移植細胞源を異にする非血縁造血細胞移植の組織適合性に基づく成績向上と移植選択アルゴリズムの確立に関する研究

文献情報

文献番号
201322010A
報告書区分
総括
研究課題名
移植細胞源を異にする非血縁造血細胞移植の組織適合性に基づく成績向上と移植選択アルゴリズムの確立に関する研究
課題番号
H23-免疫-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
森島 泰雄(愛知県がんセンター研究所  疫学・予防部)
研究分担者(所属機関)
  • 村田 誠(名古屋大学医学部 附属病院)
  • 小川 誠司(京都大学大学院医学研究科)
  • 屋部 登志雄(日本赤十字社関東甲信越ブロック血液センター)
  • 鬼塚 真仁(東海大学医学部)
  • 笹月 健彦(九州大学高等研究院)
  • 高見 昭良(金沢大学附属病院)
  • 森島 聡子(藤田保健衛生大学医学部)
  • 熱田 由子(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 田中 淳司(東京女子医科大学)
  • 南谷 泰仁(東京大学医学部附属病院)
  • 一戸 辰夫(広島大学原爆放射線医科学研究所)
  • 松本 加代子(日本赤十字社近畿ブロック血液センター)
  • 高梨 美乃子(日本赤十字社関東甲信越ブロック血液センター)
  • 宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院)
  • 飯田 美奈子(愛知医科大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,916,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
同種造血幹細胞移植が直面している3つの研究課題に組織適合性を基盤にして取り組んだ。第1は、組織適合性に基づく骨髄移植、臍帯血移植成績の解析による最適移植法の選択である。非血縁骨髄移植をコントロールとして、さい帯血移植の移植免疫反応と生存を共通のHLAデータに基づき比較検討し、どのようなHLA適合度のどの移植法を選択することが患者にとり最適かを示す選択アルゴリズムを確立する。第2は、ドナー・移植細胞源選択に有用なHLAと非HLA遺伝子の同定とその移植選択アルゴリズムへの導入である。非HLA多型の中でどれが臨床成績に影響があるかの重み付け解析を共通の基盤で実施し、適切なドナー選択の個別化アルゴリズム(基準)を構築する。第3は、非血縁者間移植の人種別比較成績に基づく国際間移植ドナーの効率的運用である。
研究方法
骨髄移植・さい帯血移植症例のデータベースのHLA型の同定と移植検体を用いて得られた免疫遺伝学的データを用いて、移植免疫反応(GVHG、生着不全など)、白血病の再発ならびに移植後の生存との関与を解析した。解析可能な非血縁骨髄移植ペアーは最大約8000、さい帯血ペアーは最大約2000であった。免疫遺伝学的手法としてhigh resolution HLA-アリルタイピング(HLA-A, B, C, DRB1, DQB1, DPB1)、Tagman法等による遺伝子多型(SNPs)解析、GWAS解析、マイクロサテライト解析などを用いた。非血縁者間移植の国際比較には国際組織適合性ワークショップ(IHWG)で集積されたデータを用いた。
結果と考察
1)HLA-DPB1適合の重要性:JMDPを介した非血縁移植患者とドナーのペアー検体を後方視的にHLA-A, B, C, DRB1, DQB1, DPB1アリルを同定し、臨床情報を加えて多変量解析法を用いて2010年までの7951ペアーを解析した。HLA-DPB1不適合は移植片対白血病(GVL)効果を生じ、慢性GVHDによるGVL効果とは独立したものであった。さらにHLA-DPB1不適合によるGVL効果は慢性GVHDによるGVL効果とは独立したものであり、HLA-DPB1タイピングは適切な非血縁ドナー選択に有用であると考えられた。2)HLAのアリルとHLAハプロタイプそのものの重要性:HLA領域のmulti-SNPの解析により、HLA-A~DQB1のハプロタイプ(HP)520種類を同定し、そのSNPsコンセンサスシークエンスを決定し、個人の所有するHLAアリルまたはHLA-HPとUR-BMTの急性GVHDの関連性を解析すると、急性GVHD2-4度のリスクと関連するHLAアリル・HPが認められたが、その中でも特にHLA-DPB1*04:02に強い関連が認められた。ドナー・患者の特定のアリルやハプロタイプは非血縁ドナー選択において、HLA座の違いと同様なリスクで考慮する必要があることが示された。3)非血縁骨髄移植の移植免疫反応に関与する非HLA遺伝子多型の重要性:GVHD・生存に関与する可能性のあるHLAアリル以外の72SNPsを選択し、HLA-AからDPB1まで完全適合しT細胞非除去GVHD予防法を用いた白血病400ペアーという均一なコホートを対象に解析し、有意なSNPs多型有する26抗原を見出し、現在HLA-DPB1不適合800ペアー用いたvalidationを実施した。4)さい帯血移植におけるHLA適合の関与:臍帯血移植ではHLA不一致が多くその移植成績とKIR適合度の関連が注目されている。日本では臍帯血移植にATGすることはほとんどないためKIR GVH方向ミスマッチ移植の有効性は認められず、一方でHVG方向ミスでは臍帯血移植の生着に関わる不安定性とあいまって、生着を悪化させたものと推測された。5)国際的移植データベースによる人種の遺伝的背景が移植免疫反応と移植成績に及ぼす影響:国際組織適合性ワークショップ(IHWG)で収集された非血縁者間造血細胞移植症例の解析で日本人間移植は白人間移植に比べ急性GVHDの発症リスクは有意に低く、予想外に移植後の白血病の発症率も有意に低く、その結果として移植後の生存率は良好であり、国際間移植にとり重要な知見となった。
結論
わが国における非血縁者間移植とさい帯血移植における組織適合性抗原の関与を大規模な共通DNAデ-タベースと臨床データを用いて明らかにすることができ、本研究班で得られた結果は造血細胞移植における移植法・ドナー選択のための臨床に応用可能な基本データとなろう。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-12
更新日
-

