文献情報
文献番号
201322014A
報告書区分
総括
研究課題名
非血縁者間同種末梢血幹細胞移植開始におけるドナーおよびレシピエントの安全性と移植成績向上に関する研究
課題番号
H23-免疫-一般-014
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院 造血細胞移植センター)
研究分担者(所属機関)
- 岡本 真一郎(慶應義塾大学医学部内科学・血液内科学)
- 日野 雅之(大阪市立大学大学院医学研究科血液腫瘍制御学・血液内科学)
- 豊嶋 崇徳(北海道大学大学院医学研究科内科学講座血液内科学分野・血液内科学)
- 田中 淳司(東京女子医科大学血液内科講座血液内科学)
- 上田 恭典(倉敷中央病院血液内科・血液内科学)
- 長藤 宏司(久留米大学医学部内科学講座血液・腫瘍内科部門・血液内科学)
- 高橋 聡(東京大学医科学研究所・血液腫瘍学)
- 西田 徹也(名古屋大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学・血液内科学)
- 飯田 美奈子(愛知医科大学医学部造血細胞移植振興講座・血液内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,381,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
「同種末梢血幹細胞移植を非血縁者間で行う場合等の医学、医療、社会的基盤に関する研究」第一期3年において開始されたURPBCTにおける、ドナーとレシピエントの安全性を確保の検証を行うとともに、移植技術の向上と標準化ならびに安全性および品質管理向上に向けた検討を通じ、より多くの患者を救うことを目的とし研究を行った
研究方法
ドナー手帳の電子化を含む、本邦におけるドナーの生涯フォローの基盤をさらに発展させるとともに、世界BMT学会と共同で中長期の稀におこる有害事象についての情報収集およびアジア地域のドナー安全の向上を支援する。骨髄バンク・ドナー安全委員会と協力し、ドナーの安全情報をアップデートに公開するとともに、「ドナー安全とQOLの観察研究」を施行し、ドナーの短期安全性およびQOLを骨髄移植ドナーと比較し研究する。末梢血幹細胞の動員と採取の効率化について、ドナー安全に留意の上調査検討しドナーの意向をかなえるとともに、経済的な貢献もめざす。URPBSCTに関する観察研究の遂行:第一期で開始した「同観察研究」を完遂する。そのデータを元に、「URPBSCTにおける至適なGVHD予防法の確立」を立案、実施する。URPBSCT認定施設の拡充についての問題点を調査・解決し認定施設を増やす。ECP(対外紫外線照射装置:GVHDの治療用)の導入と有用性の検討:現在厚生労働省「ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」のリストに挙げられている。引き続き、学会とも協力し導入実現を果たす。移植医療の発展とともに長期生存者が増加し、二次癌以外にも生活習慣病、一般の癌が問題となってくると予想される。これらの早期発見、早期治療を促し、またそれまでに患者が受けた治療内容がわかる患者手帳を作成し、その新しく発生した疾患の治療の参考とする。血液細胞の品質管理向上をめざした基盤整備として学会が出した「院内における血液細胞処理指針」をURPBSCT施設で行われているか検証するシステムを作る。また豊富に含まれる免疫担当細胞を利用した養子免疫療法の研究を進める。
結果と考察
2014年3月31日時点で38名の非血縁ドナーから末梢血幹細胞が採取された。これらのドナーにおいて重大な健康被害は生じていないが、昨年度血小板減少が問題となった。その後、マニュアルの一部改訂を行ったところ、それ以降問題となってはいない。末梢血幹細胞採取38例の結果、策定したドナー適格基準およびマニュアルに従った非血縁末梢血幹細胞採取は、安全に実施可能であった。しかし、件数は予想より少なく、認定施設増加、ドナーの制限を解除を行い、すべての患者およびドナーに両方の機会が与えられる必要がある。また、「本邦における非血縁者間末梢血幹細胞採取と骨髄採取のドナーへの影響に関する観察研究」については調査票を回収中である。ドナー手帳を採取を受けるすべてのドナーに手渡すシステムが働いていることを確認した。レシピエントの安全については「URPBSCTに関する観察研究」が開始され、現在まで35例の登録がなされ、今後も観察を続けていく。日本造血細胞移植学会のデータを利用した血縁者間末梢血幹細胞移植と血縁者間骨髄移植の比較研究を後方視的に行い、慢性GVHDのため本邦における血縁では骨髄移植の方がよい成績であるという2005年までのデータを確認した。患者手帳については、全国の移植施行施設にアンケートを送り、第二版を作成するとともに携帯電話で使えるアプリを試作した。末梢血幹細胞採取施設は昨年度までの36施設から74施設までに増加した。このことは、行政からのCD34測定用のFACS機器に対する経済的支援が有効であったものと推測された。今後、本邦でも非血縁者間末梢血幹細胞移植施行症例数が増加し、経験が豊富になってくれば、その需要は次第に増加すると思われる。また、ミニ移植などで末梢血幹細胞移植を必要とする患者は確実に存在するため、少なくともそのような患者に非血縁末梢血幹細胞移植を受ける機会を提供すべく、今後も施設の拡充を計る必要がある。欧米でのステロイド抵抗性GVHDの治療法であるECPに対する治験を、平成25年年度に開始することができた。骨髄移植ドナーからのDLIの研究的利用についての手順書を作成した。相互監視のシステム作成にはいたらなかったが、非血縁者間末梢血幹細胞移植の導入に伴い、必要となる基盤整備をいくつか完成できた。
結論
非血縁者間末梢血幹細胞移植認定施設の増加により、今後同移植は急速に増加するものと思われる。欧米の現状も参考に、ドナー安全に立脚しつつ、ドナーの利便性も考慮した採取システムを改善していき、全国どこにいる患者にも等しく非血縁者間末梢血幹細胞移植の恩恵を受けられる体制と作っていくことが必要であり、本研究班はその一部に関与できた。
公開日・更新日
公開日
2015-05-20
更新日
-