文献情報
文献番号
201321019A
報告書区分
総括
研究課題名
エクソソームを介したHBV感染及び発がんメカニズム解析と治療戦略
課題番号
H25-B創-肝炎-一般-019
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
落谷 孝広(独立行政法人国立がん研究センター研究所 分子細胞治療研究分野)
研究分担者(所属機関)
- 宮島 篤(東京大学分子細胞生物学研究所 発生・再生研究分野)
- 仁科 博史(東京医科歯科大学難治疾患研究所 難治病態研究部門 発生再生生物学分野)
- 梅村 武司(信州大学医学部内科第二教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 B型肝炎創薬実用化等研究経費
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
31,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
最近、細胞の分泌する小胞顆粒であるエクソソームに関心が集まり、複数のウイルス種の感染機構やウイルス依存的疾患発症メカニズムにエクソソームが仲介することが報告されている。しかしながら、HBVとエクソソームとの関わりは未解明のままである。本研究では, HBV感染細胞から放出されるエクソソームが、それらの免疫系細胞に作用して感染を制御している可能性に注目し, HBVの感染、伝播、薬剤耐性、ならびに発がんメカニズムに、エクソソームがどのように関係しているかを解明する。
研究方法
(1) 細胞外分泌顆粒であるエクソソームによるHBV感染、免疫細胞制御、星細胞の活性化、および薬剤耐性メカニズム解明
(2) エクソソームによる発がんメカニズム解明
(3) HBV感染培養系を用いたエクソソームによる感染機構の解明とエクソソーム阻害による感染防御の検討
(4) HBV感染肝細胞の分泌するエクソソーム内のHBV関連タンパク質および宿主因子の同定、を実施することで、エクソソームを起点としたHBV感染とそれに由来する肝臓疾患の防御の創薬研究
(5)上記を目標に、最終的にエクソソームを阻害する新規HBV治療薬を開発する。
倫理面への配慮に関しては,本研究で使用する細胞は,いずれもインフォームドコンセントのもとに倫理審査を得て採取され,市販されているヒト肝細胞や株化された星細胞であるため、倫理的な問題点はない。
(2) エクソソームによる発がんメカニズム解明
(3) HBV感染培養系を用いたエクソソームによる感染機構の解明とエクソソーム阻害による感染防御の検討
(4) HBV感染肝細胞の分泌するエクソソーム内のHBV関連タンパク質および宿主因子の同定、を実施することで、エクソソームを起点としたHBV感染とそれに由来する肝臓疾患の防御の創薬研究
(5)上記を目標に、最終的にエクソソームを阻害する新規HBV治療薬を開発する。
倫理面への配慮に関しては,本研究で使用する細胞は,いずれもインフォームドコンセントのもとに倫理審査を得て採取され,市販されているヒト肝細胞や株化された星細胞であるため、倫理的な問題点はない。
結果と考察
初年度は本研究の準備期間とし,1)HBV-Xタンパク質を発現するヒト肝細胞の分泌するエクソソームを分離・精製する事に成功した。2)(1)で準備したエクソソームを、ヒト不死化星細胞の培養系に導入する系を樹立した。3)(1)のエクソソームのプロテオーム解析に着手した。4)(1)のエクソソームを分担研究者に供与するための大量培養系構築を開始した。5)肝臓が内包する免疫非依存的な異常肝細胞排除機構の存在を見出した(論文準備中)。6)HBV感染エクソソームに含まれる宿主因子を同定に向けて、網羅的質量分析法の構築を開始した。7)HBV感染エクソソームに含まれる因子の機能解析に向けて、肝臓中の免疫細胞のセルソータによる分離法を確立した。8)NK細胞はHBV感染への関与が示唆されている。マウスNK細胞の新たなサブセットを見いだした(論文投稿中)。9)HBV感染エクソソームに含まれる宿主因子の肝線維化に及ぼす影響を評価するために、肝星細胞の分離培養系とその他の非実質細胞との共培養系の構築を開始した。10)血清中のHBV RNAの定量系を確立して臨床検体で測定した。11)HBV感染エクソーム内のHBV-DNA、HBV-RNA、HBs抗原の定量を行えるようにするために検討を開始した。
結論
HBV感染ヒト肝細胞から分泌される細胞外小胞顆粒であるエクソソームの回収や精製方法が、他のがん細胞等の場合とほぼ同様に施行可能である条件を設定できた。今後は,このエクソソームの機能を細胞レベルで検証し,感染エクソソーム中の分子レベルの解析に進むための素地が出来上がった。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
-