文献情報

文献番号
201322010B
報告書区分
総合
研究課題名
移植細胞源を異にする非血縁造血細胞移植の組織適合性に基づく成績向上と移植選択アルゴリズムの確立に関する研究
課題番号
H23-免疫-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
森島 泰雄(愛知県がんセンター研究所  疫学・予防部)
研究分担者(所属機関)
  • 村田 誠(名古屋大学医学部 附属病院)
  • 小川 誠司(京都大学大学院医学研究科)
  • 屋部 登志雄(日本赤十字社関東甲信越ブロック血液センター)
  • 鬼塚 真仁(東海大学医学部)
  • 笹月 健彦(九州大学高等研究院)
  • 高見 昭良(金沢大学附属病院)
  • 森島 聡子(藤田保健衛生大学医学部)
  • 熱田 由子(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 田中 淳司(東京女子医科大学)
  • 南谷 泰仁(東京大学医学部附属病院)
  • 一戸 辰夫(広島大学原爆放射線医科学研究所)
  • 松本 加代子(日本赤十字社近畿ブロック血液センター)
  • 高梨 美乃子(日本赤十字社関東甲信越ブロック血液センター)
  • 宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院)
  • 飯田 美奈子(愛知医科大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
同種造血幹細胞移植が直面している3つの研究課題に組織適合性を基盤にして取り組んだ。第1は、組織適合性に基づく骨髄移植、臍帯血移植成績の解析による最適移植法の選択である。非血縁骨髄移植をコントロールとして、さい帯血移植の移植免疫反応と生存を共通のHLAデータに基づき比較検討し、どのようなHLA適合度のどの移植法を選択することが患者にとり最適かを示す選択アルゴリズムを確立する。第2は、ドナー・移植細胞源選択に有用なHLAと非HLA遺伝子の同定とその移植選択アルゴリズムへの導入である。非HLA多型の中でどれが臨床成績に影響があるかの重み付け解析を共通の基盤で実施し、適切なドナー選択の個別化アルゴリズム(基準)を構築する。第3は、非血縁者間移植の人種別比較成績に基づく国際間移植ドナーの効率的運用である。
研究方法
骨髄移植・さい帯血移植症例のデータベースのHLA型の同定と移植検体を用いて得られた免疫遺伝学的データを用いて、移植免疫反応(GVHG、生着不全など)、白血病の再発ならびに移植後の生存との関与を解析した。解析可能な非血縁骨髄移植ペアーは最大約8000、さい帯血ペアーは最大約2000であった。免疫遺伝学的手法としてhigh resolution HLA-アリルタイピング(HLA-A, B, C, DRB1, DQB1, DPB1)、Tagman法等による遺伝子多型(SNPs)解析、GWAS解析、マイクロサテライト解析などを用いた。非血縁者間移植の国際比較には国際組織適合性ワークショップ(IHWG)で集積されたデータを用いた。
結果と考察
1. HLA不適合非血縁ドナーからの骨髄移植と非血縁ドナーからの臍帯血移植の比較研究を行い、UCBTはDRB1 1座不一致UBMTと同等の生存成績であった。さらに、UCBTがDRB1 1座あるいはその他(HLA-A,-B,-C)の1座不一致(7/8)UBMTと類似の生存成績を示し、良好な第二代替ドナー・幹細胞であることを示した。
