バイオ人工細胞・臓器の開発による糖尿病その他の疾患の治療

文献情報

文献番号
201322012A
報告書区分
総括
研究課題名
バイオ人工細胞・臓器の開発による糖尿病その他の疾患の治療
課題番号
H23-免疫-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宮川 周士(大阪大学大学院  医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 長嶋 比呂志(明治大学 農学部)
  • 伊川 正人(大阪大学 微生物研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,047,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
目的は医療用バイオ人工細胞・臓器の開発である。主眼をバイオ人工膵島とし、その細胞供給用の遺伝子改変ブタの作出を目指す。
研究方法
1)既存のα-Gal(α1,3 galactosyltransferase)-knockout(KO)ブタに、既に報告があるCMAH(cytidine monophosphate-N-acetylneuraminic acid hydroxylase,H-D抗原)のKOを加える。
1. 既存のブタのlineの整理。
2. homozygous GalT-KOクローンブタ(DK3-9系、雌)の細胞を対象に、CMAH遺伝子を標的とするZinc finger nuclease(ZFN) mRNAを導入。得られたheterozygous CMAH-KO細胞を体細胞核移植に用いて、クローン産仔の作出。
3. 遺伝的背景を更新したhomozygous GalT-KO細胞(DK3-1neo、雄)に対しては、Transcription activator-like effector nuclease (TALEN)法でCMAHのKO。
2)マクロファージ/樹上細胞(DC)を制御できる新たな遺伝子や、α-GalとH-D抗原以外の糖鎖抗原を検索。
1. ブタ血管内皮(SEC)に対するヒト・マクロファージによる障害を制御する分子を検定。
2. ブタとヒトのisletsの糖鎖構造を3次元HPLC法及び質量分析にて検索。
3. CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Plidromic Repeats)/Cas(CRISPR Associated)システムでのブタCMAHのKO siteの検索。
結果と考察
結果
1) 1. α-Gal KOブタ(雌)と野生型ブタとの交配によって得られたheterozygous KO産仔を、他のα-Gal KOブタ精子により受胎させて胎仔を回収し、新たにα-Gal KOブタ細胞を樹立(DK3-1neoを含め9line)。
2. DK3-9系(雌)の細胞に、ZFN法で新たにhomozygous GalT /heterozygous CMAH-KO細胞を樹立。核移植で4頭のクローン産仔を得た。1頭は健常であったが、3頭は死産あるいは産後虚弱であった。健常個体から培養細胞を樹立。さらにZFN法でhomozygous GalT / CMAH-KO細胞を樹立。
3. 新しい遺伝的背景を導入したhomozygous GalT-KO細胞(DK3-1neo雄)から4頭のクローン産仔を得た。その内3頭は産後虚弱のため、出生後2日までに試料採取に供した。一頭は33日目まで生存(死因不明)。この細胞より(TALEN)法でGalT/CMAHのダブルhomozygous KO細胞を樹立。
2) 新規遺伝子の検索
1. HLA-Eおよびα2,6-ST遺伝子の導入により、SECはマクロファージ誘導細胞傷害から著明に免れた。
2. ブタisletsにはヒトisletsに見られない硫酸化糖が多数見受けられた。
3. Exon7にtarget siteを設定。
考察 
作製したhybrid遺伝子構築に関しては、in vitroでの発現を確認後マウスでの発現を確かめ、ブタ胚盤胞形成試験で高効率であったため遺伝子導入可能と判断。つまり既存のlineを整理し、α-Gal-KOブタのlineを使ってCHAHをKOしたブタの繊維芽細胞に、検定済の新奇hybrid遺伝子を高発現させ、それを核移植する方法を取る。
一方、既存のhomozygous GalT-KOブタに新たな遺伝的背景を導入した細胞から、生存可能なクローンブタが得られたことから、懸念されていた近交化の影響やエピジェネティック変異の影響がある程度改善されたと考えている。現在homozygous GalT/heterozygous CMAH-KO個体作出まで達成した。
さらに新たなKO目的の遺伝子あるいは導入遺伝子の検討として、HLA-E、またα2,6-STの遺伝子導入もマクロファージの細胞傷害活性を著明に抑制することが明らかとなった。さらに新たな糖鎖抗原として硫酸転移酵素が考えられた。
結論
CHAHをKOしたブタの胎児を確立し、その繊維芽細胞に導入予定の遺伝子を高発現させ、さらに核移植する方法が新たに考えられた。一方、既存のhomozygous GalT-KOブタの正常性・生存性を改善し、さらにαGalに次ぐ糖鎖抗原であるH-D抗原のKOに目処が立った。
加えて、マクロファージに対して有効な遺伝子が判明し、新たな糖鎖抗原の検索にも目処が立った。また別法としてのCRISPR/CS法もブタでのKOに有効と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201322012B
