することにより、RA診断の標準化が図られ、診断から寛解導入に至るまでの時期や著しい増悪時、さらには急速進行の高リスク群、重症難治例には専門的な対応をリウマチ診療の専門機能を有する医療機関が行い、病状の安定している時期あるいは寛解導入後の治療にはかかりつけ医が診療するという治療アルゴリズムを構築することが可能となる。研究が完遂した後には、理想的な治療コースの意思決定が促進し、国民に対してより良質かつ適切な医療を提供することで医療経済にも貢献できるものと考えている。

公開日・更新日

公開日
2014-07-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201322029Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
26,000,000円
(2)補助金確定額
26,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,471,720円
人件費・謝金 1,750,300円
旅費 901,650円
その他 11,876,330円
間接経費 6,000,000円
合計 26,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-