文献情報
文献番号
201322017A
報告書区分
総括
研究課題名
多関節障害重症RA患者に対する総合的関節機能再建治療法の検討と治療ガイドライン確立
課題番号
H24-難治等(免)-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
石黒 直樹(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 石川 肇(新潟県立リウマチセンター )
- 織田 弘美(埼玉医科大学医学部)
- 木村 友厚(富山大学大学院医学薬学研究部)
- 小嶋 俊久(名古屋大学医学部附属病院)
- 小嶋 雅代(千田 雅代)(名古屋市立大学大学院医学研究科)
- 田中 栄 (東京大学医学部附属病院)
- 二木 康夫 (慶應義塾大学医学部)
- 西田 圭一郎(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
- 芳賀 信彦(東京大学医学部附属病院)
- 橋本 淳(独立行政法人国立病院機構 大阪南医療センター臨床研究部 免疫疾患セ ンター)
- 宮原 寿明(国立病院機構九州医療センター 整形外科・リウマチ膠原病センター)
- 桃原 茂樹(東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センター)
- 行岡 正雄 (医療法人行岡医学研究会 行岡病院)
- 里宇 明元(慶應義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、関節リウマチ(RA)における関節破壊の進行は顕著に抑制されるようになった。しかし、患者の多くは手術治療を必要とする等の多関節障害を有している。単関節の関節再建術は既に治療法として確立しているが、多関節障害を持つRA患者における手術治療の総合的なコンセプトは明確ではない。多関節障害の評価方法を確立し、それを基に個々の患者に最適な、総合的な生活機能(ADL, QOL)回復のための手術と、術後の運動・作業療法指導が実施できれば、より早期により高いレベルまでの回復が可能となり、新たな関節障害の発症も予防できる。また、特にRAでは疼痛、身体機能障害が患者に負の心理的影響を与え、治療満足度低下に繋がる事に注目し、患者自身の評価を重視し、心理社会的要因に配慮した全人的な標準的治療プログラムが必要である。本研究は「多関節障害を持つRA患者」に対し、手術種類に応じた関節再建治療に関わる総合的な治療ガイドラインを開発することを目的とする。
研究方法
①全国多施設RA関節再建術データベースの構築
本研究の主調査として、各研究分担者の所属施設におけるRA関節再建術予定の全患者を登録し、性、年齢、罹病期間、疾患活動性、薬物療法情報、各関節可動域、包括的QOL指標および抑うつを含めた患者の主観的評価、身体機能評価(HAQ,DASH、起座動作の速度など)を収集し、術後経過の定期的な追跡を行っている。今年度はbaselineデータの収集解析を行い、ADL障害とそれに関わるそれぞれの上肢関節の重み付け、日常生活動作が自立できる目標としての可動域、握力の算出、再現性の検証を行った
②RA上肢関節再建術に関するシステマティックレビュー
上肢関節形成術に関する既存のエビデンスに関するシステマティックレビューを行い、RA上肢関節形成術の長期治療効果指標としての関節可動域、握力の有用性を検証した。
本研究の主調査として、各研究分担者の所属施設におけるRA関節再建術予定の全患者を登録し、性、年齢、罹病期間、疾患活動性、薬物療法情報、各関節可動域、包括的QOL指標および抑うつを含めた患者の主観的評価、身体機能評価(HAQ,DASH、起座動作の速度など)を収集し、術後経過の定期的な追跡を行っている。今年度はbaselineデータの収集解析を行い、ADL障害とそれに関わるそれぞれの上肢関節の重み付け、日常生活動作が自立できる目標としての可動域、握力の算出、再現性の検証を行った
②RA上肢関節再建術に関するシステマティックレビュー
上肢関節形成術に関する既存のエビデンスに関するシステマティックレビューを行い、RA上肢関節形成術の長期治療効果指標としての関節可動域、握力の有用性を検証した。
結果と考察
①全国多施設RA関節再建術データベースの解析
本研究参加施設より計347名の手術患者が登録された。平均年齢65.2 歳 罹病期間18年、女性88%、MTX使用例は61%、生物学的製剤は23.8%に併用されていた。初回手術38.4 %、上肢手術 47.5% 下肢手術51.5%、人工関節手術 46.6%であった。
