文献情報
文献番号
201322003A
報告書区分
総括
研究課題名
関節リウマチにおける骨髄・骨格形成細胞間ネットワークの解明と根治療法の開発
課題番号
H23-免疫-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
西本 憲弘(東京医科大学 医学総合研究所 難病分子制御学部門)
研究分担者(所属機関)
- 桑名 正隆(慶應義塾大学医学部 リウマチ内科)
- 小守 壽文(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 生命科学講座 細胞生物学分野)
- 下村 伊一郎(大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学)
- 田中 栄(東京大学大学院医学系研究科 整形外科)
- 中畑 龍俊(京都大学iPS細胞研究所)
- 松尾 光一(慶應義塾大学医学部 共同利用研究室 細胞組織学)
- 吉川 秀樹(大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
関節リウマチ(RA)の主病巣は骨髄であると考えられる。RAの病態に関わる免疫細胞、骨芽細胞、破骨細胞、滑膜細胞や骨格を形成・支持する骨、軟骨、筋肉、脂肪組織は骨髄の造血幹細胞あるいは間葉系幹細胞から分化するため、根治療法に結びつけるには、骨髄での初期分化異常の有無と細胞の分化制御機構を明らかにする必要がある。本研究では、RA患者特異的ヒト人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells:iPS細胞)を樹立し、in vitro分化系を用いて、骨髄細胞分化異常の有無を明らかにすることを目的とした。特に重症RA患者骨髄で見られるCD14+CD15+の「まるでがん細胞」の出現の有無を検討した。また、CD14+単球の亜分画の細胞機能の解析を行った。さらに。ヒトES/iPS細胞ならびに関節構成体(骨・軟骨・滑膜)のin vitro三次元培養系を樹立し、力学負荷細胞応答と関節治療薬剤の効果を検討した。また、RA骨髄間葉系に由来する細胞の分化制御機構を、骨細胞ネットワークを破綻させた遺伝子改変マウスや分子生物学的手法を用いて解析した。
研究方法
RA患者特異的iPS細胞は、インフォームドコンセントを得た親子あるいは同胞内発症のRA患者と未発症者の血液単核球ならびに皮膚線維芽細胞から樹立した。RA特異的iPS細胞から単球へ分化させ、FACS解析により各分化段階での細胞表面マーカーを健常人由来のiPS細胞と比較した。さらに破骨細胞への分化誘導を検討した。また、コラーゲンスポンジを用いて三次元でヒトES/iPS細胞から単球系細胞の分化誘導を行った。アテロコラーゲンゲルとコラーゲンスキャフォールドを用いて三次元培養滑膜組織を作製し、力学負荷によるマトリックス分解酵素、サイトカイン発現を、RA治療薬の存在下で解析した。
未治療RA患者の前向きコホート(SAKURA)データベースを用いて、末梢血CD14+単球亜分画と疾患活動性や関節破壊進展との関連を検討した。
骨細胞ネットワークが破綻する骨芽細胞特異的BCL2トランスジェニック(tg)マウスを用いて、非荷重時に骨芽細胞に発現した遺伝子Fkbp5のKOマウスを作製し骨代謝における機能を解析した。また、LPSを、マウス腹腔内に投与し、OPGの産生臓器・細胞を特定した。また、次世代シーケンサーを用い、TGF-betaによるRANKL誘導性破骨細胞分化制御機構を解析した。組換えアディポネクチン蛋白をヒトマクロファージへ添加し、サイトカイン産生とアディポネクチン下流のシグナル伝達経路を解析した。
患者検体の採取はヘルシンキ宣言を遵守し、倫理委員会の承認下に行った。患者情報は匿名化した。iPS細胞の作製は、臨床研究に関する倫理指針、組み替え遺伝子指針、ヒトES指針を遵守した。遺伝子情報は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針、疫学研究に関する倫理指針、臨床研究に関する倫理指針に沿って、人権の保護に十分配慮した。DNA組み換え実験、動物実験は倫理指針、動物の愛護及び管理に関する法律などの倫理指針に従った。