2. HLA-DPB1適合度:JMDPを介した非血縁移植2010年までの7951ペアーのHLAアリルをタイピングした。HLA-DPB1不適合は急性GVHDを生じさせるが、慢性GVHDの発症には関与せず、さらにHLA-DPB1不適合によるGVL効果は慢性GVHDによるGVL効果とは独立したものであった。
3. HLAアリルまたはHLA-HPとUR-BMTの急性GVHDの関連性を解析すると、急性GVHD2-4度のリスクと関連するHLAアリルは複数認められたが、HLA-DPB1*04:02に強い関連が認められた。また、日本人で2番目に頻度が高いHLA-HP P2そのものが急性GVHDの発症頻度を明らかに低下させており、ドナー・患者の特定のアリルやハプロタイプは非血縁ドナー選択において、HLA座の違いと同様なリスクで考慮する必要があることが示された。
4. 非HLA遺伝子多型の解析:ドナー側PTPN22(生存)、患者側CCL2_2、CCL_3、CD53、IL23RIL12RB2_1、IL23RIL12RB2_2、NLRP3_1、PTPN22、グランザイムB多型cytotoxic molecule(以上生存)、AGT多型(肺合併症),CD53多型、CYP3A5多型(カルシニュリン阻害剤の血中濃度)の影響が新たに明らかになった。
5. NK細胞受容体:KIR遺伝子型を同定し、350症例を用いて16個の各KIR遺伝子型、ハプロタイプ型(A,B)およびCentromere側、Telomere側に分けたモチーフ(Cen, TelモチーフA,B)について解析し、KIR遺伝子型モチーフTel-B陽性ドナーからの移植では急性重症GVHD(2-4度)の発症率が高かった。生着症例のみ解析ではKIRリガンド不適合移植での白血病再発率の抑制効果が認められず、欧米の成績とは異なる結果が得られた。
6. IHWGで収集された非血縁者間造血細胞移植白血病症例4335ペアーの解析で日本人間移植(1734ペアー)は白人間移植(1794ペアー)に比べ急性GVHDの発症リスクは有意に低く、予想外に移植後の白血病の発症率も有意に低く、その結果として移植後の生存率は良好であることが、共通データベースに基づく解析で明らかになった。
結論
わが国における非血縁者間移植とさい帯血移植における組織適合性抗原の関与を大規模な共通DNAデ-タベースと臨床データを用いて明らかにすることができ、本研究班で得られた結果は造血細胞移植における移植法・ドナー選択のための臨床に応用可能な基本データとなろう。
 

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201322010C

収支報告書

文献番号
201322010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,207,000円
(2)補助金確定額
14,207,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,240,375円
人件費・謝金 1,566,372円
旅費 1,521,520円
その他 597,120円
間接経費 1,291,000円
合計 14,216,387円

備考

備考
預金利息32円、自己資金9,355円が発生したため。

公開日・更新日

公開日
2014-05-29
更新日
-