身体機能評価は患者の主観的評価と有意に相関した。主たるADL障害において、障害度が上がるにつれ各関節可動域の低下が確認された。肩関節の可動域は広範な日常生活動作に有意に関連した。具体的な関節可動域としては、手関節 屈曲-伸展 60°回内外 150°、肘屈曲130°、肩屈曲140°がほぼ日常生活に支障がないレベルと推計された。同様に下肢については足関節:屈曲-伸展 55°、膝関節:屈曲-伸展 120°、股関節:屈曲-伸展 120°が日常生活に支障がないレベルの可動域と推計された。同様に握力について日常生活に支障がないレベルは、女性、135mmHg、男性、150mmHgと推計された。
②RA上肢関節再建術に関するシステマティックレビュー
PUBMEDにより検索され、肢関節再建術の長期成績としての関節可動域の情報が得られた17文献より、人工肩関節置換術(平均外転98°)を除き、手関節形成術(S-K法;屈曲-伸展 58°回内外 160°、部分固定術;屈曲-伸展 65°回内外 150°)、人工肘関節 屈曲130°(Kudo, Coonrad-Morrey)で上記可動域目標に達すると考えられた。
本研究参加施設より計347名の手術患者が登録された。平均年齢65.2 歳 罹病期間18年、女性88%、MTX使用例は61%、生物学的製剤は23.8%に併用されていた。初回手術38.4 %、上肢手術 47.5% 下肢手術51.5%、人工関節手術 46.6%であった。
身体機能評価は患者の主観的評価と有意に相関した。主たるADL障害において、障害度が上がるにつれ各関節可動域の低下が確認された。肩関節の可動域は広範な日常生活動作に有意に関連した。具体的な関節可動域としては、手関節 屈曲-伸展 60°回内外 150°、肘屈曲130°、肩屈曲140°がほぼ日常生活に支障がないレベルと推計された。同様に下肢については足関節:屈曲-伸展 55°、膝関節:屈曲-伸展 120°、股関節:屈曲-伸展 120°が日常生活に支障がないレベルの可動域と推計された。同様に握力について日常生活に支障がないレベルは、女性、135mmHg、男性、150mmHgと推計された。
②RA上肢関節再建術に関するシステマティックレビュー
PUBMEDにより検索され、肢関節再建術の長期成績としての関節可動域の情報が得られた17文献より、人工肩関節置換術(平均外転98°)を除き、手関節形成術(S-K法;屈曲-伸展 58°回内外 160°、部分固定術;屈曲-伸展 65°回内外 150°)、人工肘関節 屈曲130°(Kudo, Coonrad-Morrey)で上記可動域目標に達すると考えられた。
結論
2年間の研究成果を基に「より良いRA上肢機能再建のための提言2013(案)」をまとめた。
<基本的な考え方>
A: RA上肢機能再建術は再現性、長期成績に優れ、推奨される。
B: RA上肢機能再建術は局所疼痛の軽減と共に身体機能改善を目的として行う。
C: RA上肢機能再建術においては、単関節のみでなく上肢全体の評価を行い改善を目指す。
<提言>
1)RA手術治療の実施にあたっては、術前に薬物療法により全身的疾患活動性を十分コントロールすることを基本原則とする。
2)多関節障害を念頭に、術前評価には手術部位のみならず、全身の関節について、疼痛、可動域、握力を評価し、特に入浴、起座動作は上肢補助動作も把握する。肩関節の可動域制限は多くの日常生活動作に関連するので必ず評価する必要がある。
3)手術予定患者には、手術により得られる可動域、握力の向上により期待できる身体機能の改善度と手術部位以外の可動域から想定される機能改善の限界を提示する。
4)術前評価に基づき、複数関節への手術介入を含めた治療計画を考慮する。
以上の提言は、生物学的製剤を含む新しい薬物治療の背景を持つ最新の患者データを基にした具体的なものとなっており、RA治療に携わる臨床家にとって有用なものと考える。
<基本的な考え方>
A: RA上肢機能再建術は再現性、長期成績に優れ、推奨される。
B: RA上肢機能再建術は局所疼痛の軽減と共に身体機能改善を目的として行う。
C: RA上肢機能再建術においては、単関節のみでなく上肢全体の評価を行い改善を目指す。
<提言>
1)RA手術治療の実施にあたっては、術前に薬物療法により全身的疾患活動性を十分コントロールすることを基本原則とする。
2)多関節障害を念頭に、術前評価には手術部位のみならず、全身の関節について、疼痛、可動域、握力を評価し、特に入浴、起座動作は上肢補助動作も把握する。肩関節の可動域制限は多くの日常生活動作に関連するので必ず評価する必要がある。
3)手術予定患者には、手術により得られる可動域、握力の向上により期待できる身体機能の改善度と手術部位以外の可動域から想定される機能改善の限界を提示する。
4)術前評価に基づき、複数関節への手術介入を含めた治療計画を考慮する。
以上の提言は、生物学的製剤を含む新しい薬物治療の背景を持つ最新の患者データを基にした具体的なものとなっており、RA治療に携わる臨床家にとって有用なものと考える。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
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