未治療RA患者の前向きコホート(SAKURA)データベースを用いて、末梢血CD14+単球亜分画と疾患活動性や関節破壊進展との関連を検討した。
骨細胞ネットワークが破綻する骨芽細胞特異的BCL2トランスジェニック(tg)マウスを用いて、非荷重時に骨芽細胞に発現した遺伝子Fkbp5のKOマウスを作製し骨代謝における機能を解析した。また、LPSを、マウス腹腔内に投与し、OPGの産生臓器・細胞を特定した。また、次世代シーケンサーを用い、TGF-betaによるRANKL誘導性破骨細胞分化制御機構を解析した。組換えアディポネクチン蛋白をヒトマクロファージへ添加し、サイトカイン産生とアディポネクチン下流のシグナル伝達経路を解析した。
患者検体の採取はヘルシンキ宣言を遵守し、倫理委員会の承認下に行った。患者情報は匿名化した。iPS細胞の作製は、臨床研究に関する倫理指針、組み替え遺伝子指針、ヒトES指針を遵守した。遺伝子情報は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針、疫学研究に関する倫理指針、臨床研究に関する倫理指針に沿って、人権の保護に十分配慮した。DNA組み換え実験、動物実験は倫理指針、動物の愛護及び管理に関する法律などの倫理指針に従った。
結果と考察
iPS細胞から単球系細胞へのin vitro分化系を用いて、RA患者骨髄で見られたCD14+CD15+の「まるでがん細胞」が、単球への分化初期に一過性に出現することを明らかにした。この細胞群はRAで多く出現したことから、RA病態に関与する可能性がある。
三次元培養系を用いたヒトES/iPS細胞から単球系細胞への分化誘導系を確立した。三次元培養・力学負荷システムの構築により、力学的負荷という生理的な状況下での治療薬の反応性を調べることが可能になった。
網羅的遺伝子発現解析により見出したFkbp5の骨細胞・骨芽細胞・破骨細胞ネットワーク制御における役割が明らかになった。Fkbp5は糖質コルチコイド受容体の核移行を抑制することから、ステロイド性骨粗鬆症の病態解明と治療に応用できる可能性がある。
自然免疫の賦活化は、肝細胞でのOPG発現を上げ、骨吸収を抑制する可能性が示された。OPG産生に関わる転写因子AP-1を構成するcFosはSmadと結合し、NfatC1の転写調節に働いている可能性が示された。また、アディポネクチンが補体C1qに直接結合し、補体系を制御するが、アディポネクチンのマクロファージに対する作用は、炎症惹起と抑制の二面性を有することが明らかになった。
臨床的検証では、CD14+細胞の亜分画の割合が疾患活動性や関節破壊と関連することが明らかになった。RAの予後予測に利用できる可能性がある。
三次元培養系を用いたヒトES/iPS細胞から単球系細胞への分化誘導系を確立した。三次元培養・力学負荷システムの構築により、力学的負荷という生理的な状況下での治療薬の反応性を調べることが可能になった。
網羅的遺伝子発現解析により見出したFkbp5の骨細胞・骨芽細胞・破骨細胞ネットワーク制御における役割が明らかになった。Fkbp5は糖質コルチコイド受容体の核移行を抑制することから、ステロイド性骨粗鬆症の病態解明と治療に応用できる可能性がある。
自然免疫の賦活化は、肝細胞でのOPG発現を上げ、骨吸収を抑制する可能性が示された。OPG産生に関わる転写因子AP-1を構成するcFosはSmadと結合し、NfatC1の転写調節に働いている可能性が示された。また、アディポネクチンが補体C1qに直接結合し、補体系を制御するが、アディポネクチンのマクロファージに対する作用は、炎症惹起と抑制の二面性を有することが明らかになった。
臨床的検証では、CD14+細胞の亜分画の割合が疾患活動性や関節破壊と関連することが明らかになった。RAの予後予測に利用できる可能性がある。
結論
RA患者の骨髄細胞、特に単球系細胞への分化異常が示された。また、骨髄間葉系細胞のネットワーク制御機構が分子レベルで明らかになった。
公開日・更新日
公開日
2014-08-26
更新日
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