報告書区分
総合
研究課題名
バイオ人工細胞・臓器の開発による糖尿病その他の疾患の治療
課題番号
H23-免疫-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宮川 周士(大阪大学大学院  医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 長嶋 比呂志(明治大学 農学部)
  • 伊川 正人(大阪大学微生物病研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療用バイオ人工細胞・臓器の開発。主眼をバイオ人工膵島とし、その細胞供給用の遺伝子改変ブタの作出。
研究方法
1.遺伝子構築。
*C1-INH、Thrombomoduline、CD55、CD46の機能ドメインを繋いだ分子を作製。<NCTDM>
* HLA-Ev(147)とhuman β2mを2Aで結合。<HLA-Ev>
2.発現確認
3.Transgenic(TG)マウス
4.TGブタ
顕微授精(ICSI)法で、体外成熟卵に遺伝子導入、発生への影響を調査(胚盤胞形成率)。顕微授精胚のレシピエントブタへ移植。
5.既存のα-Gal(α1,3 galactosyltransferase)-knockout(KO)ブタに、CMAH(cytidine monophosphate-N-acetylneuraminic acid hydroxylase, H-D抗原)のKOを加える。
① 既存のブタのline整理。
② homozygous GalT-KOクローンブタ(DK3-9系、雌)の細胞を対象に、CMAH遺伝子を標的とするZinc finger nuclease (ZFN) mRNA を導入。得られたheterozygous CMAH-KO細胞を体細胞核移植に用いて、クローン産仔の作出。
③ 遺伝的背景を更新したhomozygous GalT-KO細胞(DK3-1neo、雄)に対しては、Transcription activator-like effector nuclease (TALEN)法でCMAHのKO。
6.マクロファージ/DCを制御できる新たな遺伝子や、-GalとH-D抗原以外の糖鎖抗原を検索。
① ブタ血管内皮(SEC)に対するヒト・マクロファージによる障害を制御する分子を検定。
② ブタとヒトのislets の糖鎖構造を3次元HPLC法及び質量分析にて検索。
③ CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Plidromic Repeats)/Cas(CRISPR Associated)システムでのブタCMAHのKO siteの検索。
結果と考察
結果
1.新規に作製した遺伝子構築。pCPI(pig insulin promoter)/NCTDM、pCAGGS/ HLA-Ev。
2+3.ブタ細胞、マウスでの発現を確認。
4.高い胚盤胞形成率により発生阻害なしと判断。TGブタ作成したが産仔を得ず。
5.① 野生型ブタとの交配によって新たにα-Gal KOブタ細胞を樹立(DK3-1neo)。
② DK3-9系(雌)の細胞に、ZFN法で新たにhomozygous GalT /heterozygous CMAH-KO細胞を樹立。核移植で4頭のクローン産仔。1頭は健常、3頭は死産あるいは産後虚弱。健常個体から培養細胞を樹立。さらにZFN法でhomozygous GalT/CMAH-KO細胞を樹立。
③ 新しい遺伝的背景を導入したDK3-1neoから4頭のクローン産仔を得た。その内3頭は産後虚弱のため、出生後2日までに試料採取に供した。一頭は33日目まで生存(死因不明)。この細胞より(TALEN)法でGalT/CMAHのダブルhomozygous KO細胞を樹立。
6.新規遺伝子の検索
① HLA-Eおよびα2,6-ST遺伝子の導入により、血管内皮細胞(SEC)はマクロファージ誘導細胞傷害から著明に免れた。
② ブタisletsには、ヒトisletsに見られない硫酸化糖が多数見受けた。
③ CRISPR法。target siteを検索。
考察 
作製したhybrid遺伝子構築に関してはin vitroでの発現、マウスでの発現を確かめ、ブタ胚盤胞形成試験で高効率であったため、遺伝子導入可能と判断。つまり既存のlineを整理してα-Gal-KOブタのlineを基に、CHAHをKOしたブタの細胞に新奇遺伝子を高発現させ、それを核移植する方法を考えている。現在、homozygous GalT/heterozygous CMAH-KO個体作出、雌雄GalT/CMAHのダブルhomozygous KO細胞を樹立。さらに、新たな導入遺伝子の検討として、HLA-Eやα2,6-STもマクロファージの細胞傷害活性を著明に抑制した。
結論
ICSI法での遺伝子導入を試みたが産仔は得られなかった為、CHAHをKOしたブタの胎児を確立しその繊維芽細胞に導入予定の遺伝子を高発現させ核移植する方法に変更。一方、既存のGalT-KOブタの正常性・生存性を改善し、H-D抗原のKOに目処がたった。
加えて、他に有効な遺伝子が判明し、新たな糖鎖抗原の検索も進んだ。CRISPR/CS法もブタでのKOに有効と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201322012C

収支報告書

文献番号
201322012Z